
エクソシスト(悪魔祓い師)が足りない━ イタリア青少年の間に、悪魔崇拝者が増加
- イタリア在住ジャーナリスト
<記事概要>
「ローマ教皇、悪魔に宣戦布告」
ローマ教皇ベネディクト16世は、各司教区にエクソシスト(悪魔祓い師)を必要なだけ、少なくとも1人は配置する、と明らかにした。ヴァチカンのニュースサイト、「パパニュース」によれば、各司教に配布されるエクソシスト任命のためのマニュアルが現在準備されつつあり、2008年前半には出来上がる予定だという。各司教区に悪魔祓いのスペシャリストを配置する目的は、悪魔を抱えて苦しむ人たちを救うことにあるが、活動中のエクソシストたちが教区を超えて悪魔祓いをしなくてもすむようになる、という利点もある。
2007年12月28日付 日刊紙LA STAMPA より
<解説>
れっきとした現代のニュースである。カトリックの世界には公認のエクソシストがいる、というと、宗教とはつかず離れずまったりとつきあうのがいい、とする大方の日本人は驚くのではないだろうか。
そもそもカトリックでは悪魔は存在することになっているし、聖書にもイエスが悪魔払いを行ったという記述がある(「マルコ伝」1章21-28節、「ルカ伝」4章31-37節)。悪魔払いの儀式は、以前は教会で日常的に行われていた。
つまり、レオ13世(在位1878-1903)によってミサの最後に悪魔払い専用のお祈り(サン・ミケーレ・アルカンジェロの祈り)が義務付けられていたのだが、1960年代の第二回ヴァチカン公会議(カトリック公会議としては第21回目)の典礼改革の際に削除された、という経緯がある。現教皇はその儀式を奨励していく方針だそうだ。
ヴァチカンの声明に、ガブリエレ・アモルト神父(82歳)は大歓迎の意を示した。それもそのはず、この神父は国際エクソシスト協会の創設者で、(現在は名誉会長)早くから公認エクソシストの必要性を訴えてきた。これまで6万5千人に取りついていた悪魔を追い払ったと言っている。
ヴァチカン公認の在伊エクソシストは2003年現在、約80人(エクソシストの1人、チプリアーノ神父へのインタビュー記事による)。これに対し司教区はイタリアだけで200を超える。100名強の新エクソシストが必要になるわけだ。
これに先立ち、エクソシスト養成講座が2005年の10月にヴァチカンで開設された。受講者は120人。講義は、神学・典礼法のほか医学・犯罪学まで多岐にわたった。
未来のエクソシスト(つまりすべて神父)に犯罪学を教授するとは意外な気もするが、実は必要不可欠な学科なのである。犯罪の中でも特に悪魔崇拝(サタニズム)が引き起こすものを対象としているからだ。
背景には、イタリアの青少年の間に、悪魔崇拝者が増加している(2005年現在で5000人おり、その75%が17歳から25歳の若者)という事実がある。
中でも特筆すべきものは、1998年に北部ロンバルディア州ヴァレーゼ県で起きた、「べスティエ・ディ・サタナ」(直訳すると「魔の野獣」)グループによる連続殺人事件だ。3人が殺害されたことは判明したが、余罪の可能性があり、事件の全容は明らかになっていない。
また2000年には17歳の女性3人が、悪魔崇拝の儀式と称して修道女を殺害した事件が、やはりロンバルディア州ソンドリオ県でおきている。
アモルト神父によれば、イエスへの信仰が薄れてくると、悪魔が跋扈する機会も増えるとのこと。カルトに染まりそうな若者を救うという目的もさることながら、ヴァチカンの今回の決断は、イタリア国民のイエスへの信仰心をもう一度呼び覚まし、信徒同士の結束を固めるということにあるようだ。
http://jp.youtube.com/watch?v=oYTZpufEEdU&feature=related
(YouTube映像 09:35)
(対談番組でエクソシストの必要性や悪魔払いの体験を語るガブリエレ・アモルト神父)
【関連情報】
○映画 The Exorcist -Trailer(YouTube映像 01:46)
http://www.youtube.com/watch?v=jGdbbVcKJlc
○映画 Constantine Trailer(YouTube映像 02:06)
http://jp.youtube.com/watch?v=W9PKmPGOnBQ
○mama 「エミリー・ローズ」 2006/08/12
この映画のモデルは、1976年に亡くなったドイツ人、アンネリーゼ・ミシェルさんです。
