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紅白歌合戦をアーティスト本位に創ってみれば?

  • MediaSabor 編集部


明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

2007年 第58回 紅白歌合戦の視聴率は、総合テレビの関東地区で第1部が32.8%、第2部が39.5%だった。調査会社ビデオリサーチが2日、発表した。午後7時20分からの第1部は、過去最低タイだった前年の30.6%をやや盛り返したが、同9時半からの第2部は前年39.8%に及ばず、平成16年の39.3%に次ぐ低さ。一方、関西地区は第1部が33.2%(前年比4.7ポイント増)、第2部が39.5%(同1.9ポイント増)で、それぞれ前年より微増した。

下馬評は35%を切るのではないかと最悪だったが、結果はそうならなかった。今の時代に、40%近い視聴率をとる番組というのは、評価が落ちているとはいえ、化け物番組であることに変わりない。

印象に残ったパフォーマンスとしては、紅組であれば、DREAMS COME TRUEの「ア・イ・シ・テ・ルのサイン─わたしたちの未来予想図─紅白ヴァージョン」、中村 中の「友達の詩」。白組であれば、寺尾 聰の「ルビーの指環」、平井 堅の「哀歌(エレジー)」。そして、スペシャルステージ枠における、小椋佳とバーチャル映像の美空ひばりがデュエットした「愛燦燦」といったところ。こうした感動的でエモーショナルなステージをもっと多くしなければ、番組としての価値を維持していくことはできないだろう。

過去、50%以上の視聴率をとった番組は、1960年代から80年代に集中している。2000年代に入ってからは、サッカーワールドカップの日本代表戦が目立つ程度。メディアの多様化、行動の多様化、核家族の増加などの社会の変化を考えれば、もはや、いかに紅白歌合戦といえども、限界に近い視聴率といえるのかもしれない。

紅白歌合戦が魅力的な番組であってほしい、という願いは多くの人が持っている。しかし、作り手が闇雲に視聴率を追いかけても、そこに答えはない。だから、民放のように、視聴率偏重主義に陥ることなく、NHKでなければできない、心に残る歌番組を創り上げることに専心すべきではないかと思う。そこで、どのようにすれば、より望ましい番組になり得るのかについて、少しばかり意見を述べてみたい。


   ▼出場歌手を紅白合わせて40組程度に絞り込み、番組の時間帯を以前の21時から
    23時45分に短縮化する。
 
    今回の出場歌手は紅白合わせて56組であったが、出演交渉がうまくいかなかった
    面もあり、選定に苦労したようだ。番組の時間が長く、出場者が多いと、頭数を
    合わせるために、日本を代表するアーティストの祭典としては、ふさわしくない
    ような人も選ばざるを得ない面が出てきて、どうしても番組のクォリティーは低く
    なってしまうキライがある。やはり、紅白は特別な番組であることを印象づける
    演出が重要である。そのためには、番組の時間を短縮化し、出場歌手を少なくし、
    ステージパフォーマンスの質を高め、歌手および視聴者のあいだに、ある種の
    飢餓感を醸成する必要がある。


   ▼アーティストや業界関係者に広く話を伺う機会をもつ。

    交渉しても出演を断られてしまうアーティストの数が多いということは、番組内容
    やコンセプトが、現代のJ-POP分野を代表するアーティストの意識とは様々な面で
    乖離してしまっていることが考えられる。例年、歌手たちから不平不満が相次いで
    いた歌唱以外のゲームや応援合戦などのパフォーマンスを今回は廃止し、歌手たち
    は歌だけに集中できた。これは、一つの進歩といえるが、レコード会社、
    芸能プロダクション、出版社、アーティスト本人などに、何が出演のネックに
    なっているか、番組内容がどうあるべきか、などについて話を伺う機会をもつべき
    であろう。アーティストにリスペクトされる番組になっていかなければ、大物を
    担ぎ出すことは、ますます難しくなる。


   ▼司会者選考
 
    司会者の進行いかんで、番組の印象は、ずいぶん違ってくる。紅白の荘厳さ、
    特別感を損なわず、多少のウイットを織り交ぜていくことは、「しゃべりのプロ」
    でなければできないことだ。現在は知名度や人気を重視した選考になっているよう
    だが、司会は黒子でいいのではないかと考える。音楽に詳しく、よりアーティスト
    を引き立てる紹介ができる人が望ましい。傾向として民放のノリを意識している
    ようにも見えるが、NHKはNHKの独自色を出すことを追求しなければ、民放の
    音楽番組を長くしたような雰囲気になってしまい、特別感は薄れてしまう。


   ▼アーティスト選考
 
    2006年にテノール歌手 秋川雅史が「千の風になって」を歌ったことが、翌年の
    大ヒットにつながった。昔は、紅白に出場する歌手は、誰もが知っているような
    存在だった。でも今は、紅白を見てはじめて知るということも珍しくない。
    紅白は、優れたアーティストの存在を多くの人に知ってもらう、伝える役割をも
    担うようになったのだ。その意味で、話題性やセールス面でのインパクトは弱く
    ても、楽曲、歌唱が優れているJAZZ、フュージョン、シャンソン、クラシック
    などの分野からも何組か選考するようにしたらいいのではないか。それが、
    ミュージシャンの励みになり、日本の音楽業界の底上げにも繋がる。


紅白歌合戦は、日本人にとっての無形文化財といえるようなものだろう。年に一度、日本を代表するアーティストたちが集う祭典であることを活かし、内輪で盛り上がるだけでなく、世界にメッセージを発信していくような役割も担ってほしいと期待している。

 

【関連情報】

○安田の日記 「第58回NHK紅白歌合戦 (2007)」  2007/12/30
 出場歌手・曲順、ゲスト審査員10名、番組の見所となる企画・演出、
 司会者/応援隊の紹介、その他。
http://nikki-yasu.seesaa.net/article/75491961.html


○高尾友行記者の「タカの目」 2008/01/02
 「恐るべし“紅白オタク”たち」
http://weblog.hochi.co.jp/takao/2008/01/post-47e3.html


○Japanese Music─現在・そして未来へ─
 「第58回NHK紅白歌合戦・第2部後半」 2008/01/02
http://k-marine-music.seesaa.net/article/76085680.html

 

 


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