米国TBSの密かな人気ドラマ「MY BOYS」:男と女の友情は成立する?!
- アメリカ在住ジャーナリスト
米国HBOの「Sex And The City(セックスアンドザシティー)」が息の長い人気番組だったように、米国では地上波の3大ネットワーク番組以外でも、影響力を持つヒット番組が実は沢山ある。たとえば、日本でもケーブル局LALATVで近頃放送されている「クローザー」も、人気米国ケーブル局TNTのオリジナルテレビシリーズだ。
こうしたケーブル専門局として、70年代から発展してきた米国ターナー・ブロードキャスティング・システム社(TBS)。80年代にはじめた同社の傘下である、ニュース専門チャンネルCNNが、イラク戦争をきっかけに、世界中にその名を轟かせて以来、ケーブル専用メディアの先駆者として国内外に強い存在感を放っている。
90年代タイムワーナー社と合併。以来現在ではニュース、アニメーション、エンターテイメントの3つの柱に関するそれぞれの専門チャンネルをターナーネットワークという傘の元に運営。ニュースのCNN、アニメーションのCARTOON NETWORK、そしてエンターテイメントのTBS、TNTと人気を誇る番組を国内で9チャンネル持っている。また海外でもCNN InternationalやCARTOON Japanを通して、ケーブルネットワークとしての番組提供を行っている。
そのターナーネットワークの元祖チャネルであるTBSで、昨年末にパイロット版が放送され、この7月から第1シーズンが放送されたに番組「My Boys(マイボーイズ)」(http://www.tbs.com/shows/myboys/)が密かな人気を呼んでいる。
TBSが手がける初めてのオリジナルコメディ作品で、9月中旬から第2シーズンがはじまった同番組は、脚本、監督、俳優の3つの柱ともにバランスが取れた作品と評価されており、スター・マガジンにおいては「見る価値があるシットコム!」とコメント。平均視聴率160万人のコメディ作品として、人気を確立しつつある。
物語は20代の女性<P.J>と、その取り巻きの「男友達」との生活を描いた作品。地元シカゴ・サンのスポーツライターをするP.J.は、なかなか美人で、スタイルもよく、キャリアもある女性。ただ歳の近いお兄さんの影響もあってか、趣味が、「野球」と「ポーカー」という、ちょっと男勝りなために、仲がいいのはみんな男性ばかり。
唯一性格も趣味も180度真逆なのに大親友という女友達<ステファニー>がいるものの、毎週欠かさず開かれるポーカーナイトで、兄の<アンディ>、カブスで働く<マイク>、コレクターショップを営む<ケニー>、P.Jの元彼で、地元のホットなDJ<ブランドン>、そして実は大金持ちの御曹司で、P.Jのライター仲間<ボビー>の5人の仲間たちと一緒にいる時間が一番の幸せという、そんなP.Jと愉快な仲間達のシカゴでの生活が描かれたコメディドラマである。
ちなみに、この番組は、典型的なシチュエーションコメディ(situation comedy:sitcomシットコム)。例えば印象的なエピソードの一つを紹介すると、NYで編集者をやっているP.Jの学生時代の友達が、シカゴに女友達とやってくる。まさにSex And The Cityをパロディー化したエピソードで、そのP.Jの友達と3人の取り巻きが、「シカゴで見つけられるNY的レストランガイド」を見ながら、シカゴで一番トレンディーと言われるバーに行きたいという彼女達の行動を、P.Jが「Quite Scary(かなり怖い)」と思わず言ってしまうシーンは、なんとも笑えてしまう。また仲間を無視して、奇行暴言を繰り返したボーイズの一人、<ブランドン>に対して「Douchebag(偽の友)」と罵倒し、愛の鞭を打つために、仲間が一人一人彼にメッセージを伝えるシーンなどは、なんとも心温まる、それでいて笑える、そんなストーリー展開だ。
主人公P.Jを演じるジョーダン・スピロはこの番組でシリーズ番組初主演。そんな彼女を脇で固めるボーイズたちは、キャリアの長いコメディアンやコメディ俳優たち。もちろん、P.Jのロマンスには、いわゆる「いい男」部類の俳優たちも登場する。
ところでこの番組が密かに人気を博している理由を私はこう分析する。「ゲイでない男女間で、友情は成立する」を地で行く女性の人生を描こうとしているのではないか。