10代の時からてんかんの発作に悩まされ、治療がはかばかしくなかったことから神父に
相談して悪魔祓いを行い、結局亡くなったとか。実際には、神父と両親が過失致死罪
として裁判にかけられ、執行猶予付きの有罪判決を受けたそうです。
http://blog.livedoor.jp/ma_perc/archives/50575240.html
○noribows diver 「悪魔崇拝」
世界の文学の中で一番主役になることが多いのはなんと悪魔だそうです。
悪魔崇拝、悪魔降臨、悪魔払い等々と話題は尽きません。
ここではそんな悪魔関連の話題特に映画、音楽等を中心に扱います。
http://www.d9.dion.ne.jp/~noribow/dark%20site1.htm
○ヨシヨシのイタリアごはん事件簿
「バチカン認定エクソシスト養成講座(書き直し)」 2005/03/05
http://blog.livedoor.jp/yosiyosifine/archives/15672400.html
○ウィーン発 『コンフィデンシャル』「悪魔(サタン)の存在」 2006/10/31
旧約聖書の研究者ヘルベルト・ハーク教授は「サタンの存在は証明も否定も
されていない。その存在は科学的認識外にある」と主張、悪魔の存在を前提
とするエクソシズムには慎重な立場を取っている一方、著名なエクソシスト、
ガブリエレ・アモルト神父は「悪魔の憑依現象は増加しているが、聖職者は
それを無視している」と警告している、といった具合だ。明確な点は「悪魔」
が存在するとすれば、悪魔の存在を否定する聖職者は悪魔にとって
最大支援者ということだ。
http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/50346644.html
○X51.ORG 「悪魔祓いの最中に悪霊の声が録音される ロシア」2005/03/29
悪魔憑きの現象の数々は現在においては、何らかの脳障害として説明可能なものが多い
ことも事実である。それは例えばトゥレット症候群(ジル・ド・ラ・トゥーレット
症候群)や、精神分裂病(Schizophrenia)、癲癇などによって説明される。
http://x51.org/x/05/03/2935.php
○Tokyo Fuku-blog 「ひそかに悪魔の紋章が入ったロザリオ出回る」2007/10/23
http://tokyo.txt-nifty.com/fukublog/2007/10/post_a759.html
○医学都市伝説 「ルシファー効果」 2007/05/10
スタンフォード監獄実験という心理学実験について、聞いたことがある方は
数多いであろう。1971年夏、スタンフォード大学心理学教室の
フィリップ・ジンバルドによって計画され、予想以上の問題点を露呈して
予定日程なかばで中止された実験である。この実験が意図していたのは、人間の
残虐性というものが個別的な性質によるものなのか、社会的な役割によって
導かれるものなのかを確かめることであった。
http://med-legend.com/mt/archives/2007/05/post_1091.html
○そこにはなにがある『バチカン ―ローマ法王庁は、いま』郷富佐子(著) 2007/12/08
http://d.hatena.ne.jp/zahrky/20071224/p1
○これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介
「バチカン・エクソシスト」 2007/10/06
悪魔に憑かれたと思っている人たちは解離性障害だとも考えられるのである。
イタリアでは、精神病と診断されることが非常に不名誉であるらしい。
それがエクソシストの存在する土壌であるような記述もある。
http://wadainohon.seesaa.net/article/59091967.html
○叡智の禁書図書館<情報と書評> 2007/08/30
「バチカン・エクソシスト」トレイシー・ウィルキンソン 文藝春秋
「悪魔祓いを体験するのに16世紀へタイムマシンで行く必要がなく、
ただ、イタリアへ行けばいい」という言葉は、眼からうろこ・・・ですね。
イタリアには二度行きましたが、神秘的なものをそのまま現実の存在として
受け止める国民性、未だに聖人崇拝が衰えない国、何よりもバチカンが
存在し得ているのもまさにそれが根底にあるのかもしれませんね。
