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中東の輸送ハブに成長したドバイへ殺到する世界の航空業界、出遅れる日本

 「ドバイの発展の勢いは想像を超えている。輸送面でも中東、アフリカ、中央アジアへの一大拠点になった。東アジアでは中国、韓国の航空各社は競って乗り入れているのに、日本の大手2社はチャーターすら飛ばさない。出遅れに焦る様子もない」。中東ビジネスの最前線で働く商社マンはあきれた果てた面持ちで語った。

 日本の中東報道は、イラク戦争にパレスチナ情勢、頻発するテロ、核開発をめぐるイランと米国・イスラエルとの緊張など━きな臭い話題で占められている。しかし、「もうひとつの中東」は脱石油依存時代を先取りして、ダイナミックで驚異的な経済成長を続けている。その象徴が空前の開発ブームに沸く、アラブ首長国連邦の中心地ドバイである。

 埼玉県とほぼ同じ面積のこの都市国家を称える言葉は数限りない。中東のシンガポール、20年間で国内総生産(GDP)は30倍となって石油の占める割合は6%に減少、人口は6倍増の120万人で住民の8割が外国人、人工衛星からみえる唯一の人工島群など各種観光施設・中東最大のショッピングセンター・世界一の高層ビル建設など相次ぐ巨大プロジェクト、世界のクレーン数の2割が集積━等々がその一部だ。
 

▼東アジアからの空路

 ドバイの輸送拠点としての強みは、世界有数の機能と規模を備えた空港と港湾が近接し、数時間で貨物を船舶からエアカーゴへと移送できる点にある。第3国の航空会社が自由に路線を設定できるオープンスカイ(航空自由化)政策もいち早く導入された。今や中東各地のみならず、アフリカ、中央アジア、ヨーロッパ方面への人・モノの流れの不可欠な中継点となった。近隣国カタールのドーハがこれにならい追いつこうと躍起になっている。

 東アジア各国の中では近年、アフリカ、中東へと資源外交を積極展開する中国の動きが群を抜いている。中国国際航空、中国南方航空が北京、広州を起点にドバイ経由で欧州、アフリカ方面へ週計5便、ドバイのエミレーツ航空は北京、上海(浦東)から1日2便、同貨物便が上海(同)から1日1便。このほか、ケニア航空がナイロビと広州間をドバイ経由で週3便、米貨物大手のUPS(ユナイテッドパーセルサービス)とFedEx(フェデラルエクスプレス)がそれぞれクラーク(フィリピン)から上海、ドバイ経由の欧州便、クラーク(同)から広州、ドバイ経由の欧州便を1日1便運航している。韓国からは大韓航空が旅客、貨物便をそれぞれ週3便、エミレーツ航空が旅客便を毎日運航している。
 

▼立ち遅れた日本

 日本の中東便の先駆けは2002年に週4便で関西空港、ドバイ間に就航したエミレーツ航空だった。続いて、カタール航空が05年に週4便で関西、ドーハ間に就航した。両社とも現在、毎日1便運航へと増便した。カタール航空は06年に中部国際空港とドーハ間にも就航、ドーハからドバイへと片道1時間の航路で移動する乗客は多いという。

 両社の相次ぐ増便は旅客、貨物ともに業績が順調な証しなのに、日本の日本航空、全日空はコードシェア(共同運航)の名の下、前者はエミレーツ航空、後者はカタール航空の座席販売の一部を担当しているにすぎない。業界関係者は「日本の2社ともに中東便を就航させる計画はない」と断言した。また、国土交通省はじめ関係諸機関に日本とドバイ、ドーハ間の輸送実績データすら記録しているところはなかった。日本の航空関係者にとって日本━中東間は「空白空域となっている」と言える。
 

▼苦悩する日系航空会社

 日本航空、全日空ともに経営再建の只中にある。日本の基幹空港の高額な着陸料金、航空燃料税の負担などに苦しみ長年実質赤字を続け、国内・国際線の再編成に取り組んできた2社を襲ったのが原油価格の高騰だった。しかし、日本政府のひっ迫した財政状況は航空会社の経営事情を考慮する余裕を失くしている。

