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米大リーグ薬物疑惑─「あなたのためなら刑務所に行きます」と言うクレメンスの元トレーナーは裏切り者?正直者?

(記事要約)

 薬物使用疑惑の渦中にある元ニューヨーク・ヤンキース投手ロジャー・クレメンスは1月7日ヒューストンの自宅で記者会見し、4日に元トレーナー、ブライアン・マクナミー氏と交わした電話の内容を公開した。録音テープ中でマクナミー氏は、「オレにどうして欲しい?」と繰り返しクレメンスに問いかけ、「刑務所にも入るつもりだ。君の望むことならなんでもする」と話していた。

 マクナミー氏は米大リーグの薬物汚染の実態を記した「ミッチェル・レポート」中で、クレメンスが違法薬物を使用していたことを告発。クレメンス側は6日、マクナミー氏を名誉毀損で告訴している。

2007/1/8/metro(ニューヨーク他、世界100以上の大都市で配布されるスウェーデン生まれのフリーペーパー)


(解説)

 12月13日に公開された「ミッチェル・レポート」の余波は、ますます広がるばかり。

 現役通算354勝、4672奪三振、野球殿堂入りが確実視されるロケットマンことロジャー・クレメンス投手もまた渦中の一人。クレメンスは「注射は痛み止めとビタミンB12だけ」とステロイド使用を否定。告発した元トレーナーのマクナミー氏を名誉毀損で訴え徹底抗戦の態勢だ。

 しかし全米メディアはクレメンスに対して懐疑的。マクナミー氏との会話を録音した17分のテープを公開しても、マクナミー氏がクレメンスの薬物使用を否定する証拠は提示できなかった。マクナミー氏は「何でもする」と言っても、「薬物使用に関して嘘の報告をしました」とは言っていないのだ。

 1月6日にはCBS局の看板報道番組『60ミニッツ』で、クレメンスの告白インタビューが放送された。クレメンスは「(もしマクナミー氏がステロイドを投与していたら)オレの額に3つ目の耳が生えただろう。歯でトラックを引っ張っているだろう」という。このばかげた言い回しがまた批判を集めている。

 クレメンスの元チームメイトで親友とも言われるアンディー・ペティット投手に関しては、2002年、怪我をしていた際に運動能力向上薬物の使用を認めている。両者にステロイドやヒト成長ホルモン(筋肉と体力を作る)を投与したと発言したマクナミー氏に対し、クレメンスはペティットの件は知らないと否定しているが、親しい者同士でそういう会話がなかったのは不自然という声も上がっている。

 ペティットには怪我からの回復のためにという特別な理由がある。しかも使用は2回だけ。しかしクレメンスに関しては1998年から2001年の長期に渡って使用したと言われている。1998年と2001年には年間20勝の好成績を残しているため、薬物に頼ることがあってはならない状況なのだ。

 折りしも米大リーグのバド・シリグ代表は、運動能力向上薬物の使用撲滅のために規定を強化したところだ。今後はクラブハウスへの人、物の出入りが厳しくチェックされる。また薬物テストは、従来の前日告知が廃止され、抜き打ち可能となる。

 薬物規定があいまいだった過去にいろいろあったのは、仕方ない。ペティットのように認めるべきことは認め、一刻も早くクリーンなベースボール・シーズンを開幕して欲しいものだ。

 

【関連情報】

○MediaSabor   2007/12/10
 サッカー選手の悲しい末路 「ロンバルディ、ALSに死す」
    ALSは、筋肉が萎縮する難病で、発症したアメリカ人野球選手の名前をとって
   ルー・ゲーリッグ病とも呼ばれる。物理学者のスティーブン・ホーキングや
   毛沢東が著名な患者として挙げられるが、イタリアではサッカー選手がやたら多い。
   2003年に放映されたイタリアのドキュメンタリー番組、「REPORT」によると、
   「イタリアのサッカー選手の発症率は、世界平均の20倍」だそうである。
http://mediasabor.jp/2007/12/als.html

○イザ! 2008/01/17
 「米芸能界もステロイドまん延 地検捜査で続々名前」
 米ニューヨーク州地検の薬物捜査の報告書に、スポーツ界で禁止されている
 薬物のステロイド(筋肉増強剤)を使用した疑いのある人物として、
 ヒップホップの女王と称されるR&B歌手メアリー・J・ブライジさんや
 ラッパーの50セントさんなど複数の人気芸能人の名前があることが
 16日までに分かった。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/116183/


○テディログ─J─スクール的生活─ 2006/02/09
 「高校生スポーツ選手のステロイド使用撲滅についての会見」
 アメリカでは、プロスポーツ界だけでなく、高校生スポーツ選手の
 「Performance enhancing drug」としてのステロイド使用が深刻だそうな。
 もちろんスポーツの成績を上げるためなのだが、副作用による鬱症状で
 自殺者が出たりといった深刻な事態にまで発展している。
http://teddylog.way-nifty.com/teddy_1999/2006/02/post_ad40.html


○アイラブサイエンス 2007/10/11
 もはや検出不可能?遺伝子治療を悪用した「遺伝子ドーピング」
 ドーピングはなぜいけないのだろうか?理由は3つある。
 「1.スポーツにおけるフェアプレー精神に反する行為であること 
 2.選手の健康を損ね、場合によっては生命をも奪う危険性を持つこと 
 3.薬物の習慣性や青少年への悪影響など社会的な害を及ぼすこと。」
http://blog.goo.ne.jp/liberty7jp/e/528d6468428823ced5b03f8a7e1d088f


