Entry

ケベックスピリットの最高傑作、それがシルク・ドゥ・ソレイユだ

《記事概要》

シルク・ドゥ・ソレイユが驚愕の世界記録を樹立した。高さ342メートルのガラス張り舞台でサーカスを披露したというものだ。世界最高地点でのサーカスだ。場所はカナダオンタリオ州トロントのCNタワー。披露したのは、シルク・ドゥ・ソレイユの2人のパフォーマー。涼しい顔で4分間の演技を終え、インタビューに応えたという。この記録は10月3日正式にギネスブックに公認された。

(2007年9月25日National Post Web Version)
National Post:カナダ2大全国紙のひとつ。日刊23万部を発行している。カナダで最大のメディアグループCanwest Global Communications Corp.に属する。


《解説》

アクロバットサーカスで世界を魅了し続けるシルク・ドゥ・ソレイユの離れ業と思わせるこの記事だが、実は落ちがある。もちろん、行われたのはCNタワー内でのこと。決して屋外で命綱をつけて決死のパフォーマンスをしたわけではない。それでも上空342メートルのガラス張りの上に立って下を見ることを想像しただけでなんだかムズムズする。そう思えばやっぱり凄い。今度は、さらに高いドバイのタワー553メートルで2010年にギネス更新に挑むそうだ。

ところで、シルク・ドゥ・ソレイユといえば、1月から「ドラリオン」の東京公演が行われ、再び日本を興奮の渦に巻き込んでいると聞く。今年10月には東京ディズニーランドに北米以外では初の常駐公演会場がオープンする予定で、ますますその人気に拍車をかけそうだ。

その魅力はいまさらここに書き連ねるまでもなく、すでに日本語のHP(www.cirquedusoleil.co.jp)も開設されているのでそちらに任せるとして、このサーカス集団が実はカナダのケベック州生まれということが、あまり知られていないのではないだろうか? ということにスポットを当ててみる。

シルク・ドゥ・ソレイユの創設者ギー・ラリベルテ氏は、ケベック州州都ケベックシティの出身。この町は今年400周年を迎えたカナダで最も古い情緒あふれる町である。

ケベック州はヨーロッパからの移民が最初に定住した州で、その多くがフランスからの移民であったため、今でもこの州の第一公用語はフランス語であり、さまざまな局面にフランス文化の影響を色濃く残している。その一つが芸術やスポーツへの情熱である。

ケベック州最大都市で、シルク・ドゥ・ソレイユの本拠地であるモントリオールでは、カナダでここにしかない世界的イベントが多く開催される。

スポーツでは、最も代表的なのが、カナダ初そして唯一となる1976年開催の夏季オリンピックモントリオール大会。夏季大会最大規模となったこの大会は、現在の価値換算で約2000億円を費やし、町に大きな借金を残した。返し終えたのは2006年12月だったという。

F1カナダグランプリもNASCARが行われるのもモントリオールだし、テニスのRogers Cupが行われるのもモントリオールだ。そして、忘れてならないのはアイスホッケー。モントリオールは、現在のようなゲーム形式になったアイスホッケー発祥の地といわれ、モントリオール・カナディアンズは、NHLで最も歴史が長く、優勝も最多24回を誇る。

芸術では、モントリオール・インターナショナル・ジャズフェスティバルが毎年開催され、6月になると世界中のジャズファンがここに集結する。また、日本でもおなじみのJust for Laughs(笑いの達人)もこの町生まれ。7月には1ヵ月間フェスティバルも開催される。モントリオール・シンフォニー・オーケストラは世界トップクラスの交響楽団としてその名が知られている。年間のフェスティバル数は60以上、美術館や博物館が最も多いのもこの町だ。

カナダのなかでも、芸術やスポーツにおいて一目置かれるのがモントリオールであり、ケベック州である。人々は芸術を愛し、スポーツに情熱を注いできた。こうした土壌から生まれたのがシルク・ドゥ・ソレイユというわけだ。

ラリベルテ氏が新しいサーカス集団を立ち上げる時、彼のもとに若手大道芸人とスタッフ合わせて73人も集まったという。時代はすでに1980年代前半である。

さらに、創設当時、地元の金融機関が協力したという話がある。まだそれほど実績もないこの集団にである。

動物を使わないサーカス、アクロバティックでスリリングなパフォーマンス、大道芸をクォリティの高い芸術的なエンターテインメントにまで押し上げた彼の理想と情熱は、それを受け入れる土壌がなければ成功しなかったに違いない。それが、ケベック州だったからこそ成し得たのではないだろうか。

