Entry

干ばつのオーストラリアでシドニー住民の節水努力称賛、1人当たり1日の水使用量が33年前よりも約3割減

<記事要約>

1974年よりも現在の水使用量の方が少ないという新しい統計が示され、シドニー住民による水保全のための努力が称賛された。

NSW州のネイサン・リーズ公益事業大臣は、「同期間中に、街の人口が100万人以上増加していることを考えると、驚くべき数字だ。地域社会は責任と分別を持って水を利用することに同調し、水が希少資源であることに気づいた住民は、それを適切に使用し、節約している」と述べた。

1人当たりの1日の水使用量は、2007年度は328リットル、33年前は464リットルだった。

2007/12/31 LIVENEWS.com.auより


<解説>

「人間の基本的権利としての水」は、1人1日当たり20リットル(国連開発計画の『人間開発報告書2006』より)。たったそれだけの安全な水とトイレがあれば、毎年180万人の子どもたちの命が救われるという。

そんなシンプルな数字の重さが、わたしたちの生活の中ではなかなか実感できない。


南極大陸をのぞいて、世界で最も乾いた大陸といわれるオーストラリアは、慢性的な水不足状態にある。豊富な天然資源に恵まれ、ダイヤモンド、金、鉄鉱石……と掘れば何でも出てくるような国だけれど、皮肉なことに誰にとっても必要不可欠な水だけは、絶対的に不足しているのだ。

広大な国だけに、深刻さの度合いは地域によって大きく異なるものの、ここ数年に渡って続いている史上最悪レベルの干ばつのせいで、干上がってしまった貯水池や、地面がひび割れた農地も少なくない。

状況がうんとましなシドニー広域地域でも、ダムの貯水量が60%を切った2003年10月から今に至るまで、ずっと給水制限は続いている。規制内容は段階的に厳しくなり、貯水量が50%を切った2004年6月には「レベル2」に、40%を切った2005年6月からは「レベル3」へと強化されてきた。

「芝生や庭木にホースで散水できるのは、水曜と日曜の午前10時以前または午後4時以降のみ」、「スプリンクラーを使った水撒きやホースによる洗車は、時間を問わず全面禁止」といった規制に反して罰金を科せられた不正利用者は、6千人以上に上る。

シドニー水道局が供給する水の7割は、一般家庭で使用されているため、自発的な節水の呼びかけも徹底されている。

▼シドニー水道局CM (YouTube映像 00:30)
http://jp.youtube.com/watch?v=r0G1PLg6Ll0


十分な水の確保と効率的な利用は、政府の最重要課題のひとつでもあり、節水型洗濯機の購入や雨水タンクの設置には補助金が支給され、蛇口やシャワーヘッドに節水型器具を無料で取り付けるプログラムも実施されている。

そんなこんなで、1974年と比較すると、1人当たりの1日の水使用量は約3割減ったわけだ。

けれど、1日328リットルは、決して上出来な数字なんかではないと思う。世界的に見れば、シドニーの住民は、今でも毎日大量の水を浪費している。


生命の維持に最低限必要な飲料水は1日約3リットルというのが定説だ。

地球のあっち側には、それよりわずかに多い1日5リットルの不衛生な水で、生活のすべてをまかなって暮らす人々がたくさんいる。なのに、この国では水洗トイレを1回流すたびに、最新の「Dual Flush型」を使っても、3リットルのきれいな水があっという間に排水として消えていく。

東京都水道局によると、日本で使用されている従来型の水洗トイレの水量は12から20リットルで、開けっぱなしの蛇口からは、30秒間に約6リットルの水が流れ出るのだそうだ。1日3回の歯磨きで毎回1分間水を流しっぱなしにすれば、合計36リットル。代わりに、小さなコップを使って口をゆすげば、1日合計1リットルもいらない。どうにかこうにか生き延びている人の1週間分に相当する35リットルの水を無駄にしないですむ。

10%の節水なんて、こんなにもたやすい。

むろん、その水を切実に必要としている誰かが利用できるようになるわけではないけれど、その行為は自己満足だけじゃない。蛇口をひねれば、いつでも簡単に水が出る環境で、何よりも必要なのは、当事者意識だと思う。


自分が1日にどれくらいの水を使っているか、あなたは知っていますか?

 

○人間開発報告書2006 概要(PDFファイル)
http://www.undp.or.jp/publications/pdf/undp_hdr2006.pdf

 

【関連情報】

○MediaSabor  2007/09/04
 「ペットボトル入りミネラルウォーターの商業成功がもたらした環境への代償とは」
http://mediasabor.jp/2007/09/post_206.html


○沖大幹先生講演「地球をめぐる水と、水をめぐる人々」講演要旨
 もし二十世紀の戦争が石油を巡る紛争だったとするならば、二十一世紀は
 水を巡る紛争となるだろう、という言葉を見聞きしたことがあるでしょうか。
 昨今の日本普段の生活では、洪水や渇水で困った経験がある方はは限られて
 いるでしょうから、世界の水問題、あるいは世界の水危機と言われても、
 あまりぴんと来ないかもしれません。
http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/exhibitions/special_ex/2005mizu/050612mizusympo2.html


○14歳の僕が考えること 「僕たちが暮らす社会」 2006/12/22
 さて、それで、僕は昨年10月に放送されたNHK教育の科学番組、
 『サイエンスZERO』で紹介していた、食と水不足の関係をもっと調べる
 ことにした。すると、驚くべき事実が明らかになってきたのだ!
http://d.hatena.ne.jp/FOX156/20061222


○ぷりずむ  「仮想水(バーチャルウォーター)」 2007/12/08
http://fuji38.blogzine.jp/prism/2007/12/post_bef8.html


○+αOL主婦の節約生活 水道料金・水道代の節約
http://www.olsyuhu.net/suidou/


○節水情報
http://www.pref.fukushima.jp/mizu/sessui/pr.html


○サチポックのイギリス(ロンドン)生活情報記
 「イギリスの不可解な節水方法」 2007/11/28
http://lonlon.mitsukun.com/2007/11/post_50.html

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/525