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運転免許点数を他人に売買できるフランス、違法化へ政策転換か

<記事要約>

 免許証保持者は、交通違反をすると、罰則として持っている点数が引かれる。交通規則が厳しくなったフランスでは、点数を他人に譲渡するネットワークがあり、2006年から活用する人口が増えていた。それを受け内務省は、他人への売買を禁止する法律を2008年上旬に国会で決議するための提案を行った。違法者には、最大で3年間の禁固刑と45000ユーロ(約724万5千円/1ユーロ=約161円換算)の罰金が適応される。

http://cultureetloisirs.france2.fr/automobile/actu/36470414-fr.php
(11月21日の国営放送フランス2の記事より)


<記事解説>

 2006年にサルコジ氏が内務省大臣だった時、ヨーロッパ内でも数値の高かったフランスの交通事故を減少させることが政策の要のひとつだった。スピード違反、飲酒運転撲滅運動が開始された。厳しく取り締まるために、スピード違反を自動的に探知するレーダーが増設され、取り締まる警官も増え、罰金、点数をとられる運転者が続出した。

 これからも年間400─500個のペースでレーダーを新設していくという。車やバイクを日常的に使う人は、ちょっとした気の緩みが免許停止につながる。違反をし、点数が少なくなったドライバーで、車両が使えなくなると仕事に行けない、仕事ができない人も少なくない。

 そんな人の裏道として知られるようになったのは、他人のペーパー・ドライバーに点数をもらう方法だ。現状では、点数を売る側が、点数を買った側の交通違反の責を負うことに了承すればよく、譲渡を禁じる法律はない。

 ネットが発達した現代では、点数の売買が、日常的に行われ、組織犯罪の収益にまでなっている。1点につき250─2600ユーロの間で交渉される。平均すると700ユーロ(約11万2700円)前後で売買されるので、満額あるペーパー・ドライバーにとっては、割のいいビジネスだ。

 運転免許保持者には、12点の持ち点がある。しかし、若者の事故率の高さを反映して、免許を取得したばかりの新米ドライバーは、最初は6点しか保持できない。3年間優良ドライバーでいると、やっと12点が持ち点になる仕組みだ。

 2008年1月から新米ドライバーは、3年間は2点しかもてず、その後毎年3点加算されるようになる。これでは、ちょっとした不注意で点数がすぐ底をついてしまう。車を必要とする人は、藁にもすがる思いでインターネット上の書き込みを探す。

 メールで交渉が成立すれば、例えば、レーダーでスピード違反の罰金申告を受けた人は、「罰則免除申請」を提出して、実際に点数を引かれる人の指名、住所を記入するだけで肩代わりしてもらえる。今までは、夫婦間、親が子供の肩代わり、のように家族や近しい友人が犠牲を払ってきた。

 ここ数年は、車に乗らなくなった祖父母の点数が狙われている。運転免許が終身のフランスでは、老人ホームに居る彼らにとって、交通違反で点数が減る事はなく、運転免許は身分証明書にしかならない。彼ら自身が知らないうちに、点数が他人に譲渡されていることもあるのだ。

 しかし、フランスも欧州連合の調和協定に従って運転免許証は、2012年に終身から10年期限の免許に移行する。更に75歳以上のドライバーは、定期講習を受けなければ免許を更新できなくなる。

  免停目前のドライバーが点数を取り戻す方法はもうひとつある。教習所か認可された施設に行き、講習を受けるのだ。260ユーロする2日間の講習を受けると4点戻ってくる。これは、純粋な金儲けシステムと揶揄されている。講習料が高いことも、点数の個人間売買を助長する要因となった。仕事をしている人が、有給休暇をとって講習をうけるよりも、単に点数を買ったほうが効率的というわけだ。

  2008年に入り、国会で点数譲渡を禁ずる法律が認可されれば、頻繁に車を使うドライバーは、更に注意を払わなくてはいけない。世の中は、エコロジー重視で車両使用抑制の傾向にあり、ドライバー達にとってどんどん住みにくい世界になっていく。

 

 


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