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物も市場もエネルギーも「オプティマム・イン」の時代へ

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長
  • 谷口 正和

 物も店も情報も過剰にあふれ、市場も社会も無駄だらけ、というのが現在の状況である。必要なことは「オプティマム・イン」、つまり市場をどう最適化させるかだ。過剰でもなく不足でもなく、使い過ぎでもなく足りないでもない、「最適の市場バランス」をどうつくり出していくかだ。これを「マーケット・イン」「カスタマー・イン」の例にならって「オプティマム・イン」と言ってみた。顧客もこのことに気付き、「オプティマム・イン」マーケットに参入する企業を支持し始めた。

 米国エネルギー効率経済協議会が「最も環境に良い自動車ランキング」を発表している(WIRED VISION 2/29)。最も環境に良い車は、1.本田技研工業『シビックGX』、2.トヨタ自動車『プリウス』、3.本田技研工業『シビック・ハイブリッド』、4. 独Daimler社『Smart ForTwo』、5. トヨタ自動車『YARIS』[日本名『ヴィッツ』]などだ。

 このようなランキングが発表されれば、これらの自動車を顧客が支持するようになり、実際、海外のハリウッドセレブが映画祭に「プリウス」で登場するような事も起きている。「エネルギーは有限だ」「私も二酸化炭素の排出を削減したい」「環境に良いこととは何をすればいいのか。身近なところから始めたい」「必要なものを必要な分だけ買おう」。このような気持ちになっている顧客が増加しているのである。この顧客の要望に応えた調査や、商品、サービスに今後可能性がある。以下2つの事例をご紹介する。

 Hanako 3/13号では、生産者と顧客を直接つなぐ「オプティマム・イン」の市場流通として、「朝採り野菜市」を特集している。「吉祥寺大特集」では、朝採り野菜が購入できる直販所、専門ショップをマップで紹介。武蔵野市は小規模な畑が住宅街に点在する都市型農地。86世帯もの農家があり、吉祥寺駅から徒歩圏内にも畑がある。専門ショップは、「新鮮館」、「アンテナショップ麦わら帽子」、「JA全農のお店吉祥寺」など6店を紹介。直販所は、市内45ヶ所中、吉祥寺駅から徒歩圏内の10店を紹介。「榎本正孝農園」、「ムーバス99」、「北町直売所」、「田中農園」などだ。

 東芝が首都、近畿、中京の三圏に住む20から60代の主婦364人に調査し、4人に1人が家庭菜園を設けていることがわかった(日経流通 3/5)。家庭菜園をつくる理由は「できたものが食べられるから」「無農薬で安心だから」。栽培している野菜は「トマト類」「キュウリ」「ナス」が上位。これも物流の「オプティマム・イン」現象である。購入する野菜は「国産を選ぶことが多い」が90%で外国産は6%にとどまった。

 先般の中国製ギョーザ農薬混入事件の影響でメディアに「食」の情報が多くなり、顧客の最も身近な「食」の「オプティマム・イン」マーケットへの関心が高まっていることが窺える。生産者と顧客をつなぐ流通過程を飛ばした「朝採り野菜市」、自宅で作る安全な野菜が食べられる「家庭菜園」。よりシンプルに、より明快に、より的中率高く、市場から無駄をなくし、しかも必要なものが必要な分だけ確保されている「オプティマム・イン」マーケットが顧客に支持され、形成されつつある。考えてみれば必要な物同士を交換する物々交換マーケットなどは、「オプティマム・イン」マーケットの原型かもしれない。

 また日経トレンディ 4月号では、グッドテーブルズ社長 山本謙治氏が5年後の日本の食料市場の最適化について指摘をしている。「カロリーベースの食料自給率は40%を切った。まずは身近な努力でこの数値を改善することが重要」といい、具体的には「米を食べる機会を増やすこと」という。また「5年後は、現在に比べて安価な食材は減っているだろう。500円以内で牛肉を素材としたハンバーガー、丼が食べられる今の状況が不思議。全体的に食材の価格は上昇している」と予測している。5年後、市場は同氏が指摘するような「オプティマム性」を取り戻しているだろうか。

 単純な市場競争の原理が結果的に生み出した過剰と類似の社会、もはやこのままでは行き詰まることは明らかだ。全員「オプティマム・イン」の原則に立ち戻り、改めて「必要なマーケットとは何か」「専門性とは何か」を問い直し、余剰のマーケットを削ぎ落としていく必要がある。

 

【関連情報】

○WIRED VISION  2008/02/29
 「最も環境に良い/悪い」自動車ランキング:米国NPOが発表
http://wiredvision.jp/news/200802/2008022920.html


○百式 2008/02/18
 家庭菜園つくりを支援してくれるオンラインツール『GrowVeg』
http://www.100shiki.com/archives/2008/02/growveg.html

 

 


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