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変わるインドの流通─ 都市部のスーパーマーケット、コンビニ進出と消費者動向

<記事要約>

 インドの都市部では、近年、スーパーマーケットの進出がめざましい。また、消費者動向はどのようだろう?

 AC Nielsenによる消費者動向調査によると、インド都市部の人々は、かつてないほどに、食料、食料雑貨、日用品にお金をつぎ込むようになっている、ということだ。都市部インド人の買い物による出費全体の平均成長率はここ数年14%でパワフルに伸びているが、この伸び率中、47%は生鮮食材、食料雑貨で占められている。

 この結果は、最近スーパーマーケット業界に進出したReliance Fresh(リライアンス・フレッシュ)やSpencer’s Fresh(スペンサーズ・フレッシュ)などの企業にとっては、すばらしいニュースである。これら企業は今後も、都市部インド人の活発な消費活動の受け皿として、大きなシェアを獲得できるだろう。

 また、最近のインド都市部の消費者動向の特徴としては、主要な消費者が男性から女性へと急速に移行しているということも挙げられる。夫の干渉はあるかもしれないが、それでも尚、金銭管理同様に消費活動の主導権も、女性が握る時代が来ているようだ。

(Go INDIA  10月号)


<解説>

 インド都市部で、ここ数年、急速にスーパーマーケットの進出が目立っているのは、実際にひしひしと実感することだ。3年半前にインドに来た頃は、首都ニューデリーでも、スーパーマーケットなどというものは、なかったと記憶している。Sabka Bazaar(サブカ・バザール) 、Star Bazaar(スター・バザール)といった、スーパーマーケットと称する店はあったが、やはり品揃え、陳列の仕方、雰囲気、どれをとっても、「いろいろなものを置いてみた店」程度にしか感じられなかった。

 インドでは都市部であろうとも、つい最近まで、野菜は屋台の八百屋で買い、日用雑貨は日本で言う三河屋、肉屋は肉屋といった風に、いちいち個別に小売店を歩いてまわるという生活しかなかったのである。だが、そのような買い物の仕方も、急速に変化をみせている。

 最初に本格的にスーパーマーケットやコンビニエンスストアが出来はじめたのは、グルガオンやノイダといった、ニューデリー郊外のエリアだったように思う。それら地域は、10年ほど前には、ただの荒れた野原だった場所なのだが、その後急速に発展し、現在では多数のビルが立ち並び、高層マンションの林立するエリアとなった。

 外国企業も大半は、このエリアに拠点をおき、赴任者とその家族も同エリアに住むのが普通だ。そのような、外国人赴任者もたくさん住むような高層マンションのグラウンドフロアーに、夜中まで開いているスーパーマーケット(もしくはコンビニ)が併設され始めたのが、インドとしては非常に新しい動きであった。それが、たった数年前ほどのことである。グルガオンやノイダ界隈では、その後も次々と大型ショッピングモールの建設が相次ぎ、スーパーマーケットやコンビニも、急速に目新しいものから普通のものへと変化しつつある。

 それでも、首都ニューデリーはそれよりは遅れをとっている。グルガオンやノイダのような新しい開発地ではないため、土地問題や、今までの住民や小売店の声もあり、進出は簡単ではないようだ。最近の新聞にも、小売店が集まってスーパーマーケット進出に対するデモ行為を行っているというニュースを目にした。

 新興エリアに比べて、まだまだ昔ながらの小売店が完全に優勢を保つニューデリーでは、特に生鮮食材に関して言えば、スーパーマーケットで売る意味はあまり感じられない。すぐ外で新鮮な野菜が山ほど屋台で売られているにもかかわらず、先進諸国のスーパーの形だけをマネるかたちで野菜をラップでパックして売ってみせているのだが、管理が行き届いておらず、中の野菜は半分腐っている、というような事態が今のところは目につく。

 とはいえ、暑い中、各小売店を汗まみれになって毎日ひとつひとつ歩いてまわる生活から、車でスーパーマーケットへ行き一気に買う便利さを市民が知ってしまえば、また、スーパーマーケット側も売り方の工夫にまで意識が行きわたるようになれば、あとは時間の問題だと思われる。

 新興エリアに遅れをとってはいるものの、ここ1年、ニューデリーでも、どこかの道路を通り過ぎるたびにスーパーマーケットが新しく出来ているのを目にする。店の品揃えも陳列の仕方も、たった3年前とは比べ物にならないほどの進展を日々、見せている。

 さらに、女性が買い物の主導権を握るようになったという点も、近年のインドの消費ブームに大きく影響していることは明白だ。ほんの少し前までのインドでは、女性保護の考え、もしくは「妻が他の男(店主を含む)に近づくのを防ぐ」といったことに代表される、男尊女卑の考え方から、野菜の買出しも男の仕事という認識だったのであるから。どの国の例にも見られるように、活気のあるマーケットの裏には必ず、女性消費者が存在するものだ。買い物の主導権が急速に女性に移っているという動きは、今後、インドの好景気にさらに影響するだろう。

 

【関連情報】

○NEW WAY.NEW LIFE  2007/05/13
 「Lost In The Supermarket」 生鮮食品スーパーに暴徒5000人 新興チェーンに零細店怒る
http://blog.livedoor.jp/lovespoonful/archives/51075547.html


○インド駐在ブログ:マカイバリ紅茶日記  「インドのコンビニ舞台裏」 2007/11/01
http://makaibari.tea-nifty.com/blog/2007/11/post_3783.html


○アッチャー!? インド生活 「コンビニ発見!」 2007/05/31
http://aranyos.blog62.fc2.com/blog-entry-294.html


○浪人巡礼 「インドにもついにスーパーマーケットが……」  2007/01/30
http://ronin.jugem.jp/?eid=233

 

 


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