○シティーライフ(CityLife)ブログ !  2006/10/17
 「遺伝子操作ドーピング検査がオリンピックで採られる!」
 オリンピックIOCが 疑いを持っていると発表
 ステロイド系の薬物によるドーピング調査は、発覚件数が増える一方だが
 次世代の最新遺伝子操作ドーピング技術が報道された。オリンピック(IOC)が 
 遺伝子操作検査を2012年にスタートさせると発表した。
http://weblog.citylife.co.jp/?eid=381591


○鈴木龍太のラケットを握った外科医 「ドーピングの話」2007/12/10
 そこで重大になってくるのが、スポーツ選手のケアをしている医師の認識と
 対応です。もしも医師が間違えたためにドーピング違反が生じたとしたら、
 ペナルティーを負うのは選手であり、社会問題に発展してしまいます。
 風邪薬一つでも慎重にしなければなりません。
http://ryuta.blog.tennis365.net/archives/article/86734.html


○スポーツビジネス from NY 2008/01/15
 「ミッチェル・レポートがMLB版“偽装表示”事件に発展」
 ブルックリン在住の20年来のヤンキースファンであった30歳の
 マット・ミッチェルさんは、ステロイドや人成長ホルモン(HGH)を
 使用した選手による試合興業は「ほとんど消費者への詐欺に当たる」
 として、先週ヤンキースに対して221ドルのチケットの払い戻しと、
 この件に関する公式見解を求める訴訟を起こしました。
http://tomoyasuzuki.jugem.jp/?eid=301


○スポーツナビ スポーツマーケティング探求記
 「ミッチェル・レポートって?」 2007/12/19
 12月17日にジョージ・J・ミッシェル氏がMLB選手の運動能力向上剤
 (ステロイド、ヒト成長ホルモンなど)について400ページを超える
 報告書を提出。このレポートには現役選手を含む80名以上の薬物使用
 選手名が記載されていることや、薬物使用の現状を詳細に記述している
 ことから、大きな話題を呼んでいる。
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/marketing/article/98


○Bottle Ship 「ステロイドとモラル」 2006/06/28
 引退した後藤孝志が自身のブログにてステロイドを容認する発言をした
 ということで、ネット上では物議がかもされています。後藤氏は
 ニューヨーク・ヤンキース傘下の1Aタンパ・ヤンキースにコーチ留学中
 なのですが、そこでドーピングの検査を見て6月20日にブログでステロイド
 に対する自分の考えを述べました。
http://bin-bune.jugem.jp/?eid=279


○千葉ロッテマリーンズ 大塚明 公式ブログ
 「そんなのかんけねー(笑)」 2007/12/15
 俺の肩はステロイドの間接注射を年間何回か打たないと野球をやれない。
 それは間違っても筋肉増強とかそういった意味のものではなく、
 ただ人並みに野球をやるためには医療目的のステロイド注射が必要なだけだ。
http://ohtsuka.heroes.ne.jp/blog/20071215052313


○Road to PK BAR (仮名) 【いやんっ、ソープ】2007/04/03 
 記録は名誉になる。記録はカネをもたらす。名誉をカネで精算する。
 魂を「悪魔」に売る。スポーツとは、なんぞ。
http://wearecrazy.exblog.jp/6685844/


○無楽有楽倶楽部 「薬物汚染 卑怯者は追放すべき」2007/12/15
 結局薬物使用している選手はファンを裏切り、何より同じ条件で戦っているはずの
 選手たちを裏切っているのです。彼らは薬物を使用していない選手たちと同じ戦場
 に立つべきではない。
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/loveless1314/article/14


○野球探検隊  2007/11/16
 「バリー・ボンズ選手、薬物使用疑惑に関して、偽証、司法妨害の罪で起訴」
 起訴された事で、もし、有罪が確定した場合、最大で30年の禁固刑が下る
 可能性があり、その記録と栄光は、自分自身の本来の力で打ったものも含め、
 抹消される事になるでしょう。元陸上競技の金メダリストだった、
 マリオン・ジョーンズ氏が、薬物使用を認めその記録が、取り消された事からも、
 厳しい判断が待っているのは確実と言えます。
http://blogs.yahoo.co.jp/yakyu_kids/38601698.html


○長江恵一のミュージックブログ「ミッドナイトファンデーション」
 「身体が痛くない毎日」 2007/06/30
 レスラーの場合文字どうり連日身体を痛めつけるためあまりの痛みに夜も
 眠れないことも多く、結果的に大量の薬物に頼ってしまうこともあるらしい。
 ベノワの場合、薬の副作用でうつ状態に陥りあのような行動に出たのでは
 ないかという報道もされている。
http://y8kjm.jugem.jp/?eid=215


○X51.ORG  2004/08/03
 「より高く、より速く、より強く- 栄光へのドーピング」
 より高く、より速く、そしてより強く。世界を舞台にするアスリート達は
 並みいる強豪に打ち勝ち、栄光をその手に掴むため、日々惜しみない努力を
 重ねている。しかし、中にはそうした努力を重ねて尚、敗北を恐れ、薬物の
 力を借りて自らの限界を超えようとする者がいる事もまた事実である。
 これらアスリート達による薬物摂取はドーピングと呼ばれ、その歴史は
 古代ギリシアにまで遡る。
http://x51.org/x/04/08/0322.php

 

 


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