“再結成”ブーム!? それはともかく感動的だった9月の2夜
- レコード・コレクターズ 編集部
一昨年のクリーム、ピンク・フロイド、ジューダス・プリーストに始まり、最近ではジェネシス、ザ・ポリス、エイジアと、再結成ライヴ・ツアーやオリジナル・メンバーでのリユニオン・コンサートが話題を集めています。今月26日にはなんとレッド・ツェッペリンがアーメット・アーティガンの追悼コンサートで一夜限りの再結成ライヴを行なうことになりました。
そんな状況もあって、再結成ライヴの枕詞として“近年ブームの”という表記をよく目にしますが、再結成ライヴというのはアーティストにとってそれぞれ個別の理由や背景がありますので、それを“ブーム”と言われてしまうと僕は正直抵抗を感じます。ですが、国外だけではなく国内に目を向けてみても、再結成ライヴやオリジナル・メンバーによる編成でのリユニオン・コンサートは数多く行なわれ、また予定されています。
これらの再結成ライヴの多くは、“伝説”のバンドを目の当たりにすることができるという期待感でワクワクしますが、その反面、全盛期の凄さを体験していたりすると、“燃えカス”みたいな姿を見せつけられてガッカリするということもなくはありません。
僕自身は個人的な体験から“再結成ライヴ”についてはやや慎重になっていましたが、そんな思いを覆すライヴを9月に2本も見ることができましたので、今回はそのことについて書きたいと思います。
まずは、先の8月27日掲載のブログで最後に触れた9月2日に行なわれたアウトレイジのデビュー20周年記念ライヴから。
この日はメモリアル・デイということもあって、99年に脱退したヴォーカリストの橋本直樹を迎えての4人で登場。橋本脱退後のアウトレイジは専任ヴォーカリストを補強せず、今日まで3人体制で活動してきました。
この日の橋本は、しばらくの間ステージを離れていたことを感じさせない、熱意に溢れた素晴らしい歌を聴かせてくれました。驚いたのは、彼のオーディエンスに対する態度が180度変わっていたこと。以前のクールに突き放す振る舞いが嘘のように、何度も「ありがとね」とステージから呼びかけていたのが印象的でした。ルックスも含め“素の橋本直樹を観た!”という感じだったのですが、ペルソナを外した彼から発散されるポジティヴなエネルギーは、会場をとてもいい雰囲気に包んでくれました。
アンコールの「マイ・ファイナル・デイ」はちょっと言葉にできない感動がありましたね。橋本を加えた編成でのアウトレイジのライヴは今月まで続きますが、今回が“ファイナル”であって欲しくないと切実に思ったものです。終演後もずっと止まなかった「直樹」コールは、その思いが僕だけのものではないことを証明してくれているようでした。
そして、もう一つが9月22日に青山の「月見ル君想フ」で行なわれたD-DAYの25周年&新作『Heavenly Blue』発売記念ライヴ。今これを読んで「え!D-DAYが新作を出したの?」と驚かれているファンの方もいらっしゃるかもしれません。なんといっても新作アルバムのリリースはおよそ21年ぶりのこと(21年前の1986年は、女性ヴォーカリストをフロントにしたグループではレベッカが大人気でした。レベッカのアルバム7タイトルも9月に紙ジャケCDで再発されています)。
D-DAY『Heavenly Blue』
昨年、編集盤『CROSSED FINGERS』の発売記念ライヴと、バズコックスのライヴを観て感銘を受けたことがきっかけとなって、ヴォーカリストの川喜多美子が活動再開を決意。そして、今年に入って自主制作でのCD-R発売の流れで5月に再びステージへ。僕にとっては、この5月のライヴ(7月23日掲載のブログで書いた「鈴木博文と女たち」)が初めてナマで体験するD-DAYだったわけですが、未来に向けての強い意志が感じられるショウだったので、近いうちにまた目の前に姿を現わしてくれることを信じていました。しかし、まさかその日がこんなに近いとは! しかも21年ぶりの新作まで携えて。
ライヴは「DUST」からスタート。キュアーとコクトー・トゥインズが握手をしているようなこの曲が象徴するように、D-DAYの楽曲はポップでありながら、ダークな質感を湛えています。かといってゴシックっぽい色彩に塗り固められているわけではなく、ときにはアニメの主題歌かと思う(これは川喜多さんの声質に一因あり)ぐらいポップなメロディーが飛び出します。しかし、すべてを含めて、とてつもなくニュー・ウェイヴ。「バズコックスやストラングラーズが好き!」という川喜多美子の嗜好も、D-DAY未体験の方にはその音を思い浮かべるヒントになるでしょう。
