SNSなどで加熱する行動ターゲティング広告だが、背後にはプライバシー侵害の問題も
- 米国在住ジャーナリスト
インターネットの普及に伴って急激にクローズアップされる行動ターゲティング広告。個人の嗜好・必要にあわせて広告発信をするため、広告効果は非常に高い。その反面、個人情報の扱いが大きな問題となっている。個人情報の不適切な扱いのニュースは後を絶たない。インターネット時代の広告は、個人情報が大きな鍵を握っている。
買い物、アンケート、契約等の際に書き込む個人情報。一体どこまで安全なのかは誰にも分からない。契約書などに書き込む個人情報は法的に守られている─そう信じている米国人は多い。しかし、これには例外がある。契約の際、オプトインと呼ばれる条項に同意すると、情報の転用は可能になってしまうのだ。そして、本人が気づかないうちにオプトインに同意してしまっている契約者は意外と多いのだという。
特に多いのは、不動産契約からの情報流出だ。不動産契約は手続きが煩雑な上、性別、年齢から収入、家族構成、趣味等、契約者のプライバシーにかなり突っ込んだ内容となる。
米国の調査会社によれば、現在までに情報として出回っているローン申請書は5千万件に上るという。これらの申請書には、本人の年齢から職歴、家族構成まで事細かに書き込まれている。こうした情報を元に、ターゲティング広告のピンポイント攻撃が行われる。家を買った人には家具や住宅保険の広告が、リタイヤの年齢が近づいた人には年金を利用した投資の広告が、タイミングよく舞い込むことになるのだ。
ターゲティング広告がもっとも盛んに行われているのはインターネットの世界だ。なかでも格好の場はソーシャルネットワーキングサイト(SNS)だ。年齢別、趣味別にグループを形成しているSNSは、マーケティングや行動ターゲティング広告がもっとも力を発揮する。
米国で急進しているソーシャル・ネットワーキングサイト、フェイスブック(FACE BOOK)。
大学生専用SNSというユニークなコンセプトが人気を呼び、あっという間に全米に広まったが、先月、その広告手法が問題となった。
フェイスブック(FACE BOOK)の用いていた広告手法はBEACONと呼ばれるもので、サイト内の友人が、アマゾンやeBay等で最近購入した物品を閲覧できるようにしたシステム。それらの企業はもちろんフェイスブック(FACE BOOK)と契約を結んでいる。友人の影響を受けて、それらのサイトで物品を購入させる事が狙いだ。友人間の影響力を利用した新しい宣伝手法だが、効果は上々だった。しかし、始まって1ヶ月ちょっとでプライバシーの侵害に当たるという批判が巻き起こった。現在では公開を許可したユーザーのみ、情報が公開されるように改められている。
1960年代、3大ネットワークのプライムタイム広告をすべて抑えれば、全米の成人女性の80%をカバーできたという。娯楽の発達した現在では、現在のプライムタイム広告の効果はこの半分にも満たない。インターネット時代の到来で、広告は高度に細分化、複雑化されていく。従来の、不特定多数に向けた広告の効果は減少し、個人に合わせた行動ターゲティング広告はますます主流になっていく。個人情報の価値は、今後ますます上がっていくだろう。
【関連情報】
○メディア・パブ「絶頂のフェースブック,画期的広告手法が落とし穴に」2007/12/04
タイアップした企業サイトに特別のコードを埋め込むことにより,Facebookユーザー
のFacebook外行動までが,広告に利用されるのである。企業サイトでのユーザーの
行動情報をFacebookが受け取って,広告メディアとなるNews Feedに流すのだ。
これを,ユーザーの明示的な承認を得ないで実施していたから猛反発を食らったので
ある。
http://zen.seesaa.net/article/70573220.html
○IDEA*IDEA 2007/11/08
Facebookの「Social Ads」ってすごくね?
http://www.ideaxidea.com/archives/2007/11/facebooksocial_ads.html
○( ´∀`)<花崎智弘のBLOG。 2007/12/05
「Facebookの行動ターゲティングだかデモグラフィックターゲティングだか良く
わからない広告について(ry」
http://blog.hanazaki.org/mt/archives2/2007/12/facebookry.html
○The Ultimate Tergeting “アルたげ” 2007/12/05
【行動ターゲティング広告】Facebook Adが,各方面から連日,猛烈な非難
http://nyagolog.blog.shinobi.jp/Entry/23/
○コンビニマーケッター ? 2007/12/09
「♪ジングルベルで♪気がついて♪・・・行動ターゲティングもあかんの?」
http://blogs.yahoo.co.jp/ti67hm34/27361263.html
○ITmedia News 2007/11/17
ヤフーが「CGM化の大号令」 MySpaceは「連携も」
ヤフーがユーザー参加型サービスを急ピッチで増やし、「CGM化」を進めている。
「SNSなどCGMはもうからないと言っていたが、前言撤回する」―ヤフー井上社長
が見つけたCGMの“カネの出所”とは。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0611/17/news083.html
○ITmedia News 2007/11/14
「行動履歴を参考に生活支援 携帯各社、次世代サービス開発急ぐ」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/14/news083.html
○CNET 2007/11/01
「大衆」から「個衆」へと変化する市場で注目集める行動ターゲティング
消費者の購買プロセスが変化したことにより、広告もこれに対応していく
必要がある。従来はテレビや新聞、雑誌、ラジオなどのマス広告を広く
伝播させることで消費を生み出すことができたが、消費者ニーズの多様化と
インターネットの普及によって、マス広告だけでは最適な効果が得られなく
なってきている。多種少量消費のニーズに対し、生産者も多種少数生産を
行い、必要とする消費者に的確な広告を掲出する必要があるのだ。
http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20359980,00.htm
○CNET 2007/10/16
「どこまで進化する?行動ターゲティング広告--分類と今後の方向性について」
行動ターゲティング広告は、大きく3つに分類されます。
▼単独サイトでの行動履歴ターゲティング広告
▼複数サイト(ネットワーク)での行動履歴ターゲティング広告
▼リターゲティング(Retargeting)広告
http://japan.cnet.com/research/column/webreport/story/0,3800075674,20358823,00.htm
○DEEPLOG 2007/12/06
「Facebook Ads騒動について」
さて素朴な疑問で、行動ターゲティング広告についてクレームを言う人は、
やっぱりPCのCookie情報をOff設定にしてるんでしょうか?
http://deepjazz.blog51.fc2.com/blog-entry-312.html
○WEB担当者Forum 2007/07/03
ユーザーの興味テーマを行動履歴から判断する「行動ターゲティング広告」
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2007/07/03/964
○[Business Media 誠] 2007/10/24
「よくクリックするネット広告のタイプは?」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0710/24/news042.html
○GIGAZINE 2007/09/28
「NTTドコモ、ユーザーの行動を推定して情報を配信するシステムを開発」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20070928_docomo_recommend/
○mediologic.com 2007/05/29
「数年かかってやってきた、行動ターゲティングブームだが」
行動ターゲティングといえばやはりこのネタをあげずにいられないうえに、
ずっと取り残されている話題って言うのが「Cookieは個人情報なのかどうか」
というネタ。
http://www.mediologic.com/weblog/archives/001326.html
- いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。 - 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
- 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
- トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。