http://library666.seesaa.net/article/53284897.html
○パソコン トラブル 湘南地域なら 2007/07/03
「エクソシストが増えゆく時代のヨコシマな空気」
日本はアニミズムの国。一神教の神と悪魔の対決というより、八百万の神と、
妖怪の類はどこにでもある、そういう感受性が幼少期より刷り込まれていて、
憑依するのは狐だったり、化け猫だったり、落ち武者の霊だったり、多様だ。
親戚の長老などが登場して、ケースバイケースで対策を考える。そこに、
教会に行って悪魔祓いという選択肢は、はなから存在しそうもない。
http://cathands.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_6a20.html
○浅読み日記 「バチカン・エクソシスト」 2007/07/09
http://asayomi.seesaa.net/article/47164103.html
○イザ!「ハリポタvs宗教右派 米国二分した論争」 2007/07/30
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/72011
○イザ!ハリポタに反対した「宗教右派」…どこへ行く 2007/08/05
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/73723
○Keyword Project+Psychology 2006/08/25
[暗示療法(Suggestion Therapy)・催眠療法(Hypnotherapy)の歴史的変遷:
フランツ・アントン・メスメルの動物磁気説]
http://digitalword.seesaa.net/article/22794956.html
○Ciel Bleu 「悪魔の手紙」C.S.ルイス 2007/09/15
全編通して悪魔の視点から書かれているんですが、同時に悪魔の言葉を通して
キリスト教について語る作品でもあるんですね。この作品は、「指輪物語」の
トールキンに捧げられているんですが… これを読んだトールキンは
どんなことを感じたんだろう? というのがとっても気になるところ。
http://cafebleu.vis.ne.jp/ciel/archives/2007/09/15_1700.php
○隠れ蓑─penseur─ C.S.ルイス「悪魔の手紙」について 2007/02/13
「C・S・ルイスの「悪魔の手紙」とその続である「乾杯の辞」を読了しました。
‥これ、すごくおもしろかったです。とても素敵で、とても深い‥。とても
人間的‥おどろいたな‥」「ルイスの哲学がぎゅっと凝縮してて、濃い味わいが
あるって感じかしら。独特の芳香が文面から漂う気がするっていうの? 素敵ね。」
http://mugi4ishida.blog71.fc2.com/blog-entry-336.html
<参考文献>
LA STAMPA(イタリア語)
http://www.lastampa.it/redazione/cmsSezioni/cronache/200712articoli/28794girata.asp
ヴァチカン市国公式サイト
http://www.vatican.va/
パパニュース
http://www.papanews.it/news.asp?IdNews=4713
ヴァチカン情報サイト(イタリア語)
http://www.vaticano.com/news.html
イタリアに好奇心 「あらゆる司教区にエゾルチスタを」2007/12/29
http://senese.cocolog-nifty.com/koukishin/2007/12/post_fa0e.html
ガブリエレ・アモルト神父へのインタビュー記事(日本語)
ローマのエクソシスト神父 「救ったのは」5万人
http://www5e.biglobe.ne.jp/~conspire/asyura_exorcist.html
「エクソシストは語る」 ガブリエレ・アモルト著 エンデルレ書店
日本語版初版 2007年7月
イタリアでの初版は1986年。販売部数は不明だが現在第20版め。
15カ国を超える国に紹介されている。
http://shop-pauline.jp/?pid=4403178
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