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無料ネットサービスは強者の独壇場。険しい多様化への道。

  • 米国在住ビジネスコンサルタント
  • 鶴亀 彰

 私の周りにいる日本人企業駐在員の間ではスカイプ(Skype)が大流行である。日本に住む両親との国際テレビ電話を気軽に楽しんでいる。年老いた親達もアメリカに住む孫達との会話が日常的に楽しめるとあって、「長生きして良かった」と言い、ネット技術の進歩に驚いているらしい。私も日本や中国やマレーシアやオランダの友人達との間で頻繁に利用させて頂いているが、無料なのが実に有難い。

 グーグル(Google)が2月28日に新しい無料サービス「グーグルヘルス」の開始を発表した。これは個人の医療情報をウェブ上で管理するサービスで、患者は自分の投薬記録や検査結果などの個人的な医療記録を管理し、いつでも、どこからでもアクセス出来る。クリーブランド・クリニックと言うオハイオ州にある非営利の病院との提携から始まり、今後多くの医療機関との提携を増やして行くと言う。

 個人情報漏洩リスクの懸念などはあるが、これが多くの人々に広がって行けばスカイプ同様、大いに便利で役立つものとなる。情報の共有が出来ると、違う病院に行くたびに名前や住所から始まり、いちいち書類を書き込む面倒もなくなるだろう。診療時間の短縮にもなるだろう。マイクロソフトも昨年10月「ヘルス・ヴォールト(HealthVault)」と言う同様なサービスを始めている。

 スカイプは通常の電話との通話であるスカイプインやスカイプアウトなどのサービスは有料だが、パソコン同士の通話なら無料である。グーグルも今回の「グーグルヘルス」のサービスは無料であると共に、サイト上には広告も掲載しないと言う。グーグルの検索サイトで患者が医療情報を検索する際の広告表示による間接的な収益構造らしい。

 いずれにしろ私達消費者に無料で役立つサービスが提供されるのは嬉しいことであり、ネットの素晴らしさである。現在「ネット上で提供されるものは無料」という意識が広がっている。しかしそれらのサービス提供には回線料や仕組み維持などにコストが掛かるものであり、それらは通常広告収入で賄われている。

 先月高品質・高音質で知られた動画共有サイト、ステージシックス(Stage6)が運営を中止した。ユーチューブ(YouTube)の画像とは比較にならない素晴らしい画質を提供していた。同サービスを提供していたDivX, Inc.のプラグインをインストールする手間はあったが、DVDを観ているのと全く変わらず、映像コミュニケーションの未来を感じさせるサービスだった。

 しかし利用者には無料のサービスであり、最終的に運営コストを賄えず、サービスは中止された。やはり広告収入モデルだけでは無理であったようである。実に惜しい思いでいる。ネットでの有料サービスの成功例としてウォールストリート・ジャーナルの例などがあったが、流れとしてはやはり「ネットは無料」の傾向がますます強まっている。

 グーグルやマイクロソフトなどは、世界中のありとあらゆる情報を取り込んだあかつきには、それを大きな収益源とする力を持っているだろうが、これらの情報巨人以外の便利で有益なサービス提供者は、広告収入以外の収益がないと存続は難しい。ステージシックスのサービス開始は、時代としては早過ぎたのかも知れない。

 映像コミュニケーションの世界では鳴り物入りで始まったJoostももう一つ勢いが感じられない。広告収入に頼る無料サービス以外に、有料のサービスモデルも受容される事で、ネットの世界も更に進展するのではないかと感じている。それには簡単で安全な課金システム、そして消費者をより満足させるサービスの誕生が求められている。

 


【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  2007/12/17
 「オンラインメディア、ニュースサイトの有料・無料化議論の行く末は」
http://mediasabor.jp/2007/12/post_288.html


○entrance for finance 2008/02/14
 「case study: マイクロソフトのヤフー買収とグーグルの反撃」 
http://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/6ee0920f5a724e190777b472bdca332f


○CNET  2005/03/18
 「スカイプ、高収益企業を目指し有料サービスの充実図る」
 インターネットと従来の電話網をつなげるSkypeの取り組みは、従来の
 電話会社にとってもほかの新興VoIP企業にとっても頭の痛い話になると、
 アナリストは述べる。Skypeと多くのライバル企業は、インターネット
 技術を使いながら、ユーザーにより多くの機能をより低価格で提供し、
 電話業界に揺さぶりをかけようとしている。
http://japan.cnet.com/news/com/story/0,2000056021,20081444,00.htm


○CNET  2008/02/25
 高画質の動画共有サイト「Stage6」が2月28日でサービス終了へ
  --運営コストをまかなえず
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20368124,00.htm


○GIGAZINE  2007/11/16
 「YouTubeが3ヶ月以内に高画質化、さらに既存のムービーも高画質に」
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20071116_youtube_high_resolution/


○ITmedia News  2007/06/18
 「Web2.0は大嫌い」とひろゆき氏 ニコ動有料版で「もっと面白くしたい」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/18/news033.html


○ITmedia News  2008/02/29
 Google、医療情報サービス「Google Health」を発表
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0802/29/news018.html


○頭の中の本箱 「処方箋の電子化」 2008/03/03
 こうした動きの一方で、オンラインのパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)
 の動きも本格化してきた。このサービスは患者がオンラインで自分の
 医療情報を収集,保存,管理できるようにするもの。Googleは
 「Google Health」の名称で参入し、MS社の「Microsoft HealthVault」、
 AOLの「Revolution Health」がこれに続く。
http://blogs.yahoo.co.jp/banquo_2006/40347889.html


○Mare Azzurro の日記 2008/03/05
 「Google Health 米クリーブランドクリニックと提携」
 データ/情報流通を握る上で、個人の健康情報は最も価値のある
 コンテンツだと思う。この仕組みが標準としてクリーブランド病院に
 とどまらず、全米、さらに世界に広がる可能性があると考えると、この
 仕組み作り=プラットフォーム作りは、グーグルの競争力をさらに強く
 することになると思った。
http://d.hatena.ne.jp/MareAzzurro/20080305/1204722081


○ITmedia オルタナティブ・ブログ 一般システムエンジニアの刻苦勉励 
 「google healthはEHRに手を出す気だろうか」 2008/01/26
http://blogs.itmedia.co.jp/yohei/2008/01/google-healtheh.html?ref=rssall

 

 


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