そして、ケベック州が生んだ芸術とスポーツが融合した最高傑作が、今世界を魅了し続けているのである。

ケベックシティは、創立400周年記念イベントが新年から10ヶ月開催されているそうだ。それがまたケベックらしいが、そのイベントの有終の美を飾るのがシルク・ドゥ・ソレイユのショーというから憎い演出である。ラリベルテ氏も400年の歴史的行事に故郷に錦を飾るというわけだ。このショーでは、1万5000枚の無料チケットが配布されるらしい。会場の外には、特大のスクリーンが設置され、誰でも見られるようにするという。

『やる価値があることは、やりすぎる価値もある』というのがケベックのモットーだとか。妙に納得。シルク・ドゥ・ソレイユにもこの精神が受け継がれていることは間違いない。

 

【関連情報】

○HOE(House of eel)yoshi_eel221のエンタメブログ
 「ドラリオンのストーリー」 2007/08/05
http://blog.livedoor.jp/yoshi_eel221/archives/50654611.html


○猫と映画とサッカーと  2008/01/27
 「シルク・ド・ソレイユ“ドラリオン”東京公演を観てきました。」
 エンターテインメントに関わる仕事をしている人は一度は観た方が
 良いんじゃないかな。そう言う私も今回が初めての観劇だったので、
 人のことを言えないんですけど、一度は観た方が良いと思います。
 ステージ全体の構成力、演出力、表現力、技術力、どれも完成度が
 高く圧倒されます。自分のやってきた作品が 「なんて子供騙し
 だったんだろう」って思えます。
http://motiitutu.at.webry.info/200801/article_6.html


○Webディレクションやってます blog  2007/02/19
 シルク・ドゥ・ソレイユ「ドラリオン」に見る、生の与えるインパクト
 今回の演目で何度か失敗をしたのを見かけました。
 一度はダブル・トラピスで受け損なったんですが、その後がすごかった。
 失敗をしたペア・・・ペアといっても一人は青年で、上から飛び降りる
 のは10歳前後?と思わしき少女です。そのペアが、失敗の直後、自身の
 次の演目に行くでもなく、もう一度チャレンジをするんです。
http://web-directions.com/director/index.php?ID=289


○Cheap Chic 2008/01/29
 『上海雑技団』 『シルク・ドゥ・ソレイユ』 比較!
http://iamcheapchic.blog122.fc2.com/blog-entry-58.html


○エンタのエンジェル  ドラリオン サーカス団出身「クラウン」2008/01/04
 絶妙の演出で観客をシルク・ドゥ・ソレイユの世界に連れて行って
 くれるクラウン。 「ドラリオン」では3人の男性クラウンが開演前
 から、そしてショーが始まってからも大活躍します。
http://cochibit.8.dtiblog.com/blog-entry-15.html


○tanchan's blog  シルク・ド・ソレイユ「ドラリオン」2008/01/31
 ドラリオンの内容は・・・ちょっと甘く見ていたようです。
 もう!すごい!!!の一言。ずーっとどきどきしっぱなし。中国雑伎団
 のような、体が超柔らかく、あり得ない格好をするものから、
 アクロバティックなトランポリン、空中バレエ(?)、輪くぐり、
 大縄飛び・・・次から次へと大業の連続。その間をクラウンが観客を
 笑わせ(すっかり私はだまされてしまった!)
http://pub.ne.jp/tanchan/?entry_id=1182169


○地球の果てまで 「シルク・ドゥ・ソレイユ・シアター東京」 2008/02/05
 今年の10月にオープンする「シルク・ドゥ・ソレイユ・シアター東京」
 日本に始めて建設されるシルク・ドゥ・ソレイユの常設劇場です。
 以前にも紹介しましたが、外観はほぼ完成状態ですね。
 場所は東京ディズニーリゾートのアンバサダーホテルの横になります。
http://blogs.yahoo.co.jp/myokazu2005/54596685.html (映像音が出ます)


○BLOGe du soleil  「シルクの未来予想図」2008/01/11
http://cirque2008.seesaa.net/article/77765740.html

 

▼映像

○ドラリオン (シルク・ドゥ・ソレイユ  YouTube映像 02:25)
http://www.youtube.com/watch?v=wdj-LC8jx7c&feature=related

○シルク・ドゥ・ソレイユ常設公演 「KA」(YouTube映像 01:27)
http://www.youtube.com/watch?v=noXiNRYb8DE

○「O」Cirque du Soleil-Residence Show in Las Vegas 
 (YouTube映像 03:03)
http://jp.youtube.com/watch?v=fS0pW2ty75s

○Zumanity Press Conference(YouTube映像 01:17)
http://jp.youtube.com/watch?v=PXBHr9C_BUY&feature=related

○シルク・ドゥ・ソレイユ公演 「キダム」(YouTube映像 02:13) 
http://www.youtube.com/watch?v=j81Qlbr7r20

○Elena Lev Promo(YouTube映像 01:54)
http://jp.youtube.com/watch?v=fjB4RzWEkRo

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/567