もちろん主人公P.Jと、元彼でP.Jの取り巻きの一人になった<ブランドン>との関係は、多少男女の関係を引きずるような発言や行動はあるものの、P.Jが性を意識せずに、「一個人として」の一人一人と向かい合い、人間関係を築こうとしているスタンスが伺いしれるのである。このようなスタンスは、実際社会で男性と対等に仕事をしようとするような、キャリア女性にとっては、とても自然な視点であるのではないだろうか。
ちなみに私は学生時代から、女友達より、男友達から相談事があるタイプだったのだが、友人の中には、男性=恋人候補か、そうでないか、の二者択一の意識しかもてないという人もいる。そういう意味において、私はこの番組にのめり込みそうな典型的な視聴者だったのかもしれないのだが、その事実は無視したとしても、160万人の米国視聴者が、TBSの送り出した新コメディ番組を支えていることは事実である。
ところで日本のドラマには、男性と女性の「友情」が描かれた作品は実は少ないのではないか。それはもしかしたら、飛躍すれば「男女平等論」の浸透性にまで発展してしまうのかもしれない。
とはいえ日本でも今や海外ドラマが続々と輸入され、例えば米国ドラマ「Friends(フレンズ)」は大きなブームを生んだ。まさにこのフレンズに次ぐような、ハートウォーミングな、コメディ作品「My Boys(マイボーイズ)」が描く人間模様は、なさそうでありそうなシチュエーションを本当に上手に描いており、これからのシーズン展開がとても楽しみな作品である。
【関連情報】
○ ORICON STYLE 2006/07/05
キラーソフトが続々登場!「海外ドラマ」は何故ヒットする!?
http://www.oricon.co.jp/news/confidence/26950/
○やじゅんのページ/The World according to YAJUN
「シットコム(米国TV事情:その3)」 2005/03/21
米国生活での英語の勉強の中で大いに役立ったのは、シットコムを見ることでした。
スラング中心の日常会話の連続なので、リスニングとニュースを見るだけでは
身につかないボキャブラリ強化に非常に役立ちます。
http://blog.goo.ne.jp/junyastone/e/d9e0342c0e9302fab71f3faeccba3477
○海外ドラマ専科 「YouTubeで各局が新シーズン番組特集!」 2007/09/14
http://kaigai-drama.tvblog.jp/kaidora/2007/09/post_ee64.html
▼男と女の友情は成立するか?
○Happyになれる映画を観よう♪ 恋人たちの予感【1989・アメリカ】 2007/03/08
これは、ラブコメの王道ですね。男女の友達で、友達であるがゆえに、
お互い惹かれあう心にブレーキをかけてしまって・・・っていう。
ラブコメ好きにはたまらない展開の作品。
間に入る老夫婦のインタビューも何だか微笑ましくていいですね。
http://ameblo.jp/mosjoen/entry-10027543840.html
○名画案内所 2006/12/25
メグ・ライアン&ビリー・クリスタル「恋人たちの予感」
ビリー「男は知り合いの女みんなとやりたいと思っている」
メグ 「そんなことありえない」
でケンカになるファーストシーンから、ラストのハッピーエンドまで
二人の関係に焦点をあてながら、友達関係をうまく取り入れて、
起伏に富んだストーリーに仕上げています。
http://riro1177.at.webry.info/200612/article_15.html
○粋なおやじのひとり言 「友情!」 2006/04/30
男の友情・・・いい言葉だ! よく、若い人は言う。男と女の友情は成立するって。
まぁ、無きにしも非ずだね! 男の友情はちょっと違う気がする。
反感を得るかもしれないが私はそう思う。
http://ikina-oyaji.seesaa.net/article/17235366.html
○テアトル十瑠 「恋人たちの予感」 2005/10/01
男女の恋愛に関するモロモロを本音で話してきた二人が、いざお互いが当人に
なってしまった事へのとまどい。はたして、この先も友達でいられるのか・・・。
http://blog.goo.ne.jp/8seasons/e/48e7f7fd7872fce7bc071e265f3e6842
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