 両社の関係者は「航空燃料税を徴収しているのは世界で日本、米国、韓国の3カ国だけ。しかも、日本の税率は米国、韓国の10倍以上。加えて、国際線の着陸料は依然、国際水準の3倍。今は経営の立て直しで精一杯で、中東ルート開設を念頭に入れる余裕はない」と異口同音に説明した。対照的に、エミレーツ航空など中東産油国の航空会社は原油高騰の負荷がないだけに、拠点空港のハブ化を一層促進している。
 

▼進出相次ぐ日系企業

 日本の航空会社の苦悩をよそに、日本企業は続々とドバイに進出している。ドバイの総領事館によれば、07年末現在、在留邦人数約2300人(届け出ベース)、進出日系企業数219社と前年比でそれぞれ約30%増、約20%増と急伸中だ。

 07年8月にドバイの倉庫会社に出資した日系大手商社は「成長著しいドバイに中東地域で初めて物流拠点を確保したのは、中東、アフリカ、(旧ソ連圏)中央アジアなどへの物流網構築の橋頭保とするため」と説明している。

 ドバイは世界最大の人工港ジェベル・アリと24時間運用のドバイ国際空港を有するが、09年には港湾と空港を結ぶ都市鉄道が完成する見通し。さらに、4,500メートルの平行滑走路6本を擁する世界最大級の国際空港の建設に着工している。中東諸国の中では石油資源の少ないドバイは脱石油時代に向けて着実に歩んでいる。

 

【関連情報】

○自由ひろば 2008/01/14
 「中東の楽園”ドバイ” 特徴・休日・料理」
 ドバイでは、所得税や消費税はかからない。
 水道代や医療費のタダというオイルマネーで潤った一面砂漠の中にある楽園だ。
 現在、ガソリンのリッターは45円くらいとさすがに本場は安い。
 法人税もかからず50年間保証されている。
http://plaza.rakuten.co.jp/japantokyomeguro/diary/200801140002/


○永井孝尚のMM21  2007/10/06
 「製品ポートフォリオをいかに変えるか?(2) 産油国ドバイの
 財務ポートフォリオ変革に学ぶ」
http://blogs.itmedia.co.jp/mm21/2007/10/2_c5cf.html


○J.TERAの枕草子 「未来型先端都市!ドバイを知ろう!」2007/05/26
 灼熱の砂漠の中に忽然と現われる楽園都市、ドバイ。
 世界中のセレブたちが今、最も熱い視線を注ぐリゾートの一つです。
 ここには、ビル・ゲイツ、デビット・ベッカム、ミハエル・シューマッハ
 などが別荘を所有しています。
http://blogs.yahoo.co.jp/jterasaka/19883207.html


○海外プロジェクトファイナンスの世界
 「5月24日の日経新聞」 2007/05/30 
 ドバイは石油で発展したわけではない。自由貿易、外国労働者の自由な雇用、
 所得税なし(雇用者数に応じた課税はある)などの徹底した自由化で経済発展を
 推進してきた。「自由がどれほどの規模の経済発展をもたらすかの
 モデルケース」である。
http://blog.livedoor.jp/projectfinance/archives/51178046.html


○GIGAZINE  2007/12/20
 「1200億円かけたリアルなジュラシックパークがドバイランドに建設」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20071220_dubai_jurassic_park/


○CNET 「ドバイの投資会社、ソニーに大規模な投資」 2007/11/27
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20361820,00.htm


○らばQ 「ブルジュ・ドバイがとうとう世界一に」2007/07/12
http://labaq.com/archives/50735349.html


○GIZMODO   2007/06/21
 ドバイの巨大アイランド建造計画「The World」
http://www.gizmodo.jp/2007/06/the_world_1.html

 

○First Class on Emirates A340-500(YouTube映像 03:54)
http://jp.youtube.com/watch?v=nUSqvxk_hyM


○Burj Al Arab -World's only seven star hotel(YouTube映像 08:31)
http://jp.youtube.com/watch?v=cKOOFQ-OTmM&feature=related


○The World-Dubai(YouTube映像 04:34)
http://jp.youtube.com/watch?v=7eUcRjo9Yv4


○Amazing Cars Of The UAE(YouTube映像 06:04)
http://jp.youtube.com/watch?v=4DkfTmnRB4Y

 

 


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