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インターンから始めたらいいじゃないか! 就職、職業(仕事)選択、キャリアアップに悩む人へ

「インターン」と聞くと、ぱっと連想するのが「医者」なのは、私だけだろうか。どうもそれは間違っていないようで、そもそも医療業界に従事する若い学生たちが、実施訓練をしている期間、インターンと呼ばれている。だが米国に来て以来、インターン、インターンシップという言葉を頻繁に耳にするようになり、それは医療現場に限ったことでなく、ほぼあらゆるビジネスシーンに見られることに気づいた。

米国では、学生が「On-the-job(オン・ザ・ジョブ)」トレーニングを受けながら、最低賃金あるいは無給で働き、その職業について学ぶことは非常に重要だ。

日本のように「各会社流に育てあげる」という価値観は、企業にあまりない。もちろん企業精神や、カンパニーポリシー(企業方針)が徹底しているため、一度社員になると、ガイドラインとして従う指針があるために、写真はみな同じ様子、といったことは確かにあるのだが、むしろ社会人として最低限賃金をもらうレベルに達するには、学生時代に無給でもインターンとして体得してきた経験が必要なのである。

というのも米国においては、「就職活動期間」が季節や時期として一定ではないし、またなんと言っても「経験ベースのレジメ(履歴書)主義」が採用のベースになっているからだ。

どんなに有名大学で、いい成績を取っていても、社会経験がなければ企業としては採用を渋るだろう。一方高卒だとしても、職業を転々としていたとしても、実力でこつこつとはじめた仕事で、成果を上げ、確実にステップアップしていれば、それは採用担当者には好印象だ。

なによりも「レファレンスレター(推薦状)」という推薦者リストにより、過去に仕事をしてきた上司や、仕事仲間たちの情報を提出。実際に採用担当者はリストに挙がっている人に連絡を取り、その人の仕事ぶりを含め、人物像を聞くことができる。それ故に、インターンとして働く学生たちは、それがたとえ無給であっても、よい推薦者リストやレジメ作成のために一生懸命に働くのだ。

かくいう私も、米国で学生をしている間、無給のインターンをいくつかやってみた。日本のアパレル業界で働いた経験はあったものの、米国で「仕事」すらしたことがない私が最初に挑戦したインターンは「ファッション・ショーのフィッター」。

クラスの友人がやはりインターンしていたデザイナーのファッション・ショーで、モデルたちの早替えの手伝いをする仕事。でもこの最初のインターンのおかげで、スタイリストと呼ばれる人たちと知り合う機会ができ、その後何度かファッション・ショーの手伝いをさせてもらえるようになった。

その次のインターンは、トレードショーでの「セールスレップ(営業代理人)」のアシスタントである。とにかく、「職歴」という部分に、採用担当者の目に止まるような情報を書き入れたい。そのための経験値として、無給だろうが、一日拘束されようが、とにかく「がむしゃら」に機会を模索したのだ。

その結果、大学を卒業する頃には、米国のファッション業界における様々な職業を目の当たりにして、最終的にセールスレップ(営業代理人)という職業を選ぶ結果となった。

ではなぜこの職業を選んだのか。それはある人との出会いがある。日本から米国に渡って40年。「セールスレップ一筋」で、その昔は「スニーカー」を売り、時には「鉄」を売り、そして今は「アパレル」を売るというその人は、まさにセールスレップの鏡のような人だ。

米国における「営業マン(Sales)」という仕事はそもそも日本の営業職とちょっと様子が違う。特に「独立系営業代理人(Independent Sales Rep)」と呼ばれる人間は、メンタリティーも、そしてチャンスについても、想像以上にギャンブラーでないとやっていけない。ほとんどの場合「コミッション」のみの賃金体系であるセールスレップ業は、売れる商品、売れるブランドに当たれば大儲け。反対に一生懸命セールスをしても、数字が稼げなければ収入「ゼロ」。

そのかわり、自由度は何よりも変えがたい。営業マンとして「ねばならない」はほとんどないのだ。9時に出勤をしなくてはいけない、とか、スーツを着なくてはいけないとか、そういう拘束はない。もちろん、雇う側からすれば、売上はいくら上げてくれ、と言ってくる。

だがそういう「売上目標」は、企業に勤めていても、どこにいても絶対に与えられるものなわけで、それならいっそ、自分の生活スタイルにあった商品やサービスを、その生活に合わせて販売できたら最高だ、と思うのである。とりわけ日本と米国を自由なスケジュールで行き来したいと思っていた自分にとって、これほど合った職業はないわけである。


もちろんマイナス面もある。なんといっても「ローリスク・ローリターン」なのである。コミッションは良くても2、3割。アパレル業界においては1割から2割が普通である。そのためかなりまとまった量の商品を売らない限り、大儲けすることはできない。

