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音楽界のベッカム「デイヴィッド・ギャレット」はクラシックの枠を超えるクロスオーバー・バイオリニスト

 女性を魅了する美貌でファッションモデルとしても活躍、そしてファーストネームが同じ理由で「クラシック界のベッカム」と呼ばれ、今ヨーロッパで注目を集めているのがバイオリニストのデイヴィッド・ギャレット(David Garrett 1980年生まれ)だ。
http://www.david-garrett.com/  *1


 保険価額、なんと4百万ユーロ(6億4千万円・1ユーロ=160円))という、1710年製のストラディヴァリウスをさりげなく小脇に抱えて笑顔のデイヴィッドが登場すると、聴衆は一挙に沸きあがる。時には、Tシャツとジーンズ姿でポップスターのごとくステージにあがり、普段クラシック音楽に縁のない若者達も、この時ばかりはバイオリンコンサートに熱狂する。
http://www.youtube.com/watch?v=HmDePI6YpKs (YouTube映像 03:43)


 デイヴィッド・ギャレットは、ドイツ人弁護士の父とアメリカ人クラシックバレエダンサーの母を持つドイツ生まれのバイオリニスト。4歳から練習を始め、まもなく頭角をあわらした天才少年だ。


 8歳でマネージャーがつき、コンサートデビューは10歳。モーツァルトやバッハが大好きな少年で、12歳からイダ・ヘンデル(Ida Händel)に師事。13歳でドイツ・グラモフォンレコード会社と契約し、デビューアルバムのリリースを果たした。


 幼年期からロンドンロイヤルフィルハーモニー、パリ国立オーケストラなど国際的オーケストラと共演したり、世界的な指揮者ユーディ・メニューイン(Yehudi Menuhin)、クラウディオ・アバド(Claudio Abbado)などのもとでソロ演奏と、音楽家としてのキャリアも長い。


 英国やアジア(日本や香港など)では、90年代の中頃からコンサートを定期的に開催し、知名度は高かった。一方、英国以外のヨーロッパでは、クラシックファンを除きデイヴィッドの名は聴衆に浸透していなかった。


 18歳の時、ニューヨーク・ジュリアード音楽院入学を決め演奏活動を休止、突然大衆の場から姿を消した。


 両親やマネージメントそして演奏家など、常に大人ばかりに取り囲まれてのコンサート生活は、それなりに満足感があった。しかし、決められたスケジュールを消化していくだけの毎日は、一般社会からシャットアウトされたような孤立感もあった。また、1日8時間の練習量をこなすためには、いわゆる普通の幼少年時代もなかった。心のバランスも崩れた。とにかく親と距離を置き、自立したかったという。


 渡米後は、誰の干渉もない自由と引き換えに、生活能力が全く無い事を思い知らされたそうだ(それまで買い物をしたり銀行に行ったりなどの経験が一切無かった)。 それでも、全ていちからはじめることに抵抗はなかったとのこと。サーフィン、パーティー、ギターにと興味のあるものには次々とトライし、遅い青春を謳歌した。


 音楽院では、巨匠イツァーク・パールマン(Itzhak Perlman*2)に師事し、バイオリンと作曲の勉学に励んだ。私生活では、学費を稼ぐためにバーテンダーをしたり、図書館で仕事をした。そのうちにモデルにスカウトされ、ヴォーグ誌上やジョルジオ・アルマーニのコレクションと多数のファッションショウの場も踏んだ。


 4年間の勉学後の演奏活動再開は、突破口が見つからず苦しい時代であったそうだ。デモCDを持って、音楽業界へ売り込みに出かけたり、マンハッタン地下鉄道で演奏、プライベートパーティでの演奏なども試みた。以前のキャリアでは考えられない数々の挫折体験も重ねた。


 そんななか、世界一流アーティストのコンサートコーディネーター・ドイツ最大企業DEAG社の目にとまり、ドイツ国内での本格的再デビューチャンスが訪れた。


 2007年の後半から今年にかけて、国内TV放送で相次ぐプロモーションインタビューや著名人との演奏が報道されると、まもなく全国的に名が知れ渡った。

http://www.youtube.com/watch?v=DEw1cABeByU    (YouTube映像 03:57)

http://www.youtube.com/watch?v=XGgfOz9A9-U&feature=related 
  (YouTube映像 10:11)


