Entry

多言語字幕をつけて、世界中の人と動画を共有する「dotSUB」(ドットサブ)

動画に字幕を付けるサービス、「dotSUB」(ドットサブ)http://www.dotsub.com/ に注目が集まっている。ドットサブは共有した動画に、一般利用者が簡単に字幕をつけられるサービスを展開している。このサービスによって、ひとつの動画を多言語で楽しむことが可能になる。情報共有における言葉の壁を打ち破る、パワーツールとなるのだろうか。

ドットサブは基本的に誰でも動画の字幕を書き、変更することができる、Wikipedia のようなオープンなフォーマットを採用している。利用者はYouTubeのように動画をアップし、多くの場合、まず英語の字幕を付ける。英語の字幕がつけられた後は、一般利用者によって多言語に翻訳されていく。字幕の修正や変更も、簡単に行うことができるという仕組みだ。

その他、ドットサブのフリーランス翻訳者がビデオを翻訳し、字幕を制作するクローズなフォーマットもある。この場合、一般利用者が勝手に字幕の変更をすることはできない。企業やビジネス向けの動画ならば、こちらのフォーマットが利用しやすいだろう。創立者のマイケル・スモーレンズ氏は、収入としてドットサブが請け負う翻訳料や、ライセンス料、多言語の字幕制作を希望するメディアからの受託料などを見込んでいる。

現在は、企業や団体がコミュニケーションツールとして、ドットサブを試験的に利用し始めている。例えば、スチール会社の世界最大手エルセロール・ミッタルは、ビジネスを展開する世界14ヶ国語の字幕で企業ビデオを作った。

その他、科学、技術、未来のアイディアを論じる会議、「PopTech」はドットサブを使い、8ヶ国語の字幕で会議の様子をアップロードしている。国際的なビジネスパートナーを持つ企業にとっては動画を多言語で共有するのは大変重宝する。メディアやコミュニティーであれば、多言語字幕によって視聴者の層を確実に増やすことができる。今まで行ってきた、翻訳や字幕制作の手間やコストを省けるという点でも利用価値が高い。

ドットサブは、インターネットユーザーの利用言語の変化に対応している点でも注目できる。ビジネスウィークによると、現在インターネット利用者言語の一位を占めるのは英語で、全体の31.2%。次いで中国語が15.7%だが、今後は中国語利用者が増えることが予想されているという。現に2000年から2007年までの間で、英語の利用者が1.57倍の伸びであったのに対し、中国語利用者の数は4.96倍増加している。英語が圧倒的であった利用者言語が変化するのに伴い、インターネット上の言語を多言語に対応させるのは自然の流れだろう。

しかしまだまだ懸念される問題点はある。例えば、翻訳を一般のボランティアが行う場合、言葉がぎこちないという点が見られる。一般の利用者が変更できるため、利用者が増えるにつれて、改善されるということも考えられる。しかし字幕つきの動画を見るのは無料であるため、自分の情報源の幅を広げるものと思えば、あまり気にならないのかもしれない。

YouTubeのおかげでビデオ(動画)共有が一般的になった今、世界中のあらゆる動画を見るのはとても簡単になった。しかし、見たい動画でも知らない言語であれば、内容が充分伝わらないのが現状だ。ドットサブがこれから世界的な情報共有を助けるツールとなることを期待したい。

 

【関連情報】

○メディア・パブ 2007/11/13
 「多言語字幕対応の動画サイト“dotSUB”,ボランティアユーザーが字幕を投稿」
http://zen.seesaa.net/article/65562637.html


○Web担当者Forum  2007/11/26
 「ユーザーはテレビCMも見ている/動画共有サイトに関する調査」 
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2007/11/26/2272


○ITmedia News  2007/06/04
 無職から社長に――「字幕.in」が会社化 (1/2)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/04/news018.html


○ITmedia News  2007/11/09
 「ニコ動、2次創作OKで新作映画を公開」 2007/11/09
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/09/news035.html


○CNET  2007/11/26
 「動画共有サイトに関する調査--興味をもった動画の情報、約4割が口頭で友人と共有」
http://japan.cnet.com/research/column/webreport/story/0,3800075674,20361684,00.htm


○CNET  2007/11/22
 「ニコニコ動画がテレビの座を奪う日は来ない--ひろゆき氏の分析」
http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20361579,00.htm


○インターネットの真の姿とは  「創作発表の場としてのニコニコ動画」 2007/11/19
http://d.hatena.ne.jp/qaze00/20071119/1195398791


○YaSuYuKiの日記(nicovideoミラー)
 「言いたいことは全部言われてしまったな」 2007/11/28
  ニコニコ動画は、ビデオデッキよりも、より、違法な用途に使用される可能性が
 高いことは事実だ。だが、それが本当に映画業界を始めとするコンテンツ業界の
 利益を圧迫するのか、真剣に検討されたのだろうか?
http://d.hatena.ne.jp/YaSuYuKi/20071128/1196250136


○OSAKA ELECTRIC AND ROCK DIARY 2007/11/24
 「コンテンツ大量高速消費時代の負の側面について」
http://blog.livedoor.jp/gl14811/archives/51227444.html


○smashmedia 「テキストのライブ化」 2007/11/28
http://smashmedia.jp/blog/2007/11/000729.php


○Attribute=51 「ニコニコ動画っぽい」動画サービスのまとめ  2007/11/26
http://d.hatena.ne.jp/guri_2/20071126/1196057996

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/472