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エコで経済的な藁の家「ストローベイル・ハウス」

(記事概要)

 三匹の子豚のお話に出てきた藁の家は、風に弱く脆かった。ところが、きちんとした工程を経た藁の家は、驚くほど丈夫な上、環境にもやさしい。ストローベイル・ハウスと呼ばれる藁の家は、俵ほどの大きさの長方形ブロックをレンガのように積み上げて土の漆喰で塗り固める工法を用いたものだが、大変断熱効果が高く、ドイツでもパッシブハウスと呼ばれる低エネルギーハウスに適した外壁づくりができると評判だ。

 ドイツ・ストローベイル建築専門家連盟によると、アメリカ合衆国では、ストローベイル住宅がまさに建築における伝統と言われるのに対し、ドイツ国内にはまだ100戸ほどのストローベイル住宅が存在するのみだが、近頃建材としてメディアの注目を浴びている。

『フランクフルターアルゲマイン紙』2008年2月17日
http://www.faz.net/s/RubFED172A9E10F46B3A5F01B02098C0C8D/Doc~E48AADB7764B243C39D72CE69FFAB388F~ATpl~Ecommon~Scontent.html
 
『ターゲスシュピーゲル紙』 2008年4月12日
http://www.tagesspiegel.de/magazin/immobilien/Strohballenhaeuser;art875,2510956

 

(解説)

 ドイツでストローベイル建築が行われたのは、1980年代が最初。屋根などの負荷がかかる場所には使用せず、主に壁の断熱材として利用されていた。木材で間柱をつくり、その間に藁でできたブロックを詰めていく。農場などでも見られる工程だが、ストローベイルを使った外壁づくりでは、藁のブロックに大きな圧力をかける。藁が硬くプレスされれば、空気の居場所が減るため燃えにくく、丈夫になるので、何階もの建物の建設も可能だそうだ。これは、一枚の紙が燃えやすく、脆いのに比べ、分厚い電話帳には点火しにくく、引き裂きにくいことを想像するとわかりやすい。

 ストローベイルをつかった壁の厚さは約1メートルに及ぶため、室内温度が20度以下になることはなく、比較的乾燥してはいるが、大変心地がいい。他の断熱材にくらべ、安価なことから、建設コストもかなり低く、実際105平方メートルの住宅建設に60,000ユーロ(約960万円)しかかからない。

 2000年からすでに6つのストローベイル・ハウスプロジェクトを成功させている建築家ディルク・シャルマー氏は、ドイツにおけるストローベイル・ハウスの第一人者だ。シャルマー氏による東部ドイツのストローベイル・ハウスプロジェクトは、BSHF (Building and Social Housing Foundation) が開催する「World Habit Award」で2007年に受賞している。環境問題、社会問題などに対する解決策を示す集合住宅に対して授賞される国際的な同賞は、ドイツにおけるストローベイル普及に大きな影響をもたらした。

 シャルマー氏が代表を務めるドイツ・ストローベイル建築専門家連盟の貢献により、2006年以降ドイツ建設技術研究所(ベルリン)からストローベイルが建材として認可されている。但しドイツでは、各建築許可はケースバイケースであり、地元の建築局で申請することになっている。断熱材としてストローベイルを利用する限り、認可が下りないことはまずないと言われている。

 ドイツで利用されずに捨てられる藁を使えば、約320,000戸の家が建てられると言われているストローベイル・ハウス。環境に良い上、コストが少ないとなれば、この伝統建築工法を利用しない手はないのではないか。
 


【編集部ピックアップ関連情報】

○Straw Bale Home Construction Instructional Video(YouTube映像 03:59)
http://jp.youtube.com/watch?v=LZABqaEsrLM&feature=related

○Benefits Of Straw Bale Construction(YouTube映像 01:41)
http://jp.youtube.com/watch?v=A3ZWr9sdUGY&feature=related

○Straw Bale Geodesic Dome(YouTube映像 00:44)
http://jp.youtube.com/watch?v=9SEahWSgs0k&feature=related

○「藁の家」ストローベイルハウスついに完成☆─♪♪ 2006/06/30
http://blog.goo.ne.jp/wara-styl/e/32bb726db025c7439e3f9afc9dea5a56

○「ストローベイルハウス 
  ─藁(わら)で作る究極のエコロジーハウス─」2007/05/21
http://blog.askit-bp.com/archives/28419180.html

○風と森の里山暮らし 「ストローベイルハウスいいな!」 2007/09/15
 以前から気になる存在の「ストローベイルハウス」=藁の家ですが、
 先日、このストローベイルハウスづくりを見学する機会がありました。
http://www.econakoto.net/kazetomorino/article/26

○鵜野日出男の今週の本音 2008/02/25
 「アメリカのEDU誌がトップで取り上げたパッシブハウス(上)」
 Passive House Instituteを主宰するドイツの Wolfgang Feist博士は、
 昨年暮にアメリカのワシントンDCとミネソタで「パッシブハウス」の
 講演を行い、大反響を呼んだ。
http://unohideoblog.seesaa.net/article/86926446.html

○インスペクター 大下達哉の「建物調査日記」2007/08/01
 「温暖化防止省エネ住宅セミナー + パッシブハウス東京第1号住宅」
http://t-ohshita.com/2007/08/20070801-1900.html

○LOHAS(ロハス) ─健康でおしゃれな住まい─
 「もったいない!!」 2007/11/26
 この「アースシップ」は、建築家のマイケル・レイノルズ氏が考え出した
 もの。古タイヤに土を詰めて土台とし、壁はセメントに空き缶や空き瓶を
 埋め、明かりとり窓にもなる。生活用水はすべて雨水を集めて作り、
 電力は太陽光発電でまかなう。 また・・・こんな家も!!
 発泡スチロールに似た物質「特殊発泡ポリスチレン」で作る家「ドームハウス」
 は、ノンフロン、ノンホルムアルデヒドで、しっかりと断熱し、
 しかも7から10日で建設可能!
http://blog.livedoor.jp/upreform/archives/389699.html

○サステナ・ラボ 「サトウキビの持続可能な家」 2007/10/28
 キューバと言うと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? ラム酒、
 葉巻、サルサ、それともチェ・ゲバラやカストロ?  あるいは
 持続可能な社会に関心の深い方であれば、都市農業で自給自足して
 いることでしょうか?
http://suslab.seesaa.net/article/63081887.html

 

 


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