同性愛が違法のインドでゲイであることを告白し、エイズ(AIDS)患者やアーティストを支援するマンヴェンドラ王子
- インド在住ジャーナリスト
インドで一番有名なゲイと言えば、マンヴェンドラ(Manvendra Singh Gohil)王子だ。
同性愛が違法のインドにおいて、グジャラート州の王家に生まれながらも、家族に自分がゲイであることを告白したのが2002年。その後、2005年に公にカミングアウトして一大スキャンダルになり、その時、彼の母親は新聞広告で大々的に「私は息子を勘当します」と掲載したそうだ。
2006年には一族から「社会に対して不適な活動をした」との旨で勘当され、王位継承権や称号を失ったのであるが、彼は今では同州で最大のHIV/AIDS団体の議長でもあり、精力的にエイズの末期患者の保護活動をし、芸術を愛する心から自分の宮殿で芸術のための祝祭を毎年開催する、インドの同性愛人権活動の象徴である。
先日彼に、あのアメリカの大人気トーク番組「オプラ・ウィンフリー・ショウ」から声がかかり、晴れて出演を果たした。そのようなグローバルで視聴されているトーク番組に出るのは、インド人男性としては初めてとの事。この出演により、マンヴェンドラ王子の名とインドが同性愛を違法としていることが一気に知られたようだ。
2005年に地元の信頼できるリポーターにカミングアウトした時のことを「地元周辺(グジャラート州)に広まるのではなく、もっとインド全体や世界全体が注目することに繋がっていけばいいと期待して、実行した」と説明しているマンヴェンドラ王子の希望は、順調にかなっていると言えるであろう。
ムンバイのアップマーケットにある彼の家とグジャラート州にある由緒ある彼のRajavanti宮殿を忙しく行き来する中で、最近、彼はナルマダ川周辺にあるいくつかの彼の土地に、エイズ患者のための施設を作ろうと考えているそうだ(勘当されたといっても、現代のインドの相続法に基づいた結果、勘当は象徴的な意味にとどまり、実際に相続権を失うことにはならなかった)。
「親族にも見放されたエイズ末期患者のための家を作りたいのです。彼らは薬ではなく、愛を必要としています。また、エイズで死んでいく彼らの為の火葬場も作りたいと考えています。これらを現実化するように活動中です」というのが目下、マンヴェンドラ王子の目標だそうである。
彼はまた「同性愛者も、創造性が豊かで優れているのだ」というモットーをプロモートする目的で、毎年10月にピンクに塗られた自らの宮殿で「音楽と芸術の祝祭」を開催している。「この国のダンサー、舞踏家、画家を含む数え切れないアーティストたちの多くが、ゲイなのですよ」と語るマンヴェンドラ王子は、ストレート、ゲイの分け隔てなく全てのアーティストの表現の場に、この祝祭を利用してもらいたいと考えている。この祝祭は、パフォーマンスをするアーティストたちのためだけでなく、地元の少数民族を含むローカルの人々にも、一年に一回、宮殿の様子を目にする事ができるチャンスを与えているということである。
政略結婚で結婚した妻と、“正常な結婚生活”を送れずに15ヶ月で離婚したマンヴェンドラ王子は「アーティストが才能を受け継いで生まれてくるのと同じようにして、私たちはゲイに生まれました。そしてこのことは、皆が理解するべき事なのです」と言っており、そのためにこういった祝祭を開催しているのだそう。
マンヴェンドラ王子は王族特有の遊びである、狩りや乗馬、ポロゲーム、骨董集めには興味がなく、「音楽鑑賞とセックスが大好き」だそうだ。現在、彼は父親とは和解しつつあるそうで、失った王族としての称号も返還される方向である。
マンヴェンドラ王子の存在やその活動に非常に癒やしを見出してしまうのだ。インドに住んでいると周り中が、理系頭脳の人間だけの活躍や、ビジネスの話、お金の話、“名声と成功”の話題でまみれていて、気づかないうちに心が枯れそうになっているからだろうか。
マンヴェンドラ王子のような愛や美を大切にする心は、突っ走っているインドに今、一番欠けているものなのかもしれないと、漠然と思う。
※インドは現在は「インド共和国」であり王制ではないのだが、実際のところインド全土には、いまだに昔か らの王族が散らばっている。彼らは現在も、代々受け継がれた宮殿に住みながら、昔と変わらぬ伝統を守り、「王族らしい」生活をしており、「王(マハラジャ、ラジャ)」と呼ばれている。
【関連情報】
<YouTube>
○Gay Indian Prince (01:38)
http://www.youtube.com/watch?v=c6nKBih4z4w&feature=related
<記事、ブログ>
○ゲイジャパンニュース 2007/10/16
インドのゲイ王子 アメリカ人気番組「オプラ」に出演へ
