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糖質から直接ガソリンを作る。次世代のバイオガソリンをシェルが開発

 糖質から直接バイオガソリンを作る技術開発に成功したことを3月26日、ロイヤル・ダッチ・シェル(英国)が明らかにした。コスト競争力があり、しかも自動車のエンジンを改良する必要もないという。

 新しいバイオガソリンは植物中の糖質を原料とし、触媒を介して作る。そのまま自動車の燃料として使え、ガソリンとの配合もできる。通常のガソリンエンジンの燃料にしても悪影響がないうえ、従来のバイオガソリンと比べて燃費も良くなるという。混合の必要がなくなることで、新たな設備投資も不要となる。トウモロコシの茎葉、麦わら、サトウキビパルプなど食品とはならない部位を使うため、植物相場の値上がりを防ぐこともできる。

 シェルとバイレント・エナジー・システムズ(米国ウイスコンシン州)が5年契約で共同研究を進めており、その1年目に早くも成果が出た形となった。バイレント社は、バイオサイエンス関連のベンチャー企業。今後は、技術改良と合わせて量産化に向けた研究を続ける。

 このバイオガソリンの発売時期やコストに関しては明らかにされていない。ただ、コストについては、シェルのグレーム・スィーニ副社長が「価格競合力のある技術と信じている。そうでなければ研究に着手しない」と述べるなど、他製品と十分に競合できるレベルであることを示唆している。

 従来のバイオガソリンはトウモロコシやサトウキビなどを原料に作られている。だが、直接ガソリンを作るのではなく、出来るのはアルコール燃料のエタノール。原料を発酵させてバイオエタノールを作り、それをガソリンに混ぜていた。

 製法には「ETBE方式」、「エタノール直接混合方式」の2種類があり、07年4月から販売を始めた日本はETBE方式。一方、米国、ブラジル、EUなどではエタノール直接混合方式を採用している。両者にはそれぞれ一長一短がある。

 バイオエタノールに石油ガスのイソブデンを加えてバイオETBEを作る方式では、現行の製油所設備が使える代わりに、ガソリンへのエタノール含有率を上げるのが技術的に難しく、日本では3%しか認められていない。

 一方、直接混合方式では混合設備を新たに作る必要があるものの、エタノール含有率は高くできる。米国では含有率が85%を占める「エタノールE85」が販売され、二酸化炭素の排出量削減効果も大きい。その代わり自動車のエンジンはバイオガソリン用に改良する必要がある。バイオガソリンを使うと環境に良いといわれるのは、すでに光合成によって二酸化炭素を吸収している植物を原料として使うため、燃料として燃やしても二酸化炭素の総量が増えないからだ。

 今回発表された新たなバイオガソリンが普及すれば、直接混合方式を採用する国々では自動車のエンジンを改良せずに環境に良い燃料を手にすることができ、一方ETBEの採用国ではエタノール含有率を一気に上げることが可能となる。

 昨年12月に成立した米国の2007年エネルギー法案では、自動車の燃費を2020年までに4割改善する目標と同時に、2022年までにバイオ燃料の利用を360億ガロンに高めることを義務化した。現在の利用量はガソリン消費量の4%を占める70億ガロンに過ぎないが、5倍以上に増やす計算になる。日本政府が05年の京都議定書目標達成計画で定めた「2010年度までに原油50万キロリットル相当分のバイオ燃料を導入する」とは随分開きがある。

 しかし、米国でもバイオ燃料の普及が十分に進んでいるとは言いがたい。E85に対応した自動車は米国メーカーを中心に40車種近く発売されているが、日本車メーカーで対応しているのはマツダと日産のわずか3車種のみ。ガソリン価格の高騰から燃費の良い日本車に買い換える米国人も多い中、これではせっかくのバイオガソリンによる環境対策が生かしきれていないことになる。また、給油所も中西部が中心で、カリフォルニア州には10カ所しかないなど今後のインフラ整備も必要だ。

発表資料:
http://www.virent.com/News/press/03-26-08_Shell_Virent_Biogasoline_Collaboration.pdf

 

 


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