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政治もビジネスに!スペイン国王がベネズエラのチャベス大統領を一喝したことが携帯着メロ、Tシャツ販売などの社会現象へ

 イベロアメリカ首脳会議の席上、スペインのフアン・カルロス国王が、ベネズエラのチャベス大統領に「黙れないのか」と放った一声が、さまざまな波紋を広げた。これが政治、外交的な問題のみならず、社会現象を引き起こしている。

 イベロアメリカ首脳会議とは、欧州のスペインとポルトガル、そして両国の旧植民地であるラテンアメリカ諸国などから計22か国が参加して行われる国際会議だ。1991年から毎年開催されているこの会議は、大半がスペイン語圏の国で、ポルトガル語も類似した言語であることから、ほとんど通訳なしで会議が開催される。お互いに母国語で会談できるがゆえに、ラテン気質の民族性もあって、首脳同士が感情的な口論をする光景も珍しくない。

 ラテンアメリカ諸国では近年、次々と左翼政権が誕生している。メキシコからアルゼンチンまで、カリブ海諸国を含むこの中南米地域の大半は、スペインやポルトガルに植民地支配され、19世紀の独立後は米国の影響下に置かれて「アメリカの裏庭」と化す。こうした侵略や長年に及ぶ支配から、全般的に庶民の間では反欧米感情が強い。またグローバリゼーションへの反発、イラク戦争による嫌米感の高まりもあり、近年はポピュリズム的な政権が台頭してきた。

 原油高も影響して産油国ベネズエラを筆頭に、反米左翼のポピュリズム的な政権が存在感を高めている。南米ベネズエラのチャベス大統領は、その過激な発言が国際報道の誌面を賑わしてきた。たびたび米国のブッシュ大統領を非難し、2006年国連総会の演説ではブッシュを悪魔呼ばわりしている。そんなチャベス大統領が、かつての宗主国スペインにも噛み付いた。

 イベロアメリカ首脳会議最終日の11月10日、スペインのサパテロ首相が席上、チャベスに何度も発言を遮られた。イラク戦争に派兵した「ブッシュの旧友」のアスナール前首相を、チャベスが「ファシスト」と罵ったのである。サパテロは首相就任後にイラクから撤兵させ、アスナール前首相とは本国では政敵であるが、チャベスの非難に対してはアスナールを擁護した。しかしチャベスはしつこく非難を繰り返したため、業を煮やしたスペインのフアン・カルロス国王が一喝を入れたのである。

 「¿Por qué no te callas?(ポル・ケ・ノ・テ・カジャス)」

 これを直訳すると「なぜ君は黙ることができないのか」という意味になる。スペイン語では目上の人や初対面など相手に敬意を持つ場合は3人称を使い、親しい友人や目下の人に対しては2人称を用いる。ここで国王は2人称を使っているので、チャベスに対しては「黙れ」と命令に近い意味合いだ。会議ではその後に、かつてのゲリラ闘志で中米ニカラグアのオルテガ大統領がスペインの外交を非難したため、ついに国王は退席してしまった。

 その後日にチャベスは、国王に発言の謝罪を求め、ベネズエラ国内で活動するスペイン企業の追放を示唆するような発言をした。これに対してスペイン側は、あくまでも静観の構えで、事態を沈静化させようとしている。

 一方メディアの反応は、チャベスに対する賛否両論の立場から、さまざまな視点で取り上げている。フアン・カルロス国王の発言をそれとなく讃えるような反応から、その発言が旧植民地のベネズエラに対する「いじめ」ととらえる論評まで。動画共有サイトのYouTube(ユーチューブ)を見ると、スペイン語がわからない人でも、そのパロディーが理解できるだろう。この場面を取り上げた関連動画のアクセス総数は、数百万件に及ぶ。

 また「¿Por qué no te callas?」の着メロまで登場し、ダウンロード数はわずか1週間で50万件を超えたそうだ。さらに文字や場面をデザインしたTシャツ、マグカップ、ピンバッチなどが登場。スペインから中南米諸国まで、広く流行している。

 スペイン国王による「¿Por qué no te callas?」のひと言は、スペイン語圏の報道で、今年の流行語に取り上げられるのは間違いない。

 

【関連情報】

○CNN co.jp  2007/11/20
スペイン国王の「黙れ!」50万人がダウンロード
http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200711200017.html


YouTube、問題の場面(00:12)
http://www.youtube.com/watch?v=lUZxlXkbaxM


YouTube、問題の場面と国王途中退席、英語字幕付き(01:44)
http://www.youtube.com/watch?v=X3Kzbo7tNLg


○イザ! なぜ? スペイン国王の「黙りなさい」大ヒット 2007/12/13 
 BBCなどによると、着メロはスペインで約50万人がダウンロード、配信会社の
 収入は約150万ユーロ(約2億4400万円)に上って、「国王が肖像権を
 主張したら、ちょっとしたいい稼ぎでは」と英紙ガーディアンが気を回したほど。
 もっとも、配信会社は国王とは別の声で言葉を再現し、肖像権の侵害を回避した。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/109486/


○コロンビアのネット販売サイト、Tシャツが25000ペソ(約1400円)
http://articulo.mercadolibre.com.co/MCO-4957007-por-que-no-te-callas-camisetas-para-todos-los-gustos-_JM


○スペインの報道、Tシャツの絵柄写真あり
http://www.eltiempo.com/internacional/europa/noticias/ARTICULO-WEB-NOTA_INTERIOR-3812618.html


○関連商品を取り上げたブログ
http://www.cogiendocaracoles.com/index.php?s=¿Por+qué+no+te+callas%3F

 

▼携帯(ケータイ)コンテンツビジネス関連情報

○隠れメタル 「着メロいろいろ」 2005/10/22
 ブッシュ大統領の失言が携帯「着メロ」に
http://tekesuta.seesaa.net/article/8455227.html


