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サルコジ大統領とカルラ・ブルニによる政治のショー・ビジネス化

 フランスで、サルコジ大統領の人気が落ちている。サルコジ氏は、大統領に就任した去年の5月からこの1年の間で離婚、再婚とプライベートな面で国民の注目をひき、政治をショー・ビジネスのようにしたと国民の反感をかっている。実際の経済、社会改革は、党内外の軋轢があり、思うように進んでいない。

 2007年5月に対抗馬のロワイヤルを下し、大統領になった右派のサルコジ大統領。国際競争力を失っているフランス社会を立て直そうと、いくつもの経済・社会改革を公言し、大統領に就任した。

 しかし、就任後の1年でサルコジ大統領がフランスや海外のメディアを賑わせたのは、私生活の部分。就任前から不仲やダブル不倫がスクープされ、離婚の危機がささやかれてたセシリア前夫人とは、就任後3ヶ月で離婚。カップル社会のフランスで、現役大統領が独身という珍しい事態になった。

 その半年後に、元スーパーモデル、人気歌手だったカルラ・ブルニと交際を始め、今年2月に再婚。ゴシップ誌に十分な話題を提供してくれた。政治家や芸能人のプライベートな側面に、「彼らも普通の人間。それぞれの生活があるだろうから、仕事以外の事には、あまり干渉しない」というフランス人気質をも変えてしまうかもしれない。

 フランスは、個人の人権を守ろうとする文化がある。自分のプライバシーや個人情報に関して非常に敏感であるとともに、有名人であっても彼らのプライバシーを尊重する習慣がある。

 ミッテラン前大統領の隠し子の件に関しても、フランスのメディア界では知られた事実であったが、大統領とその子どもの人権を尊重して、メディア側も自粛し、暴露をなかなかしなかった。芸能人や政治家の恋愛沙汰は、国民の世間話のネタになるが、熱狂するほどの関心はしめさない。ゴシップを追いかけるパパラッチもあまり居ない。

 そんなフランス人気質に対して、バカンス豪遊、離婚再婚騒動に、息子のスキャンダルとさまざまなゴシップネタを提供して、世間の注目を政治からそらそうとしている。噂話が好きなのは、世界共通。政治改革が、与党内の十分な支持が得られず、思うように進まないので、意図的に隠れ蓑にしている。ゴシップを提供して、国民の関心をそらす方法は、ヌイイ市長時代(パリに隣接するヌイイ市は、高級住宅地で有名人が多く住む。また、いくつもの大企業の本社もヌイイ市に在籍)に、ビジネス界、芸能界の大物との交流を大事にしてきたサルコジのスタイルなのだろう。

 プライベートの話題を提供して一般大衆の注目を集める芸能界のやり方を、完璧に理解しているのが、サルコジ大統領の三番目の妻になったばかりのカルラ。イタリア貴族の血を引き、スーパーモデルや歌手時代に、大物ミュージシャン達との浮き名を流し、長い間ファッション界、芸能界に身をおいてきたカルラは、国民の関心の集め方を、ばっちり習得している。

 3月のサルコジ夫妻の初のイギリス訪問で、クラシカルなツイードのツーピースをエレガントに着こなし、エリザベス女王の隣に並び、国内外の人気を一気に高めたカルラ。スタイルや着こなしは、スーパーモデルだったカルラにとっては、得意分野。自信満々で、イギリス国民の前に姿を現した。その様子が映像や写真で報道されたフランスでは、ほやほやのファースト・レディのカーラを崇拝するカーラ・マニアが誕生した。

 これからも、サルコジ大統領夫妻は、定期的にゴシップネタを国民に提供していくだろう。しかし、肝心の政治改革が遅々として進まない今、フランス国民は、それでも鋭く新大統領の政治手腕を監視しつづけるだろう。 

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○Carla Bruni Boots(YouTube映像 00:58)
http://jp.youtube.com/watch?v=7l4911xPG1o


○フランス落書き帳 2008/04/11
 「仏ファーストレディーのヌード写真5万7500ユーロで落札」
http://naoparis.exblog.jp/6997267/


○ね式(世界の読み方)「破壊しに、と彼は言った」 2008/03/09
 サルコジは壊すことを知ってはいても、何かを作り上げることはできないだろう。
 ニッポン国の某首相が、ニッポン国の“古臭くなった”システムを壊したのと、
 結局は同じである。
http://neshiki.typepad.jp/nekoyanagi/2008/03/post-9f0d.html


○British Thunder Blog 「サルコジ 対 リャニア」2008/02/02
 この広告はちょっとした享楽を意図したものであるとリャニアは言うが、
 フランスでは、プライバシーと個人のイメージの私的利用に関する法律は
 非常に厳しい。カルラ・ブルニはこの航空会社を相手取り、五十万ユーロ、
 七十五万ドルの損害賠償を求めている。
http://britishthunder.asablo.jp/blog/2008/02/02/2679709


○大島信三のひとことメモ
 「サルコジ・フランス大統領就任演説全文」2007/05/19
http://oshimas.iza.ne.jp/blog/entry/174630

 

 


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