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時代転換“機”

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長 
  • 谷口 正和

 20世紀最終の10年だった90年代当たりに盛んに言われていたキーワードが「パラダイムシフト」だった。パラダイムすなわち時代の価値の枠組みが全面的に変わるぞ、ビジネスは根本的に価値認識を変えなければならないぞ、といった論調だった。かのドラッカーは、500年に一度のパラダイムシフトだと言っていた。

 どんな変化も、それが論議され始めてから10年くらいたって実際の現象になって起きるという。論は現実に対して10年先行するということだ。この視点で言えば、今が本当のパラダイムシフトの始まりである。

 その本命は「エコロジー」だ。20世紀が工業優先でエコロジー否定社会だったとすれば、21世紀はエコロジー最優先社会になる。アル・ゴア氏がノーベル平和賞を受けて、ある意味世界中に“衝撃”を与えたが、このような出来事をさきがけに、エコロジーは世界的にライフスタイルのデファクトスタンダード(既定事実)になっていくだろう。

 最近有楽町に開店して、周囲の商環境を変えるくらいの人気を集めている有楽町丸井の今年のクリスマスのテーマは「おしゃれにエコ=グリーン・ハピネス」である。有機栽培の綿製品や食品、自動車のシートを再利用したバッグ、代金がアジアでの植林に使われるカードなど環境保護に役立つ物を集め、ギフトに提案する。場所は一階正面入り口脇の特等席で「環境への配慮はおしゃれ、という意識の高まりに対応した」ということである(日経新聞11/19より)。

 ファッションという分野は、まずライフスタイル傾向の前触れとしてブームやトレンドが来るジャンルだが、クリスマスギフトやファッションにエコが出てきたということは、今後あらゆるジャンルにエコが生活テーマとして出てくるということだ。炊事、洗濯、庭仕事、日常ウェア、それから最大の生活分野である食。どんなことにも、「それはエコにとっていいことか」という問いかけが起きてくる。

 パラダイムシフトの基本法則は、皆さんもご存知の通りの弁証法でいう「正・反・合」である。正トレンドは必ず反トレンドにぶつかり、それがワンステップ上がって解決されて合トレンドになる。その合トレンドがまた正トレンドになり反トレンドにぶつかって・・・・という図式である。

 最近で言えば「父親の復権」がちらほら出てきているのが注目を引く。女性トレンドに対する反トレンドだ。ソフトバンクのCMに出てくる白犬が盛んに一喝するが、これは父親の復権だとは雑誌『アエラ』の読み解きである。『私家版・ユダヤ文化論』で小林秀雄賞を受賞した内田樹氏なども、そのような父権的な匂いがする論客である。どこか「親父の一喝」的なのだ。この「親父の正論」的な潮流は、多分養老孟司氏の『バカの壁』、藤原正彦氏の『国家の品格』などからはじまっていたに違いない。

 社会起業家へ転身するエグゼクティブたちも増えている。 金、儲けよりも大切なものがあるという経済・利益第一主義に対する反トレンドだ。マイクロソフトの重役という地位を捨てNPO  「ルーム・トゥ・リード」を立ち上げたジョン・ウッド氏だ。インド、ラオスなどの途上国に教育施設を設立し、地元スタッフを積極的に雇用するという。東京など世界30都市に拠点があり、2020年までに1000万人の子どもたちに教育の場を提供することが目標だそうである(COURRiR japon 12月号)。

 混沌とした状況が続いてるかに見える今の時代、巨大なパラダイムシフトの真っ只中であることは確かである。それは価値観の一大転換期だ。それは人の生き方の中に、時間に対する認識の中に、場の設計の中に、出来事のあり方の中に、まざまざと現れつつある。これをひとつのチャンスととらえ、変化していくドラマの中に勝機を発見しようということだ。「機」はチャンスそのものである。

 

【関連情報】

○MediaSabor  2007/08/09
 靴を寄付するために起業したデザイナー「ブレーク・ミコスキー」
http://mediasabor.jp/2007/08/post_177.html


