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生徒による教師評価サイト:Spickmich(スピックミッヒ)が訴訟沙汰で知名度急上昇

 ドイツの生徒達が担当教師を採点評価し、その内容を誰でも閲覧できるサイト、http://www.spickmich.de(スピックミッヒ:カンニングやのぞき見の意)が教師や生徒の間で話題になっている。賛辞だけではなく多くの批判が書き込まれており、自分の子供から聞く教師の情報だけでなく、他の生徒達の意見もわかるとあって親達にも評判がいい。教師達は、よりよい授業内容にしていきたいと意気込む賛成派や、評価の悪さに憤慨する反対派など反応も実に様々である。


 スピックミッヒは、2007年1月大学生3人が立ち上げたサイト。開設者の1人ケラーさんによると、スピックミッヒは、大学生が教授たちを評価するサイト、http://www.meinprof.de(私の教授)から思いついたアイデアとのこと。評価書き込みの中心は10歳から19歳までの生徒達で、サイト内の評価閲覧は登録すると誰でも可能だ。 


 教師の評価項目は、セクシー、生徒間での人気度、授業内容、人格、授業中の雰囲気、試験やテストの難易度、公平な成績評価などが上がっており、1から6の評価を書き込む。評価された点数を加算し、項目数で割った平均値が最終評価点となる。これは生徒の成績表と同じで、1の優から始まって6は落第点となる。また教師評価トップ10あるいはワースト10のほか、15万人以上の教師の評価が閲覧(のぞき見)できる。


 昨年11月、ドイツ北西部ノルトライン・ヴェストファーレン州の女性教師が、スピックミッヒ開設者3人を相手取って訴訟を起こした。この教師は、サイト内での悪評価に激怒し人権侵害もはなはだしいと、法の力を借りて自身の名誉挽回を図った。世論に話題を投げかけたこの裁判、言論の自由と言う理由で女性教師の訴えはあっけなく却下された。


 その後、スピックミッヒの知名度が急上昇したのはいうまでもない。週末や生徒に成績表が渡される時期になると、一時的に入力が出来ないほどの人気ぶりである。(ドイツでは年2回成績表が渡される。半期成績表は1月下旬から2月の上旬、年間成績表は夏休み前。)





 上記評価表の女性教師担当科目は、生物とドイツ語。教師の名前(ここでは伏せてある)、勤務学校名、総合評価点が明記されており、評価した生徒数は42名。1,8はかなりいい評価である。

 ネット評価賛成派教師は、60%を占め「生徒の評価を授業内容に反映できる。教師も成績表を貰うことで自分自身を高めていく指針になる」と向上心も旺盛。40%の反対派教師は、「生徒の成績は個人を尊重し、他人の前では公表しない。一方教師の評価は、ネット上誰でも閲覧可能で、まったくもって不愉快である。」と不満をぶちまける。また「評価や成績に問題があると思っている生徒は、直接教師に相談にくればいい。何も問題をおおやけにする必要はない」と言う教師。更にネット評価は匿名で書き込むため、フィードバックができない。これが、教師にとっては許せない。


 生徒側の意見は、「教師に面と向かっていえない賛辞や批判が書き込める。教師に対して自分と同じ意見を持っている生徒がたくさんいることで安心する。生徒間のつながりがもてるようになった」などである。また「評価が公平でない教師、ひいきの生徒には点数が甘い教師、自分を正当化し生徒の訴えに聞く耳を持たない教師」など普段の教師の様子が反映されて評価採点となる。


 このサイトを利用する生徒達は、批判はするものの意外にざっくばらんであっけらかんとしている。評価の書き込み後は、不満のある教師に対してもこだわりを持っていない。こだわりを持つのはかえって教師の方で、評価が気になって冷静になれないようだ。


 教師も以前は生徒だったことを振り返ってほしい。その昔、教師評価サイトがあったとしたら、当時の生徒達は、教師に何を望みどんな評価を書き込んだのだろうか。

 


【関連情報】

○Clear Consideration 学生の声を「目安箱」で汲み取ろう 2007/11/25
 目安箱の設置で学生の声を経営者層に届かせる、というやり方ですね。
 成蹊大学のやり方だと一通一通に学長自らが目を通すとの事。忙しい業務の
 合間を縫っての作業ですから、学長にとっては大変でしょうけれど、
 しっかりと学長にまで声が届くからこそ、これまでに240通の意見が集まった
 のかも知れませんね。そういった意味では「目安箱設置しました!」と
 言っているだけで、頂いた意見をフィードバックできないようであれば、
 かえって学生の不信を招くことになってしまいますね。
http://d.hatena.ne.jp/high190/20071125/p1


○MarkeZine  2008-02-05
 「大学全入時代の認知度アップに効果あり? 講義内容のネット公開を9割が評価」
 大学関係者が考えている以上に、外部からは大学のことはわかりにくい
 印象がある一方、講義に対する関心は高いようだ。少子化によって
 大学全入時代が来るといわれている中、ネットを活用した各大学の
 取り組みにはこれからも注目が集まりそうだ。
http://markezine.jp/a/article/aid/2617.aspx


○Europe Watch 「学生が先生を評価する─アメリカとドイツの場合」2007/08/17
 『学生が教官を評価する』という試み、ドイツや日本では社会的な抵抗感が
 あるようだが、アメリカでは普通に行われており、私はアメリカ留学時に
 これを体験した。学期最後の授業の後に生徒全員に用紙が配られ、
 「分かりやすさ」「授業の熱心さ」「評価の公平さ」「試験問題や宿題内容の
 適切さ」などの項目について点数をつけるのである。コメントも寄せることが
 できる。この集計結果は学期末に学校のイントラネットに公開され、全学生と
 新入生が評価結果を見ながら次の学期に選択する授業を選ぶ。当然ながら
 評価の悪い教授の授業は人気が下がる。学生の採点が悪くて改善が見られ
 なければ、大学から解雇されるので、教官も一生懸命授業スタイルの工夫改善
 を図るのである。
http://europewatch.blog56.fc2.com/blog-date-20070817.html


○教育情報ポータルサイト eduon!  2007/12/21
 「高校生の10人に1人が学校裏サイトで友達の悪口。学校裏サイトに関する調査」
http://eduon.jp/news/high_schools/20071221-000217.html


○Itmedia オルタナティブ・ブログ 『ビジネス2.0』の視点
 「学校裏サイトの現状と対策の取り組み」 2008/01/07
http://blogs.itmedia.co.jp/business20/2008/01/post-08ae.html


○適宜覚書はてな異本
 「学校裏サイトとはいじめの見える化である」 2007/0812
http://d.hatena.ne.jp/dacs/20070812/1186880948

 

○Spickmich bei Logo am 27.11.2007(YouTube映像 03:05)
http://www.youtube.com/watch?v=4Ocbupl_6tU

 

 


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