当日は2部構成で、前半は5月と同様に、成田忍と横川理彦との3人で登場。そして後半はなんと!ベースに沖山優司(元ジューシィ・フルーツ)、そしてキーボードに福原マリ(元SHI-SHONEN)を加えての、まさにテクノ・ポップ・オールスターズといったバンド編成。このメンバーで「Kiss me at the garden gate」や「MEMORY」といった往年の名曲(どちらも『Heavenly Blue』で再録音)を演られたら、もう失神するしかありません(笑)。「Kiss me at the garden gate」での「Kiss me, Kiss me」のコール&レスポンスを目の当たりにしながら、「今は何年?」とまるでタイム・スリップしているかのような錯覚に陥りました。
終演後、鳴り止まない「D-DAY」コールを受けて川喜多さんが一人で登場。女性ファンからの「またやって」という声に「はい」と反応した声を聞いて、僕のまわりからは「よし!言った」とところどころからお客さんの声が。“これで安心して帰ることができる”といった感じで、みなようやく会場出口に足を向けていました。
この日は会場の熱気で上気していたこともあり、帰り道、僕は近くの外苑前駅から電車に乗らず、永田町駅まで、余韻にひたりながら歩いて帰りました(←実話)。
アウトレイジにしてもD-DAYにしても、演奏する側の熱意とフロントマンの真摯な姿勢がいいライヴにしていたことはもちろんですが、それを喚起し、また受け止めることができるお客さんが集まることも、客として足を運んでいた僕が書くのもなんですが、いいライヴを生む条件のひとつだなぁ…と、改めて感じた夜でした。
【関連情報】
○MediaSabor 2007/08/27
「ようやく出揃ったジャパニーズ・ヘヴィ・メタルの再発CD」
http://mediasabor.jp/2007/08/post_192.html
○MediaSabor 2007/07/23
「とどまるところを知らない上野洋子の音楽的ヴァイタリティー」
http://mediasabor.jp/2007/07/post_162.html
○MediaSabor 2007/07/09
「現代に生きるスーパーバンド:ザ・ポリス(The Police)、23年ぶりの世界ツアー」
http://mediasabor.jp/2007/07/the_police23.html
○BARKS 「再結成して欲しいバンド、トップ10」 2007/09/27
http://www.barks.jp/news/?id=1000034480
○Paradise City「それがたとえ非現実的と言われようと」2007/10/04
個人的希望として可能不可能を全く別にして言ってしまえば、私は
Jガイルズ・バンドに再結成して貰いたいです。絶対ないだろうけど。
たとえば昔一世を風靡したようなバンドならね、集金といわれようと
昔の栄光もう一度な懐古趣味だろうと、再結成ってあり得ると思うんですが、
Jガイルズは別にそういうもんも無いですからね(爆)
http://paradise-city.jugem.jp/?eid=153
○BARKS 2007/02/20
「ザ・ジャム(除くポール・ウェラー)再結成」
http://www.barks.jp/news/?id=1000030068
○ ORICON STYLE 2007/03/09
「ジュディマリ再結成を望む声、20代以下で圧倒的」
海外ではそんなリユニオン(再結成)ツアーが何かと話題にあがっているが、
そんな中ORICON STYLEでは、再結成して欲しいバンド(グループ)について
国内と海外に分けてアンケートを行った。
http://www.oricon.co.jp/news/ranking/42813/
○ ORICON STYLE 2007/09/13
「伝説のロックバンド、レッド・ツェッペリン再結成」
http://www.oricon.co.jp/news/music/47959/
○SEKAIは廻る 2007/08
「伝説的米ロックバンドのヴァン・ヘイレン 再結成ツアーを発表」
http://world-wide.seesaa.net/article/55344866.html
○doops!—music blog 2007/06/27
「90's UKロックバンド The Verve(ヴァーヴ)が再結成、新作も予定」
http://doops.jp/2007/06/90s_ukthe_verve.html