http://gayjapannews.com/news2007/news224.htm
○bloggers’ park 「Gay prince on Oprah Winfrey show」 2007/10/27
http://www.mumbaimirror.com/net/mmpaper.aspx?page=article§id=41&contentid=20071027200710270239349372c838490
○フツーに生きてるGAYの日常 2007/01/19
「槇原敬之さん、メディアで初の同性愛公表」
http://akaboshi07.blog44.fc2.com/blog-entry-620.html
○芸能音楽・画像と動画 2007/12
「ジョディ・フォスター,やはり同性愛者…のカミングアウト」
http://geinoongaku.livedoor.biz/archives/51150937.html
○イザ! 2007/10/22
ダンブルドア校長は「同性愛者」 ハリ・ポタ著者明かす
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/europe/92948
○草日記 2006/09/10
「社会」の問題じゃなくて、あなたがあなたの子供を幸せにできるかどうか、
という問題、かもよ
http://d.hatena.ne.jp/kusamisusa/20060910/p1
○ITmedia News 2007/10/13
「同性愛者が働きやすい企業」一覧、ハイテク企業にも高い評価
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/13/news004.html
○On Off and Beyond 「ゲイの男子が生まれる確率」 2006/07/07
http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/07/post_2.html
○今宵、映画検索。「レズビアン、ゲイ、性転換の映画いろいろ」
http://cinema.livedoor.biz/archives/20573843.html
○松岡正剛の千夜千冊『ゲイ文化の主役たち』 ポール・ラッセル 2006/05/02
ともかくこのように、著者は独断と偏見でランキングをつけた。これでは
誰だって文句をつけたくなるのだが、ところがではこれに代わるランキングを
してみよと言われると、こんなに手のこんだことはとうていできない。やはり
脱帽するしかなくなるのだ。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1137.html
○松岡正剛の千夜千冊 : 『やおい幻論』 榊原史保美 2002/11/18
その美少年たちが同性愛にしか関心がないとしたら、どうか。そんな例は現実には
きわめて少ないだろうが、それを描きたいとおもうことは許される。1980年代に、
少女たちが集う一隅から登場したきわめて不思議な小説群があった。その名を
「やおい」という。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0661.html
○松岡正剛の千夜千冊・遊蕩篇 『薔薇族』編集長 伊藤文学 2007/11/28
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1208.html
○記識の外 ジャマイカ:「ゲイの生徒を殺せ」と暴動が発生 2006/05/02
http://d.hatena.ne.jp/using_pleasure/20060502/1146524019
○GIGAZINE 2007/04/06
「セーフセックスを訴えるポスター画像やムービーいろいろ」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070406_safe_sex/
○Kawakita on the Web 2006/12/09
国際エイズ月間・日仏交流企画シンポジウム
「これからの多様な性&家族&ライフスタイル」 参加
http://d.hatena.ne.jp/kwkt/20061209#p1
○CNET 2007/05/08
「携帯電話を使うほどエイズ撲滅に貢献--FOMA M702iSのレッド端末」
http://japan.cnet.com/mobile/story/0,3800078151,20348365,00.htm
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