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有望インディーズ系ミュージシャンが音楽業界関係者にアピールするネットマーケティングステージ


Broadjam.comを通じてMTVでの楽曲使用に
こぎつけたアーティストYONI

(記事要約)

 ウィスコンシン州マディソンに本拠地を置くBroadjam.comは、1999年以来インディーズ系ミュージシャンの曲を集め、オンラインで販売(1曲99セント)している。Broadjam.comには80,000のミュージシャン、350,000の楽曲が登録されている。

 Broadjam.comのようなサイトは、ミュージシャンが音楽関係者に楽曲をアピールする絶好の舞台となっている。Broadjam.comを通じて音楽出版社と契約が成立、あるいはコマーシャルに楽曲が使用されるといういくつかの成功例もある。

Broadjam.comリンク
http://www.broadjam.com

2007/11/12/Rocky Mountain News(コロラド州デンバーの代表的タブロイド紙)


(解説)

 過去10年で、ミュージシャンがインターネットを活用して宣伝する環境は、目覚ましく発達した。地道にレコード会社にテープを持ち込む、あるいはライブで音楽関係者に見てもらうだけの時代は終わった。

 1990年代デジタル・レコーディング技術が発達し、誰もが手軽に音楽制作する環境が整った。音楽をMP3などのファイルにしてコンピューター上で管理することも可能になった。

 加えてブロードバンドとストリーミング再生が普及し、インターネット上で高音質の音楽を聞くことが簡単になった。ミュージシャンはMySpace.com、Facebook.comといったソーシャル・ネットワーキング・サービスに音楽をアップロードし宣伝するようになった。

 「可能になった」「簡単になった」ということは、誰もが同じことを始めるということ。その分競争も激しくなる。優れた楽曲に交じって、有象無象の音楽ファイルがネット上に溢れる。

 音楽関係者は常にプロレベルの音楽を求める。しからばBroadjam.comのような誰もが利用できるサービスにも、取り扱う楽曲のクオリティを維持するための制約が必要になる。

 Broadjam.comには、音楽関係者に楽曲を配布する「Delivery」というシステムがある。関係者は、「新作映画に使用する楽曲募集」といった告知をする。ミュージシャンは、サイトを通じて楽曲データを送り、コンペに参加する。

「Delivery」サイトリンク
http://www.broadjam.com/deliveries/

 「Delivery」はミュージシャンにとって職業案内所のようなもの。そこでBroadjam.comは、ユーザーがやみくもに音楽を送りつけることを防ぐため、1曲あたり5ドルから20ドルの課金をしている。

 ちなみにBroadjam.comで販売するための楽曲アップロードは3曲まで無料だ。しかし曲数を増やす、あるいは写真、ビデオ、アルバムなどコンテンツを充実させるには年間49.95ドルから199.95ドルの使用料を支払うことになる。より高額なサービスほど、検索で引っかかるプライオリティも高い。

 Broadjam.comでの成功例としては、南フロリダのロック・アーティストYONIのケースがある。YONIは同サイトの「College Credit」というベスト・インディー・ロックを選ぶコンテストに楽曲を提出し、オンライン投票で最も多くの票を得た。

「College Credit」サイトリンク
http://www.broadjam.com/deliveries/

 その結果YONIの楽曲はMTVネットワーク、Oxygenネットワークといった、Broadjam.comとタイアップするメディアで使用されることになった。これら背景を元に2007年1月、YONIは初のフル・アルバム『Extra Credit』をリリースした。

『Extra Credit』の販売サイト:
http://cdbaby.com/cd/songsofyoni

 もっともYONIがアメリカの音楽シーンで大成功したかと言うと、まだまだ先は長いというのが現状だ。アルバムの売り上げが全米ヒットチャートに入るわけではない(エージェントいわく数百枚)。2008年に予定されているコンサート・ツアーも大学巡り程度だ。

 音楽シーンでブレイクするには、最終的にオーディエンスを圧倒するアーティスト・パワーが必要だ。しかし、インターネット環境が整ったおかげで、業界にコネのない有望ミュージシャンにもチャンスが増えた。才能さえあれば道は開ける・・・そうあって欲しいものだ。

 

【関連情報】

○MediaSabor  2007/09/24
 「日本の音楽業界は、なぜネットプロモーションに及び腰なのか?
  ─ 鍵を握るソーシャルメディアの活用」
http://mediasabor.jp/2007/09/post_222.html


○MediaSabor  2007/11/19
 「ノンパッケージ流通(ダウンロード配信)時代を反映した音楽ヒットチャート改革」
http://mediasabor.jp/2007/11/post_262.html


○遅延結節点 2007/05/04
 「YouTube にあるレコード・レーベル公式チャンネル」
http://d.hatena.ne.jp/takunama/20070504/youtube


○muzie ─日本最大級のインディーズ&アマチュア音楽コミュニティーサイト
http://www.muzie.co.jp/


○Web担当者Forum  2007/08/30
 「インターネットは消費者の音楽購入をどう変えているのか?」
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2007/08/30/1840


○ ORICON STYLE  「音楽SNSサイトの未来像!?」  2007/06/06
http://www.oricon.co.jp/news/special/45159/


○池田信夫blog 「成長する音楽産業」 2007/07/06
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/d6f2b616ee2a0bee1b2590537bafb058


○SomeDays 2006/12/08
 「はてなでインディーズの音楽を支援してみてはどうだろう」
http://d.hatena.ne.jp/yuyu99/20061208/p3


○日日の日キ 2007/09/07
 「さきほど契約してるCDの流通業者の方とお話したのですが、いわゆる
  インディーズ系のCDがほんまに危機的状況に陥っているようです」
http://d.hatena.ne.jp/amiyoshida/20070907/1189129668


○KAZAANATOMY 2007/09/08
 「恐竜の首と尻尾の間にとりのこされたインディーズミュージック」
http://d.hatena.ne.jp/shibuyan730/20070908/1189270417


○ITmedia News  2007/09/13
 無料音楽DLの「mf247」、CCライセンス導入
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0709/13/news094.html


○ITmedia アンカーデスク 2006/09/15
 mF247の丸山茂雄さんが考えた「焼きそば屋的Web2.0ビジネス」(上) (1/2)
http://www.itmedia.co.jp/anchordesk/articles/0609/15/news041.html


○CNET  2006/10/16
 「mF247、携帯電話向けサービスを正式開始--無料着うたフルとコミュニティ機能を搭載」
http://japan.cnet.com/mobile/story/0,3800078151,20274727,00.htm


○CNET  2005/11/11
 「楽曲はオンライン販売のみ--オールデジタルの音楽レーベルが新時代を開く」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20090718,00.htm

 

 


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