Y世代(ジェネレーションY)と職場で向き合う時代がやってきた
- オーストラリア在住ジャーナリスト
<記事要約>
Y世代(ジェネレーションY)は、中小企業に最も人気のない従業員であることが、オーストラリアの企業1,800社のインタビューに基づく最新のセンシス・ビジネス・インデックスで明らかになった。
中小企業事業主の29%が採用したいのは、信頼性や経験、仕事の質の高さ、プロ意識を兼ね備えたベビーブーマー世代。続いて、28%が信頼性や技術力、情熱を持つX世代(ジェネレーションX)を好み、これらの世代が雇われる可能性は、Y世代の2倍となっている。
Y世代を望むのは、わずか13%。熱意や学習意欲はY世代の最大の強みだが、信頼性や経験不足、頻繁な転職、個人的態度などが、雇用者の懸念を引き起こしている。
今年7月に315人の中小企業事業主を対象に実施されたスマートカンパニー(SmartCompany)の調査でも、Y世代への強いためらいが明らかになった。スペルや文法に弱く、適切な企業活動を構成するものが何なのか理解できないことが、最大の悩みの種。約70%の雇用者がこうした分野でのY世代の従業員の能力に不満足と報告した。さらに、48%がコミュニケーション能力に失望し、37%が期待に沿うだけの専門技能が欠如していると不満を示している。
2007/11/27 SmartCompany(http://www.smartcompany.com.au)より
<解説>
Y世代の生年に関しては諸説あるが、オーストラリアではおおむね1977─92年の間に生まれた15─30歳を指すようだ。この年齢層の人口は約450万人で、オーストラリア人の4─5人に1人がこの世代グループに属していることになる。ちなみに、ひとつ上のX世代は1965─76年生まれの30─42歳、ベビーブーマー世代は1946年─64年生まれの43─61歳あたり。現在は、この3つの世代グループが労働人口の大半を占めているわけだ。
Y世代については、これまではマーケティングという観点から、ほかの世代グループと異なるライフスタイルや価値観について、「ターゲット」として語られることが多かったように思う。ここに来て、長年に渡って労働市場を支えてきたベビーブーマー世代がリタイヤ適齢期にさしかかり、労働力やマネジメントという視点から、個々のY世代と相対する必要に迫られている。
Y世代は、ホワイ世代(generation why)、デジタル世代(digital generation)、ミー世代(“me me me”" generation)とも言われる。「どうして?」と常に意味を尋ね、テクノロジーを享受する生活を送り、自分第一主義ということらしい。形容する言葉は、野心的(ambitious)で、要求が多く(demanding)、せっかち(impatient)と続く。キーワードは、「今すぐ(right now)」だ。
好むと好まずに関わらず、彼らの特徴には、旧世代が汗を流して切り拓いた21世紀社会の現実が色濃く反映されている。日本でいえば、ポスト団塊ジュニア世代に相当する年代に共通する点も少なくはないだろう。ただし、資源ブームに沸き、ずっと好景気の続いているオーストラリアのY世代は、不況を知らずに成長した。失業率は、今年に入って33年ぶりの低水準を記録したほどだ。
雇う側からしてみれば、近道をしたがり、てっとり早く報奨を求める傾向の顕著なY世代のマネジメントは、確かに厄介なことに違いないだろう。けれど、人材不足の中、優秀な従業員を確保・維持していくためには、これからさらに労働人口に占める割合が増えることが確実なY世代と向き合わないわけにはいかない。
彼らが望むように、自分らしさを保ちながら会社で存分に実力を発揮できるかどうかは、これからの社会の成り立ちに大きな影響を与えることにもなる。「意味のある仕事がしたい」という思いは、会社にとっても決してマイナスではないはずだ。
調査では、事業主の多くが同世代を好む傾向も表れていた、ベビーブーマー世代は3人に1人が同じベビーブーマー世代を、X世代はさらに割合が上がって、実に半数がX世代を雇いたいと答えたのだ。おもしろいのは、X世代の残り半数のうち、ベビーブーマー世代を好む割合(20%)の方が、Y世代を好む割合(10%)よりもずっと多いことだ。
いつの間に、X世代はこんなに保守的になっちゃったのだろう、とちょっとおかしくなった。わたしたちX世代は、まだ学生や社会人になりたてだった頃、「理解できない新人類」と言われはしなかったっけ? 既成のシステムやルールに反発して、納得できる新たなやり方を模索してはいなかったっけ?
いつの時代も、若者がやることは年長者たちの期待通りとはいかないもの。想定内の若者なんてつまらないし、異なる時代に生まれ育った「彼ら」と「我ら」が違うのは当たり前だ。世代間ギャップがなくなる日は、おそらくやってこない。反発する方だって、それをよく承知の上で、迎合ではなくリスペクトを求めているのだと思う。
【関連情報】
○MediaSabor 2007/10/23
「キャリアのスタートに最適な職場」ランキング─米国企業の
「ジェネレーションY」争奪戦─
http://mediasabor.jp/2007/10/post_243.html
○Animation recruiting video(YouTube映像 01:30)
http://jp.youtube.com/watch?v=1RG1dXO19Pk
○Durex Recruitment Commercial 4(YouTube映像 00:34)
http://jp.youtube.com/watch?v=gUU_ln6hOhw
○Durex Recruitment Commercial 1(YouTube映像 00:30)
http://jp.youtube.com/watch?v=OGG6IM6DkkI
○CNET 2007/07/19
「優秀な学生の獲得にあの手この手--シリコンバレーの人材確保裏事情」
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20352648,00.htm
○CNET 2006/07/14
「サイバー藤田氏とワークス牧野氏が語る、ベンチャー企業が人材獲得競争を
勝ち抜く秘訣」
http://japan.cnet.com/sp/nils2006s/story/0,2000062938,20171067,00.htm
○雑種路線でいこう 「人材不足?の背景」 2006/04/26
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20060426/hr
○Munchener Brucke 2006/10/22
「人を育てる」という最低限の社会的責任を放棄した企業
http://d.hatena.ne.jp/kechack/20061022/p1
○Life is beautiful 2005/11/27
「Aクラスの人はAクラスの人を採用したがるが、Bクラスの人はCクラスの人を
採用したがる」
http://satoshi.blogs.com/life/2005/11/aabc.html
○ユメのチカラ 「若い人に人気のない産業は減衰する」2007/11/04
http://blog.miraclelinux.com/yume/2007/11/post_1ab2.html
○内田樹の研究室 「若者はなぜ3年で辞めるのか?」を読む 2007/01/04
http://blog.tatsuru.com/2007/01/04_1225.php
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