Entry

アロマテラピーを学ぶにはこの2冊がおすすめ!

  • グリーンフラスコ株式会社 代表・薬剤師 
  • 林 真一郎

私は仕事柄、人からよく「アロマを学ぶにはどの本を読むのが良いですか?」と尋ねられる。そんなとき、決まっておすすめするのが「クリニカル・アロマテラピー」(フレグランス・ジャーナル社)と「天の香り」(あむすく)の2冊だ。しかも、この2冊のどちらかを読むのではなく、2冊とも読むことが重要だ。なぜなら、この2冊はアロマテラピーの持っているふたつの側面を見事に表しているからなのだ。ここで言うふたつの側面とは、左脳的、つまり科学的アプローチと右脳的、つまり直感やシンボルとして把握するアプローチだ。

「クリニカル・アロマテラピー」は米国の看護士であるジェーン・バックルさんの著作で、副題に「よりよい看護をめざして」とある。欧州と米国のアロマテラピー事情を比較すると、米国はマーケティングが上手なのでアロマ化粧品やアロマグッズなど、アロマテラピーをコンセプトにした製品が広く流通している。

その一方、本格的なセラピーとなるとやはり欧州に軍配があがるのだが、バックルさんは孤軍奮闘といった様相で、米国の「科学的」アロマテラピーをリードしている。

ところで、私はアロマテラピーを科学の土俵にのせることには賛成だが、西洋医学と対立する、あるいは西洋医学に取って替わるものとして位置づけることには反対だ。そうではなくて、西洋医学、つまり医薬品・手術・放射線といった心身にダメージを与える療法のマイナス面を補うセラピーとして位置づけることが、有効性や安全性の上からも適切であると考えている。

バックルさんの考え方もその通りで、本書も全編を通してそうした看護的視点が貫かれている。内容も具体的・実践的であり、本気でアロマテラピーを医療の分野に導入しようという意志が感じられるのだ。

「天の香り」はドイツの自然療法家で、アロマセラピストでもあるスザンネ・フィッシャー・リチィさんの著作だ。彼女はドイツの森の中で自然療法と薬草治療の学校を経営している。

ドイツのアロマテラピーの特徴は、科学的なアプローチと共にメルヘンやファンタジーに富んだアーティスティックな一面を持っていることだ。本書はおよそ70種類の精油の各論をまとめたものなのだが、それぞれ学名や原産国、含有成分や効能に加えて、ブレンドのレシピやその精油のもととなるハーブの神話や物語、ときにはそのハーブを賛美する詩までをカバーしている。

ローマンカモミールの効能をバックル流に解説すると「イギリスハーブ薬局方に収載されており、80%までのエステルを含んでいる。エステルには抗痙攣作用があるので、伝統的にローマンカモミールは抗痙攣薬や精神安定薬として用いられる。」となるが、リチィ流の解説では、カール・ハインリッヒ・バッゲルルの詩をもって「肉体の痛みを鎮める力を創造主はカモミールに与えた。花を咲かせてのんびりと腹痛に悩む人を待っている。」となる。

「不機嫌このうえなく、むしゃくしゃして不満だらけ、そのうえもどかしさを感じたらカモミールの出番だ。たいしたことでもないことですぐ怒ったり、自己中心的で過敏、しかも不服そうだったら、この精油に手を伸ばすのが一番よい。」とも述べている。

わが国にアロマテラピーが紹介されて間もない頃、あるアロマテラピーの翻訳本に載っていた「精油は植物の魂である。」という記述に、医師らが激しく反応したことがある。「精油は魂なんかじゃない。植物が生合成した化学物質だ!」というのだ。確かに左脳的には化学物質だが、精油を右脳的に「魂」と表現するセンスも捨てたものじゃない。ヒトに右脳と左脳が備わっていることは、両方必要だということだと私は解釈している。片方だけでは危険なのだ。

バックルさんの著作の「まとめ」の部分を引用しよう。「良い本は書かれるのではない。書き直されるのである。そして、最高の本は決して終わることはない。続くのである。」
そう。米国のアロマテラピーも欧州のアロマテラピーも、そして日本のアロマテラピーも、日々進化を遂げているのだ。

 


【編集部ピックアップ関連情報】

○アロマテラピストのホメオパスへの道
 「森の国ドイツの自然療法士(1)」 2008/02/22
 ドイツのハーブ情報に触れて、つくづく日本と違うと思うのは、
 「80%の医師が、まず最初にハーブを試し、それでもダメならば新薬を
 施す医療体制」が整っていることです。
http://holy-sky.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/no86_e102.html

○nikkei BPnet  2007/12/05
 「データバンクと自動調合装置でアロマセラピーを簡単に」
 ドイツでは自然療法が盛んだ。そのドイツに、各人の症状を入力すると、
 アロマオイルの処方箋(どのオイルをどれだけ配合するかの“レシピ”)
 や効能を瞬時に表示し、それを自動的に調合する装置「アロマドック」
 (AROMA DOC)が登場した。アロマ人気を背景に、注目を集めている。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/world/071205_alomadoc/

○華のある暮らし 「天の香り (1)」
 アロマテラピーに関する書籍は比較的多いようだが、今ひとつ納得できない
 というか、重みを感じられなくて、購入して読もうという気持ちになれ
 なかった。でも、出逢いは突然やってきた。房総半島の先に位置する
 南房総市にあるローズマリー公園で紅茶をいただいていた時、ふと、
 目立たない肌色単色カバーの書籍が目に入った。
http://flowercity.blog.shinobi.jp/Entry/148/

○Bergamot Flavored Blogs 「ベルガモットというドメインについて」2005/01/22
 その時参考にしていたアロマセラピーの本に、「ベルガモットはもっとも
 フレキシブルな精油のひとつで、混ぜ合わせた精油の作用に順応する」
 (フィッシャー・リチィ,1994)と書かれていたのも気に入った。
http://www.bergamot.com/archives/2005/01/xkbghceaae.html

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/581