Entry

新聞社ニュースサイト再編でオンラインジャーナリズムの特性を発揮できるか

●新聞社系サイトの再編
 
 ネットユーザーにとって、ニュースサイトとはいったい何なのだろう。一般にニュースをイメージするサイトとしては、新聞社や放送局のサイトなのだろう。今年は、その新聞社のニュースサイトをめぐっては、大きな再編が起きた。MSNがこれまで組んで「MSN毎日インタラクティブ」を運営していた毎日新聞が独自のニュースサイト「毎日jp」を開設した。その一方で、MSNは産經新聞社と提携。「MSN産経ニュース」を始めた。

 ネットレイティングスの「ネット利用動向調査」によると、これらのニュースサイトは、前身となるニュースサイトの利用者数を大きく上回った。9月の「MSN毎日インタラクティブ」の利用者は404万人。10月の「毎日jp」の利用者は472万人。落ち込みが懸念されたが、その予想を大きく上回った。一方、「MSN産経ニュース」の10月の利用者は414万人で、9月の「Sankei Web」の利用者169万人をはるかに超えたことになる。紙の部数では低迷を続ける両紙だが、ネット戦略は成功していると言えるだろう。

 一方、朝日の「asahi.com」、読売の「Yomiuri Online」、日経は「NIKKEI NET」はほとんど変化していない。三社は、インターネット分野での共同事業と販売事業の業務提携を発表している。2008年初頭に共同ポータルサイト「ANY」を開始する予定ではあるが、読み比べの他、どのようなサービスがあるのか、具体的にはまだ分かっていない。

 ユーザーにとっては知りたい情報に巡り会えればそれでよい。特にネットでは一次情報や見出しで勝負されることが多いだろう。そのため、文章上の工夫よりも、豊富で正確な情報量が求められる。「MSN産経ニュース」が、スクープを紙面より早く出したり(ウェブファースト)、裁判での詳細な情報をネットで発信しているのは、そうしたニーズに合わせたものだ。


● 知るだけでなく参加するニュース

 しかし、情報収集だけではく、ニュースをエンターテインメントとして楽しむユーザーも多い。2ちゃんねるの「ニュース速報」板などはそうしたユーザーを引き寄せた。そして、そのニュースについて議論したり、事実に関して補完する作業が行われた。ニュースに参加したり、コメントをしたいユーザーがいることを積極的に評価したYahoo!Japanは、ニュースにコメントを付けられるサービスを始めた。これまでYahoo!は、ソーシャルブックマークでそうした機能を補おうとしてきたが、コメント自体が「ニュース」になり、そのコメントを読みにくるユーザーがいることを知ったためだろうか。
 
 一方で、ブログで書かれたことがニュースになる現象が頻繁になった。アイドルなどが自身のブログで書いたことが、スポーツ紙や女性誌などよりも早く話題になる。そして、時折、コメント欄が荒れてしまう「炎上」になっていた。その「炎上」に注目したのが、ソーシャルブックマーク「炎ジョイ」だった。スパイダーネットワークスが「問題となっているブログへのアクセスを抑え、ブログ炎上のガス抜き」をすることが狙いだったが、かえって炎上するブログが増えてしまったことで、2日間でサービスを停止することになった。

 果たして、今後はどんなニュースサイトが登場してくるのだろう。現在では個人のニュースサイトや人気ブロガーのブログ、市民記者のニュースサイトなど、「ニュースとは何か」が多様化しつつある。その多様化したニーズをうまく捕まえることができるサイトとはいったいどんなものなのか。ネットの利用時間が増え、ケータイ小説が人気を博している現在、ニュースサイトは活気づくのだろうか。
 
 


【関連情報】

○ガ島通信 「新聞社 破綻したビジネスモデル」 河内孝 2007/04/24
http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20070424/1177417920


○黒犬通信「新聞社─破綻したビジネスモデル」2007/04/15  
http://blog.odyssey-com.co.jp/kuroinu/2007/04/post_6a54.html


○むとうすブログ 2007/05/16
 (書評)新聞社---破綻したビジネスモデル---
http://samayoi-bito.cocolog-nifty.com/mutous/2007/05/post_933c.html


○ITmedia News  2007/11/21
 「毎日.jp」「MSN産経ニュース」、旧サイトよりユーザー増加
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/21/news101.html


○ITmedia News  2007/09/18
 ブロガーの力も借りる「毎日jp」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0709/18/news064.html


○日刊サイゾー 2007/10/29
 Yahoo!ニュース担当者が語る!【1】朝日も日経も“競合じゃない”
http://www.cyzo.com/2007/10/yahoo1.html


○junhara's blog 「ANYは成功するか」 2007/10/01
http://jun.typepad.jp/junhara/2007/10/post_1be4.html


○CNET  2007/10/23
 「ソーシャルメディア化進めるヤフー--ニュースにコメント欄を追加し
  差別化ねらう」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20359342,00.htm


○CNET  2007/09/25
 新聞より早く速報を出す--MSと産経グループが組んだ「MSN産経ニュース」
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20357097,00.htm


○FACTA online  2007/09/27
 「ニュースサイト戦国時代――ヤフー井上雅博社長に聞く(上)」
http://facta.co.jp/blog/archives/20070927000524.html


○メディア・パブ 2007/02/16
 「大手通信社APもソーシャルメディアとの関係強化を急ぐ」
http://zen.seesaa.net/article/33448878.html

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/487