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問題は意識した時に出現する

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長 
  • 谷口 正和

 もし人類史上誰も空を見上げなかったら、そこに「月」はあるのだろうか。答えは「ない」だそうです。人が空を見上げて、「ああ、あそこに何かある」「あれはなんだろう」と思って、はじめて月は存在するのだということです。

 意識した時にはじめて課題も問題も存在する。何とか解決しようという認識が生まれ、ソリューションが果たされる。意識しなければ、そこには問題も課題もないし、解決の必要性も問われない。

 いかに「意識すること」、問題を「意識下に置く」ことが重要かということです。数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞した広中平祐氏は、特異点を発見するまでの7年間、ご飯を食べているときもバスに乗っているときも、この問題を意識から離すことがなかったそうです。

 大発見、大発明はこのようにして生まれるのでしょうが、ビジネスもまた日々、小さな発見や発明を生み続けて継続していくものだと言えます。特に顧客が抱えている問題、課題を発見し、それを解決してあげることが、ビジネスの基本として認識されるようになりました。

 これはIT用語だった「ソリューション」という言葉が、マーケティング用語として活用されたときに始めて生まれた認識だったと言えましょう。顧客第一主義、カスタマー・オリエンテッドなどのマーケティング用語は、すべてその根幹に顧客のための解決、つまり「カスタマー・ソリューション」という概念を持っています。顧客のためのソリューションを競い合う時代、出発点はどこまでも「何が新しい問題なのか」という問題の発見からスタートすることしかありません。

 何を問題として意識し、どう解決策を生み出すか。常に「それを具体的問題として意識し」「行動に変える」ことが、解決に至る道だということです。そうしないと、すべては結果が見えない単なる作業になってしまうでしょう。

 時代の価値フレームは変化し続けています。それは「問題の課題」が変化し続けているということです。

 いまや世界最高の優良企業のひとつといってもいいセブンイレブンの成功は、この変化する価値フレームの軸足を顧客に置き、継続的に問題の発見とその解決法を追求しつづけているからだということが出来ましょう。問題の発見と解決を継続し続けることは、生易しいことではありません。世の中でいちばん大変なことは「継続することだ」といってもいいくらいです。もちろんただ長く続ければいいということではなく、そこに不断のイノベーションを投入し続けていくことです。

 先日はアル・ゴア氏がノーベル平和賞を授与されましたが、彼は言ってみれば地球大統領とも言うべき問題意識運動家でしょう。個別の国益、企業利益追求だけの時代が終わりを告げようとしているとき、ノーベル賞はなかなかの見識を示しました。

 未来をどう経営していくかが最大の課題となった今日、何を問題として意識下に置くかで、結果は必ず変わってきます。地球的課題で言えば、生態系の保護と復活、個別の民族文化の継承と交流、この2点になるでしょう。

 パリのデザイン見本市「メゾン&オブジェ」で発表されたクリストフ・ピエの21世紀型暖炉は、燃料がエタノールで煙も臭いも出ないエコ暖房でした。また最新技術搭載により、点火・消火も付属リモコンで行えます。エコの概念に基づき、ハイテク技術を駆使した暖炉は、豪・ポーランド合弁企業プラニカ社の製品です(Casa BRUTUS  11月号)。

 あなたのビジネスの新しい問題は何ですか? あなたの商品の新しい課題は何ですか? それは必ず前とは変わっているはずです。問題の発見→検証→解決に向かいましょう。

 


【関連情報】

○映像で見るパリのデザイン見本市「メゾン&オブジェ2007」
http://www.giftshow.co.jp/ondemand/maison2007/index.html


○CNET 2007/10/13
 「ノーベル平和賞を受賞した、アル・ゴア元米副大統領のメッセージとは」
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20358679,00.htm


○Tadaoh! Design「アル・ゴア氏らノーベル平和賞受賞」 2007/10/14
http://www.tadaoh.net/design/2007/10/post_248.html


○富永 秀一 otomi style ─環境ジャーナリストの日常─
 「アル・ゴア氏とIPCC ノーベル平和賞受賞」 2007/10/13
http://otomitv.seesaa.net/article/60388677.html


○映画と読書の感想ブログ 「不都合な真実」 2007/03/05
http://review.kousyou.cc/?eid=428927


○Business Media 誠 2007/04/23
 写真で見る、セブン&アイ独自電子マネー「nanaco」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0704/23/news037.html

 

 


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