でも例えば人気チームのロゴ入り野球帽だったり、子供たちを虜にする人気キャラクターのぬいぐるみといった、定番ものや、旬のものというのは、けっこう世の中に沢山あるものだ。そういうものとの出会いも、セールスレップの醍醐味である。

近頃日本にも、JSR セールスレップ協同組合?(http://www.e-rep.jp)、JSRA 日本セールスレップ協会(http://www.jrep.jp/) といった組織ができているようだ。全く経験がなくて心配なら、こういう組織の助けを借りてみるのもいいと思う。

運も金も、良い時もあれば、悪い時もある。それはどんな仕事にもつきものだ。それならMY WAYを突き通せる仕事に就くことをお勧めしたい。どんな商品でも、どんなサービスでも、販売をするための活動=営業活動はつきまとうわけだ。だったら自分の好きなもの、好きな人、好きな場所を売る仕事をしたら、これほど幸せなことはない。別に会社に入らなくとも、一人営業会社をはじめたっていい。それが「セールスレップ」なのである。

 


【関連情報】

○MediaSabor  2007/10/23
 「キャリアのスタートに最適な職場」ランキング  ─米国企業の「ジェネレーションY」争奪戦─
http://mediasabor.jp/2007/10/post_243.html


○MediaSabor  2007/06/25
 「フリーランス型社会、米国におけるキャリア形成事情」
http://mediasabor.jp/2007/06/post_142.html


○MediaSabor  2007/06/13
 「部下のほうが高給取りなんて許せない」 管理職か専門職か、あなたはどっち?
http://mediasabor.jp/2007/06/post_127.html


○MediaSabor  2007/03/04
 「ホワイトカラー受難時代 キャリアを築く五つの指針」
http://mediasabor.jp/2007/03/post_26.html


○考えるための書評集 『「人間嫌い」の言い分』 長山 靖生   2007/09/06
http://ueshin.blog60.fc2.com/blog-entry-848.html


○idioglossia  若者はなぜ「決められない」か 2007/03/13
http://p-o-style.blog.drecom.jp/archive/371


○分裂勘違い君劇場  2007/02/06
 「誰かがやらなくてはならない生産性の低い仕事」はどこまで本当か?
http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070206/1170676839


○FPN  齋藤めぐみ(キャリアカウンセリングの専門家) 2007/04/06
 「楽しいことなんて5%?」
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=2218


○リーダーのためのキャリア・デザイン・カフェ
 「一緒に支えてくれて、ありがとう!」 2007/10/31
http://blog.livedoor.jp/stakeid/archives/51001479.html


○朱鳥のブログ  2007/04/27
 ストレスフリーの最強仕事術【会社で自分のやりたい仕事ができるようになる方法】
http://asuka-blog.seesaa.net/article/40200504.html


○Mobil好きなFlyFisher、読書と趣味にくらくらの日々
 「働くひとのためのキャリア・デザイン を読みました」 2007/09/25
http://blog.goo.ne.jp/teruzepperin/e/18e133821d0cea576b3be8b3eb46f858


○CNET  2006/06/29
 「インターンシップを利用して成長するベンチャー --年収1000万円の学生も」
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20150007,00.htm


○新しいマーケットを創り出す事業プロデューサー Topdas
 「売れる人はご縁を大切にする」 2007/04/07
http://blog.goo.ne.jp/topdas/e/c993984dc5fa3bcc128b50e431b79e60


○新しいマーケットを創り出す事業プロデューサー Topdas
 「売れる確率9割?!セールスレップ(営業代行)」 2007/02/03
http://blog.goo.ne.jp/topdas/e/8230a19a2dcb33bd9420b14020655575


○君も経営者になれる! 高城幸司の社長ブログ
 「セールスレップの本を出版・・・営業の仕事は社員からプロに」 2005/08/12
http://blog.goo.ne.jp/k-takagi001021/e/dc93a622a92dc6853095043d44a5c44c


○小田真嘉(おだまさよし)のひとつ上の自分と出会うヒント  2005/09/08
 「インタビュー無料動画:株式会社セレブレイン代表高城幸司さんの上司につける薬」
http://blog.odamasayoshi.net/2005/09/08/151126.html


○河野 浩  セールスレップ奮闘日記 「業界を創る」 2007/08/13
http://salesrep.paslog.jp/article/697126.html


○トップセールス魔法の戦略術 現役営業マンのリアルトーク
 「セールスレップは営業マンの未来形!?」 2006/06/30
http://blog.livedoor.jp/no1sales/archives/50034291.html


○山口陽平 ITmedia オルタナティブ・ブログ 一般システムエンジニアの刻苦勉励
 「夏休み就職インターンシップの思い出」 2007/08/01
http://blogs.itmedia.co.jp/yohei/2007/08/post_81c9.html

 

 


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