 昨年11月、自らプロデュース・アレンジ作曲したCD「Virtuoso」が発売されると、ドイツアマゾンでクラッシック音楽部門売上No.1に躍り上がった。このCDのコンセプトは、クラシック音楽であるが、デイヴィッドの好きなロック、ポップそしてハードメタルが見事に融合されたクロスオーバーミュージックである。


 ラフな格好でステージに上がると、クラッシック音楽正統派からの批判も時にはある。しかし、自分の演奏を通して若者たちが少しでもクラシック音楽に興味を持ってくれるならと、本人は動じない。今後は、クラシック95%、クロスオーバー5%の割合で活動して行きたいという。


 ドイツを代表する世界のバイオリニスト アンネ・ソフィー・ムターに継ぐスターと絶賛されているデイヴィッドの、更なる活躍に注目していきたい。


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  *1 ホームページでは日本2006年発売CD「Free」の試聴が可能。
     曲目は「Virtuoso」とほぼ同じもの。

  *2 パールマン氏は、1993年スティーブン・スピルバーク監督のオスカー作品
     「シンドラーのリスト」のテーマミュージック(ジョン・ウィリアムズ作曲)を
    演奏したことでも有名。
 http://www.youtube.com/watch?v=ueWVV_GnRIA (YouTube映像 04:58)

 


【編集部ピックアップ関連情報】

○「おかか1968」ダイアリー 2008/02/14
 「デイヴィッド・ギャレット 滑って転んでストラディバリウスを大破させる」
http://okaka1968.cocolog-nifty.com/1968/2008/02/post_ba4c.html


○サモンプロモーション・スタッフブログ 2007/12/26
 「ドイツの雑誌にデイヴィッドのインタビューが・・・!」
 神童として、少年時代に相当な苦労をしたようですね。
 短い内容ですが、日本では見せない(知られていない)幼い頃に感じた
 苦悩を痛切に語っている、とてもレアなインタビューでした。
http://blogs.yahoo.co.jp/samonblog/39145031.html


○HODGE’S PARROT  2007/08/11
 「デイヴィッド・ギャレットのパガニーニ(シューマン編)」
http://d.hatena.ne.jp/HODGE/20070811/p2


○千の天使がバスケットボールする 2007/04/11
 「デイヴィッド・ギャレット ヴァイオリン・リサイタル」
 クラシック音楽の演奏に関しては、テクニックがあるのは当然であり、
 そのうえでの個性が勝負になる。年々衰えてくるイケ面が、彼の一番の
 ”個性”だとしたら、今以上の活躍は望めないのではないか、そんな
 ことも考えてしまった。ところが二曲めのモーツァルトのヴァイオリン・
 ソナタ になると、素直でのびやかであかるい彼の個性が美しく響き
 はじめた。ここから徐々に彼の経歴にふさわしい音楽の才能とセンス
 が披露されていく。
http://konstanze466.jugem.jp/?eid=7


○Gの徒然日記 2007/04/13
 「デイヴィッド・ギャレット ヴァイオリン・リサイタル」
 こうしてみると、ギャレットという人は、自分のやりたいこと、あるいは、
 自分の売りにできることがはっきり見えていて、それに合わせて
 プログラムを組んでいるのだろうと推測できる。
http://sangiovese.blog84.fc2.com/blog-entry-46.html


○荻の里から 「DAVID GARRETT」 2007/04/12
 容姿端麗なこのヴァイオリニストには、いわゆる「追っかけ」ファンが
 多数いるようで、今日の演奏会は普通のクラッシックの演奏会とは
 ちょっと雰囲気が違いました。ワー、とかキャーッとかいう声は
 さすがにありませんでしたが、会場が演奏中も非常にうるさかった。。。
http://apri101.exblog.jp/5494303/

 

  


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