○MediaSabor  2007/10/04
 「無給油で2600キロ走行の超低燃費プラグインハイブリッドカー」
http://mediasabor.jp/2007/10/2600.html


○GIZMODO  2007/11/16
 自給自足の家「Zero House」
http://www.gizmodo.jp/2007/11/zero_house.html


○Life is beautiful  2007/07/17
 「はずみ車(flywheel)」を使ったエネルギー蓄積装置の話
http://satoshi.blogs.com/life/2007/07/flywheel.html


○akiyan.com  「持たない暮らし」  2007/03/19
 原則を教えてくれる本は、スゴ本率が高いです。この「持たない暮らし」もそのひとつで、
 示唆に溢れた原則を教えてくれる本でした。さあ、長文いきますよ。
http://www.akiyan.com/blog/archives/2007/03/post_88.html


○[山口揚平,Business Media 誠]  2007/04/03
 「エコロジーブームの中で、エコノミーの意味を考える」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0704/03/news007.html


○sta la sta  2007/06/10
 「シムシティ風の都市開発シミュレーションゲームで環境問題について
 学べる -ElectroCity」
http://d.hatena.ne.jp/starocker/20070610/p1


○赤の女王とお茶を  「沈黙する日本のドラッカリアン」 2006/12/17
 ドラッカーはファシズムへの危機感を通じてマネジメントに目覚め、ビジネスに
 留まらずあらゆる人や組織が無理なく生産性を発揮することで、カリスマや
 上位下達システムに頼ることなく社会を幸福にする方法について考え続けた
 「社会生態学者」でした。
http://d.hatena.ne.jp/sivad/20061217#p1


○日経BP社 SAFTY JAPAN ピーター・F・ドラッカー教授追悼特集
 日本人への遺言 「仕事ができる人の習慣」  2005年
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/contribute/e/01/index.html


○SocialCompany Blog 2.0  2007/10/10
 書籍update「マイクロソフトでは出会えなかった天職─僕はこうして
 社会起業家になった」
http://d.hatena.ne.jp/socialcompany/20071010/p1


○ネコにかつおぶし 2007/10/19
 「マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった」
http://blog.goo.ne.jp/ocean-coral/e/896f0cf85dd25a26956e5ad1c4b8d773


○慶應MCC「夕学五十講」楽屋blog  2006/07/04
 「私を守りつつ公にかかわる」ソーシャルアントレプレナー 金子郁容さん
http://www.keiomcc.net/sekigaku-blog/2006/07/post_121.html


○「もっと元気に働こう!」 2007/11/13
 社会起業家 あらためて・・・   [ワークスタイル]  
http://blog.so-net.ne.jp/tomorrows/2007-11-13


○大学プロデューサーズ・ノート 「社会を変える」を仕事にする  2007/11/21
http://www.unipro-note.net/archives/50392784.html


○Breathe&Stretch 「社会起業家という生き方」 2007/11/13
http://blog.goo.ne.jp/bergamot_scarlet/e/fdc5f02892758fb868c9061c5de4dd5d


○銀座経済新聞  2007/10/10
 「有楽町マルイ」内部公開─VMD強化で「おしゃれな社会人」狙う
http://ginza.keizai.biz/headline/505/index.html


○とんとん・にっき  内田樹の「私家版・ユダヤ文化論」を読んだ! 2007/11/02
http://ameblo.jp/tonton3/entry-10053412845.html


○Letter from the wind 3: 内田樹『私家版・ユダヤ文化論』 2006/07/26
http://letterfromthewind3.cocolog-nifty.com/letter_from_the_wind_3/2006/07/post_b747.html

 

○SoftBank 犬のCM : Aya Ueto(YouTube映像 00:30)
http://jp.youtube.com/watch?v=V61wbZA6mMU


○SoftBankの犬のCM(YouTube映像 00:30)
http://jp.youtube.com/watch?v=Dyq1Nw_YV2U

 

 


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