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アーミテージ米元国務副長官の怪━南沙諸島海域の石油権益巡り中国と折衝中か

  パウエル米前国務長官と共にイラク開戦に反対してブッシュ米政権を一期(2001─05)限りで去ったリチャード・アーミテージ米元国務副長官は2000年、07年と二度にわたり、超党派で日米関係の在り方に関する報告書「アーミテージ・レポート」を公表、日本の政財界に大きなインパクトを与えた。

  07年2月公表の第二次レポートでは半ば公然と中国封じ込め戦略を提起しながらも、06年3月に米石油メジャー3位のコノコ・フィリプスの筆頭社外役員に就任、中国がサウジアラビアに匹敵する石油埋蔵を見込む南シナ海・南沙諸島海域での米中両国の権益調整に乗り出しているもよう。

  日本のメディアでは一般に知日穏健派とされているアーミテージ氏は、官界から引退する度に民間コンサルタントを設立している。ブッシュ父政権(1989─93)で国防次官補代理と同次官補、ブッシュ.Jr政権の第1期目では国務副長官の要職にあり、一貫して東アジア政策に深く関与してきた。

  このキャリアを存分に活用して開拓した内外の広範な人脈を通じて、野に下ったクリントン民主党政権(1993─2001)時代に引き続き、2005年に再びコンサルタント会社を立ち上げた。日本、韓国、台湾、フィリピン、オーストラリアなど西太平洋域に位置する米同盟国・地域の政財界と米国との間の利害・権益の橋渡し役を務めている。アーミテージ氏の米石油メジャー役員就任は、その政治手腕により米中共同の石油探査・採掘事業を南沙海域へと円滑に伸長させるためとみられている。


  同氏が特別コンサルタントとして社外役員となったコノコ・フィリプスは、海底埋蔵資源では屈指の探査技術力を有するコノコと米石油メジャー中、中国国営企業との石油探査・採掘での提携関係でトップを走っていたフィリプスとが対等合併して2002年に発足した。同社はマレーシアの首都クアラルンプール(KL)を東南アジア地域の拠点としており、05年には南沙諸島海域での石油資源開発を最終目標としているとされるエネルギー資源探査専門企業ミトラエナジーを同じくクアラルンプールに設けた。

  アーミテージ氏がコノコ・フィリプスの筆頭社外役員に就任したのは06年3月。ミトラエナジー社は、ほぼ同時期に、フィリピン・マニラに連絡事務所を設置。比エネルギー省(DOE)及びその傘下の比石油公社(PNOC)と密接な関係を維持しつつ、南沙諸島周辺海域に隣接するフィリピン領海で06年から中国国営の中国海洋石油(CNOOC)と共同で、石油・天然ガス資源の探査を行っている。元々、コンサルタント業務としては、米大手石油企業のアジア権益の調整役を重要な柱のひとつとして挙げている。中でも、南沙諸島全域の領有権を主張する中国政府とどう交渉するかが最大の課題となっていた。

  同氏の役員就任までは、ブッシュ政権寵愛の米石油メジャーとされる同2位のシェブロンとコノコ・フィリプスとの間にはフィリピン領海における石油資源開発でギクシャクした関係が続いていた。それはコノコ・フィリプスと中国での事業を一体となって進めてきた中国海洋石油(CNOOC)が06年にシェブロンが吸収合併する寸前だった中堅メジャー、ユノカルを買収しようと試みたためである。米関係筋によると、アーミテージ氏が政治力を駆使して比領海での探査事業を巡る両社の紛糾を収拾した。

  コノコ・フィリプスは中国にいち早く進出し、フィリプス石油中国公司(本社・北京)を設立。中国3大国営石油企業のひとつ、中国海洋石油(CNOOC)と共同で海底石油探査を実施していた1999年、渤海湾で中国の海底油田としては最大の「蓬莱19-3」を掘り当て、02年から商業稼動を始めた。比エネルギー省(DOE)は南沙海域に隣接するフィリピン領海で03年から公開入札制による石油・天然ガス探査事業を始めた。探査権を得た企業はミトラエナジーを含む米3大メジャー、世界最大の非鉄金属資源会社であるBHPビリトンなどオーストラリア企業、それに中国のCNOOCであった。

  現在、同氏は米最大メジャーのエクソンモービルと先行のシェブロン、コノコ・フィリプスを束ね、米3社が豪企業を巻き込む形で、比領海で中国企業・CNOOCと探査事業での協調体制確立に成功し、ミトラエナジー社を米大手石油企業の利害調整組織へと再編した。中国、フィリピン、ベトナムの3カ国が南沙諸島海域内での政府間の共同探査を05年から3カ年計画で実施中であり、ベトナム政界にも食い込むアーミテージ氏の尽力でミトラエナジーとベトナム国営石油企業との共同探査事業も開始されている。

  


【関連情報】

○フジサンケイ ビジネスアイ 2007/10/05
 「深海油田開発を本格化…中国、エネルギー消費拡大の一途」
http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200710050030a.nwc


○イザ!【やばいぞ日本】官僚がつぶす石油開発 2007/08/30
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/dompolicy/80479/


○国内外の政治・経済・ニュース ブログ
 「中国海洋石油 天外天でガス生産開始を公表」2007/04/13
http://sociopasscity.blog82.fc2.com/blog-entry-575.html


○【時事とコピペ】「中国、アメリカ近海でちゅうちゅう。米猛反発」2006/10/05
http://blog.so-net.ne.jp/current_affairs/2006-10-05


○薔薇、または陽だまりの猫 2007/12/02
 「アーミテージ氏側にコンサル料 山田洋行1億円超 
 米国務副長官在任中も/産経新聞」
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/aec6f73308410c5087a55845117d4166


○天木直人のブログ 2007/02/19
 「アーミテージレポートその2をどう読み解くか」
http://www.amakiblog.com/archives/2007/02/19/


○田村重信 たむたむの自民党vs民主党
 「新アーミテイジレポート」 2007/02/21
http://tamtam.livedoor.biz/archives/50552357.html


○銀改 「アーミテージ・レポート」2007/02/18
http://konnno06.blog67.fc2.com/blog-entry-118.html


○灼熱 2006/04/03
 「アーミテージがコノコフィリップスの社外取締役に就任」
http://plaza.rakuten.co.jp/HEAT666/diary/200604030000/

 

 


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