○日経トレンディネット 2005/06/10
 「着メロ」から人気爆発!“クレイジー・フロッグ”っていったい何者?
 キャラクターと楽曲の魅力が相互に作用し、このCMでクレイジー・フロッグも
 着メロ「Axel F」も人気が爆発。ついにはクレイジー・フロッグ名義で同曲が
 シングルとしてリリースされることとなった。と、ここまでは“企画モノ”
 としてありがちかもしれない。問題はその後だ。なんとこのシングル、発売1週目
 にして15万枚を売り上げ、5月29日付のUKシングルチャートで、その週の大本命と
 されていた英国を代表する人気ロックバンド、コールドプレイのニュー・シングル
 「Speed of Sound」を抑えて1位を獲得してしまったのだ。もちろん、“着メロ”が
 チャートのトップを飾るのは史上初の快挙である。
http://blog.nikkeibp.co.jp/arena/ipod/archives/2005/06/post_17.html


○BARKS NEWS  2006/07/12
 「クレイジー・フロッグ、ついにアルバムをリリース!」
 日本でも、「AXEL F」と6月にリリースされたクイーンの「伝説のチャンピオン」の
 カヴァーが、着うた(R)、着うたフル(R)、待ちうた、着ムービーなどが配信中で、
 記録的なダウンロード数に登っているという。
http://www.barks.jp/news/?id=1000025317


○Crazy Frog-Popcorn(YouTube映像 02:45)
http://jp.youtube.com/watch?v=xXrnKGSShMk


○Crazy Frog-We are the champions(YouTube映像 02:59)
http://jp.youtube.com/watch?v=YCj-RyKCmHQ


○Crazy Frog DJ(YouTube映像 03:15)
http://jp.youtube.com/watch?v=Ydmjzc20esI


○玉葉06  2006/01/19
 「音楽と携帯電話の相性は抜群、欧州携帯音楽市場は7年で5倍増の見込み」
http://gyokuyo.tea-nifty.com/blog/2006/01/75_mycom_pc_web_ae2b.html


○松 村 太 郎 TAROSITE.NET  2006/08/10
 「日本はケータイ(利用)先進国ではなくなったかもしれない」
 Sidekickシリーズはティーンネイジャーの間で爆発的な支持を得ているそうだ。
 日本で例えるなら、あゆ(浜崎あゆみさん)やエビちゃん(蛯原友里さん)が
 ウィルコムのスマートフォン、W-ZERO3 [es]を持ってパーティーに登場するのと
 同じ感覚だろう。ちなみにW-ZERO3 [es]も、Sidekick 3と同じシャープ製である。
http://www.tarosite.net/2006/08/post_623.html


○T-Mobile Sidekick 3 Review(YouTube映像 05:27)
http://jp.youtube.com/watch?v=WjhgP2-mS-s


○ITmedia News  2007/02/15
 「Warner Music、北欧や中東でも携帯向けコンテンツ提供へ」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0702/15/news020.html


○ITmedia News  2007/01/24
 「SONY BMGとWarner Music、中国の携帯コンテンツ配信会社に出資」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0701/24/news017.html


○Otter's Lunch 「アメリカ人はマリオ好き?」2007/05/10
 US・ビルボードの着メロチャート(着メロはリングトーンって言うんだ)のtop 10に、
 スーパーマリオが入っているらしい。しかも、100週以上連続!
 iTune Music storeで検索しても、カーバーバージョンが山のようにある。日本人が
 作った音楽で、アメリカで一番有名な曲なんじゃないのかな。
http://blog.so-net.ne.jp/otter27/2007-05-10

 

▼ベネズエラなどのラテンアメリカ関連情報

○イザ! 「国民投票でチャベス大統領が敗北 ベネズエラ」 2007/12/03
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/107511/


○本質 「ベネズエラの未来」 2007/11/21
http://hon-5.blog.ocn.ne.jp/honshitsu/2007/11/post_be02.html


○わにぞう日記 「ベネズエラボリーバル革命」 2006/08/11
 ベネズエラはチャベス大統領の下で米国からの自立と、貧困層の底上げを意識した
 大きな改革路線を歩んでいることは周知のことである。この過程で旧支配層を含む
 反対派の強い抵抗が繰り広げられてきたが、合法的な範囲で、また選挙をはじめと
 する民主的な手続きを守りながら、改革路線を守ってきたという世界の評価が
 与えられているといえよう。
http://wa2zoo.blog8.fc2.com/blog-entry-256.html


○再出発日記 2006/03/23
 21世紀型の革命が始まっている「ベネズエラ連帯集会」
http://plaza.rakuten.co.jp/KUMA050422/diary/200603230000/


○版元ドットコム
 「まんが 反資本主義入門 グローバル化と新自由主義への対抗運動のススメ」
 ラテンアメリカでは、日本に比べて、ネオリベラリズムや現在進行中の資本主義の
 グローバル化に対抗する運動への関心が高いのですが、その理由としては以下の
 ようなことが考えられます。アメリカ合衆国や、イギリス、日本などで1980年代から
 とられはじめたネオリベラル(新自由主義的)な政策は、アルゼンチンやチリ、
 ウルグアイでは1970年代からすでに採用されており、もともと大きかった貧富の差を
 拡大したり、膨大な対外債務の原因となりました。
http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7503-2671-9.html


○川井瑞樹のSOUL FRANCISCO! 「ラテンアメリカ 光と影の詩」2006/07/09
http://sunsvibration.blog.ocn.ne.jp/soul_to_soul/2006/07/__8826.html


○関心空間 「ラテンアメリカ 光と影の詩」 2002/06/20
http://www.kanshin.com/keyword/123446

 

 


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