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ギブソン社『ロックバンド』に訴訟攻勢

(記事要約)

 ギター・メーカーのギブソン社は、ビデオ・ゲーム『ロックバンド』(Rock Band)が同社の特許を侵害するとして、ハーモニックス社(開発)MTVネットワークス(発売)エレクトロニック・アーツ社(販売)を対象に、3月20日地元ナッシュビルの連邦地方裁判所に提訴した。

 2007年11月20日に米国で発売された『ロックバンド』(プレイステーション2、3、XBOX360、Wii対象)は、画面の音符に合わせてギター、ドラム、マイクの形をしたコントローラーを操作するゲーム。ギブソン社は同ゲームのシステムが、1999年に取得したギター装置の特許を侵害すると訴えている。

ギブソン社の公式サイト: http://www.gibson.com/

ロックバンドの公式サイト: http://www.rockband.com

2008/3/21、AP通信より


(解説)

 ロックの名曲にあわせて弦のないギター装置を演奏し、ギターが弾けなくてもバンド気分に酔いしれることができる。そんなロック・ファンの夢をよそに、またまた訴訟大国アメリカらしい事件が起きている。

 この事件、詳しく説明すると少々ややこしい。そもそもギターのギブソンがロックバンドを訴えているという設定からしてややこしい。

 初めにギブソン社が標的にしたのは、2005年発売以来大ヒットとなり、シリーズ合わせて1400万ユニット、10億ドル以上を稼いだ『ギターヒーロー』というビデオ・ゲームだった。

 『ギターヒーロー』もまた画面の音符に合わせてギターの形をしたコントローラーを操作するゲーム。ギブソン社は1月、発売元アクティビジョンに対して特許のライセンス合意を訴えかけた。

 しかしアクティビジョン社は特許侵害なしとして、ロサンゼルスの連邦裁判所に提訴した。文句があるなら裁判で決着をつけようと、ギブソン社の主張をつっぱねたである。

 その後とばっちりは、思わぬ方向に向く。ギブソン社、今度は大手小売チェーンのウォルマート、ターゲット、Kマート、アマゾン・ドットコム、トイザラス、ゲームストップの6社を訴えた。『ギターヒーロー』を売るのを止めろというのだ。

 そして翌日間髪を入れずに『ロックバンド』を扱う3社が訴えられた。なぜか『ギターヒーロー』のアクティビジョン社ではなく、同様のギター装置をゲームの一部に使用している『ロックバンド』に矛先が向けられたわけだ。

 ギブソン社は「被告側はしかるべきときに特許ライセンス合意のための交渉に応じなかったため、訴訟に訴えるしかなかった」と声明している。しかし、矛先が次々と変わっていく訴訟には不可解な点が多い。

 そもそもギブソン社は自社のブランド品が『ギターヒーロー』のギター・デザインに使用されるなど、ライセンス面で共存関係にあったはず。2005年から発売されているゲームになぜ今さら特許侵害を訴えるのか理解に苦しむ。

 もっとも裏の弁護士事情はもっとシンプルかもしれない。あそこは金を持っている・・・あそこなら勝てる・・・かくして今日もまた「sue(訴える)」の3文字がメディアを賑わしているのだ。

 

 


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