フランス・ボジョレーワインに不法な補糖(砂糖添加)疑惑
- フランス在住ジャーナリスト
<記事要約>
ボジョレー地区のワイン生産者達が、フランスでは禁止されているワイン醸造過程で砂糖を添加している疑いがでている。納品書に明記されていない600トン以上もの砂糖が、ボジョレー地区に持ち込まれていることが明るみにでた。アルコール度を高めるために、砂糖を規定以上に添加するのは違法行為である。100から150のボジョレー・ワイン生産者が、取り調べをうける予定。
http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3224,36-990621,0.html?xtor=RSS-3224
(12月17日付け日刊紙ル・モンドより)
<記事解説>
ワイン生産の世界1位2位を争うフランス。生産量だけでなく、フランス・ワインの評価が高いのは、上質なワインにこだわっているためだ。オーストラリア、チリ、南アフリカといった新興ワイン生産国の台頭に脅かされながら、フランスは、ワインの伝統的な製法を踏襲し、品質のよさ、味覚のよさに重きをおいている。
(ボルドーやシャブリのような)原産地統制名称AOCにもこだわっている。厳しい規格にのっとり生産しないかぎり、AOCワインを名乗ることができない。おかげでフランスのワインは、上質、高級のイメージを裏切らないものを世界市場に提供している。
ボジョレー地区は、フランスの伝統ワインとは、一線を画す立場を確立している。60年代からの、ボジョレー・ヌーボーの販売が大成功を納め、「質よりも量」で勝負するワイン生産地区とみなされている。日本でも人気のあるボジョレー・ヌーボーは、名のとおり(ヌーボーは新しいの意)ワインになりきる前の新酒。多くのフランス人は、ボジョレー・ヌーボーは、醸造が終わっていないので、ワインとは認めていない。
しかし、毎年11月第3週木曜日に解禁され、知人友人とお祭り騒ぎをしながら楽しむためには、フルーティで軽やかなワインは、なかなかいいものだ。日本は世界一のボジョレー・ヌーボー消費国で、2007年には3500トンものボジョレー・ヌーボーが輸入された。
アメリカや中国でも大人気で、大量のワインが11月中旬の解禁日にむけ、空を飛んでいく。そんな歴史的・経済的背景が、ボジョレーのワイン生産者達に、よいワインをつくることより、量をたくさんつくることに重点をおかせたのだろう。
12の地区に分かれているボジョレーには、3200以上の生産者がいる。証言者によると、1998年から、この地区に砂糖がトラックで大量に運び込まれているらしい。納品書、請求書にはかかれていない砂糖は一旦、ボジョレー地区の北西にあるカンシエ村に運び込まれ、そこからボジョレー地区内の生産者達に分配されたという。
ぶどう搾汁が発酵を始めた時に砂糖を入れると、作為的にアルコール度を高めることができる。フランスでは、ワイン醸造で自然発酵をうながし酵母の味をだすために、AOCを名乗るワイン製造の場合は、1リットルにつき17グラムの添加のみ許容されている。
ボジョレーの生産者は、味よりも生産の効率を重視したのだろう。新興ワイン生産国は、砂糖の添加には厳しくない。味をあまり落とさずに、生産コストを下げられるからだ。フランスは、質にこだわっているために、生産上での技術規制が厳しい。600トンもの砂糖が、ボジョレー地域に持ち込まれたことは、規定以上の砂糖を添加して、発酵を人為的に早めていることとともに、役所に申請している以上の闇のワインを生産している可能性も示唆した。
この事件の発覚で、ボジョレー・ヌーボーのイメージが悪くなり、フランス国内でのボジョレーの消費量の減少がさらに進むだろう。
質の高さを貫くか、量と値段で勝負していくか。世界でワインの生産競争率が高まっている今、フランスのワイン生産者達は、いままでにない販売戦略をたてなければならず、暗中模索を続けている。フランスは、これからどのようにワインを生産していくかを考える岐路にたたされている。
【関連情報】
○T's ワインカフェ 2007/12/20
「ボジョレースキャンダル???? 旬じゃないニュース」
今年は日本でも 有名料亭やら 食肉加工業者やら 有名菓子製造元やら
経営者主導の偽装粉飾が 話題をさらいましたが、需給のバランスが崩れると
こんな結果が起きるのでしょうかね・・・? 因みにボジョレー地方のブドウ
収穫は、すべて手摘みで行わなければいけないんですよ。機械でサクサクという
のは×です。だから法律的解釈からいくと決して大量生産できるものじゃぁ
ありません。
http://ts-sommelier.at.webry.info/200712/article_3.html
○ワインバーのむりえ店長 ジローのブログ
第4回「フランスワインのAOCについて」 2007/10/23
http://nomurie.sblo.jp/article/6097314.html
○nanasea -ワイン・ヘルプデスク- 「フランスワイン その1」2006/04/06
ワインの格を判断する際、名乗る土地がピンポイントであればあるほど
クリアーすべき項目が多いため、格上のワインであるとされます。
いいたとえではありませんが、「東北」と名乗るよりは「宮城」と名乗る
ための条件の方が厳しく、「仙台」と名乗るのはもっと条件が厳しいわけです。
フランスワインの究極の格付けは最高のワインを生み出す畑に格付けをした
ということで、畑の名前を名乗れるワインがフランスワインの頂点という
ことになります。そのひとつがロマネ・コンティです。
http://nanasea.blog55.fc2.com/blog-entry-14.html
○フランスワインの解説
フランスにはワインの生産や原産地を規制する法律、「AOC法」があります。
フランスが世界ナンバーワンのワイン大国としての地位を確立できた最も
大きな要因は、このワイン法を他国に先駆けて導入・整理できたからと
言っても過言ではありません。フランスのワインは法律上4つにカテゴリー分け
されており、上から順に
AOC(原産地統制名称ワイン)
VDQS(原産地名称上質指定ワイン)
VDP(限定地域ワイン)
VDT(テーブルワイン)
となっています。
http://winenavi.net/france/index.htm
○フランスワインについて
「A.O.C.」とはフランスの食品法の根幹を成す制度。
Appellation d'Origine Controleeの略で、「原産地統制名称」と訳され、
農作物の原産地と品質を明示するもの。「A.O.C.」というと、日本では
高級ワインを示す代名詞として浸透しているが、フランス本国では、
ワインにとどまらず、チーズやオリーブなど、その他の農業加工品にも
幅広く適用されている。
http://salut3.at.infoseek.co.jp/extra/vin_francais.html
○フランスワイン格付け
INAO(国立原産地名称研究所)Institut National des Appellations d'Origine
1935年に原産地名称(AO)が規定され、それを管理するための国立委員会
(Comite National)が設立されました。これにより、原産地名称は管理令による
承認を受けることになり、原産地統制名称(AOC)と呼ばれるようになったので
す。この委員会は1947年に上記名称に改称され、頭文字のINAOから「イナオ」
と呼ばれています。主な仕事は、フランス国内外においてワインとブランデーの
原産地名称の保護と防衛、原産地名称の新設と統廃合の承認です。また他の機関
とともにワインの製造から流通、消費にいたる各段階を監視しています。
http://www.netwave.or.jp/~sake-ml/wine-kaku-fra.htm
○フランスワインのラベルの読み方
http://www.winespiral.com/entrance/flabel.html
- いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。 - 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
- 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
- トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
- 本日の気になったニュース(時事編) 2007年12月27日 12:40
- タイトルは"本日"ですが正確には"昨日"を含んでいます。 つまりは本日ピックアップするニュースってこ...