○doops!—music blog 2007/10/05
「ジャパニーズ・ハードコア・バンド、ヌンチャク、再結成ライブ映像!」
http://doops.jp/2007/10/post_377.html
○bounce.com 2007/06/04
「YOSHIKIが豪華新バンド〈SKIN〉結成、X JAPANも再結成か」
http://www.bounce.com/news/daily.php/10627
○日々のちょとっしたニュース 2007/10/23
「あのヴィジュアル系バンドがついに再結成!!」
http://newsdakedo.exblog.jp/6660485/
○bounce.com 2006/12/12
IGGY POP率いる伝説のバンド、THE STOOGESが34年ぶりのアルバム
『THE WEIRDNESS』を2007年3月にリリース
http://www.bounce.com/news/daily.php/9411
▼D-DAY関連情報
○川喜多美子さんのブログ MICO'S KITCHEN
http://plaza.rakuten.co.jp/yoshikokawakita/
○クレーター通信 2007/09/23
「D-DAY ワンマン!!!@月見ル君想フ」
http://blog.livedoor.jp/tsuda_m/archives/51060477.html
○ゼンマイアタマ 「Heavenly Blue 2」2007/09/26
http://zenmaiatama.seesaa.net/article/57248855.html
○DAyji802 2007/09/23
「D-DAY New album HEAVENLY BLUE release party」
http://dayji802.blog118.fc2.com/blog-entry-6.html
○月夜のドライブ 2006/05/14
「ジャック達、捏造と贋作、川喜多美子@代々木Zher the ZOO」
http://moonlightdrive.at.webry.info/200605/article_8.html
○ブログ・山の薫り 「こう見えて獅子座の女」2006/08/22
北村昌士氏の訃報を目にしたのをきっかけに、彼が活躍していた80年代の
音楽シーンについて、ちょっとネットを徘徊していたら、思いがけずに
懐かしい名前に出会った。それがD-DAYである。
http://sankun.at.webry.info/200608/article_11.html
▼アウトレイジ関連情報
○ OUTRAGE ウェブサイト
http://www.outrage-jp.com/
○AMASHINと戦慄
「OUTRAGE@難波ROCKETS ライヴレポ」 2007/11/04
http://blog.goo.ne.jp/amashin666/e/21ef426c0b98d674176fda434b7861e8
○今井の日記 「アウトレイジ20周年記念ライブ」2007/09/03
http://kazutakaimai.cocolog-nifty.com/nikki/2007/09/post.html
○耽美な音楽そして麺 「OUTRAGEの20周年を実感 DVD&CD」2007/08/24
http://blog.livedoor.jp/de_vision12bell/archives/64726364.html
○she says... but who's reading?
「OUTRAGE w/ ANTHEM'88 @Club Citta 9/2」 2007/09/06
http://plaza.rakuten.co.jp/rockuntilyoudrop/diary/20070906/
○四十路はもう直前 「ビリーズ・ブートキャンプより」2007/09/03
http://chelski-izatan.cocolog-nifty.com/kotobuki/2007/09/post_46cb.html
- いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。 - 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
- 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
- トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。