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「感性経済」が市場を動かす

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長 
  • 谷口 正和

 アート、デザイン、センス、クリエイティブ、アイデア。このような言葉が経営ワードとして語られる時代が来ている。

 物の時代が終わり、顧客は市場に「感性価値充足」を求めているからだ。「センスの良いものに囲まれて暮らしたい」「美しいものに触れたい」「心を打つ体験がしたい」「サプライズが欲しい」「教養を深めたい」「今まで無かったものに出会いたい」「感動したい」「心を豊かにするモノやコト、サービスはないだろうか」「家族や大切な人と素敵な体験を共有したい」。物の経済から、感性の経済へ、このような顧客の心理的要望が一斉に集中し、市場を膨張させつつある。

 そして昨今、このことを実証する事例が次々と現れてきているのだ。以下の3つの事例を紹介する。

 昨年1月に開館した国立新美術館の入場者数が300万人を突破した。同館広報担当者によると「モネやフェルメールなど、話題性の高い大型展が入場者を牽引した」という。「大回顧展モネ-印象派の巨匠、その遺産」(704,420人)、「フェルメール『牛乳を注ぐ女』とオランダ風俗画展」(460,442人)、「異邦人たちのパリ1900─2005ポンピドー・センター所蔵作品展」(315,266人)、「黒川紀章展」(166,793人)(六本木経済新聞  12/19)

 「アートを体感する」。雑誌pen 1/1号は、旅先に美術館が街中に点在するパリを大特集。印象派の殿堂オルセー美術館、現代アートのポンピドゥー・センター、エスニック・アートが充実するケ・ブランリー美術館、建築・文化遺産センター、その他小さな美術館、博物館も紹介。

 “地球が生んだ芸術”に魅了される2万人。「東京ミネラルショー」には、水晶や翡翠、鉱石標本、宝石の原石、化石など100万個以上が並ぶ。1つ数千円から数万円もする小石が飛ぶように売れ、その理由を鉱物商を営んできた主催者は「地球が生んだ芸術だから」と語る。地球環境の大切さに注目が集まり、天然物である石の人気が高まっている(日経 12/18)。

 これらの事例を見ると「芸術」が市場を、経済を牽引しているのがわかる。顧客はアートを見に国内外を問わず、お金と時間を費やすのだ。ともすればただの“小石”とも取れる鉱物にも感性価値を感じ、2万人が集まるのである。

 しかし国内を見ると、顧客の感性価値充足を満たすモノやサービスはまだまだ不足しているのが現状のように思う。これは市場に参入する余地がまだまだ大いに眠っているということだ。これからどのように顧客の要望に応えるか、クリエイティブという縦横無尽のベクトルを持つソフトをどう掴むか。これから参入する可能性について、海外のクリエイターからヒントを得る事例をご紹介する。

 FIGARO 1/5号では、来日デザイナーたちの東京コラージュを紹介している。07年に来日したデザイナーたちが切取るデザイン都市TOKYOのコラージュ、イラストを掲載。デザイナーのパトリシア・ウルキオラ氏が選んだのは、着物地の蛙、折り紙の鶴、キッチュな食玩などポップな小物たち。プロダクトデザイナーのウィリアム・ウォレン氏が選んだのは、信号から流れる鳥の声、日本人が無意識に培ってきた思いやりの文化、和食、枡、などそれぞれのデザイナーが感性で見つけた「東京」を紹介している。

 海外デザイナーの持つ“外の目”視点は、新鮮である。私達を取り巻く「普段の光景」「当たり前のもの」も彼ら彼女らの目線のフィルターを通せば、新たなクリエイティブソフトのヒントになる。クリエイティブは、新たに創り出すことだが、日本の持つ豊富なコンテンツやソフト、足元にも目を向けてみたい。

 感性が経済を創る。そういう時代が来た。物の経済から感性の経済へ、新しい市場構造は「感性経済」と呼べるものに移行した。経済は美学に引き連れられながら、まったく新しい、「感性経済」の市場構造を現出させていくだろう。

 


【関連情報】

○六本木経済新聞 2007/12/17
 「国立新美術館の入場者数が300万人突破-大型企画展が牽引」
http://roppongi.keizai.biz/headline/1275/index.html


○弐代目・青い日記帳 2008年「フェルメール展」開催!! 2007/11/30
 2008年、今までにない数のフェルメールの作品が日本にやって来ます。
 「フェルメール展」(仮称)Vermeer and the Delft Style
 ・会期:2008年8月2日(土)─12月14日(日)
 ・会場:東京都美術館企画展示室(東京・上野公園)
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=1215


○ヨガ。(まる) 2007/12/19
 パワーストーン好きにはたまらない!「東京ミネラルショー」
 ここでいうミネラルは栄養ではなく、“鉱物”の方。
 以前、彫金学校に趣味で通っていた頃、皆で足を運んだものだった。
http://yagimanami.at.webry.info/200712/article_10.html


○sawacchiな日常。「東京ミネラルショー2007 その1」2007/12/17
 まずは、化石編。写真が多いので、文章は短めに。
http://sawacchi.blog.hobidas.com/archives/article/36395.html


○黒川紀章 Pt. 1: The National Art Center, Tokyo(YouTube映像 07:26)
http://jp.youtube.com/watch?v=HN4VY1CRiLg

 


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