Entry

インドで急成長を見せる「出会い系サイト」─オンライン結婚相手探しが人気となる社会背景─

インドのインターネット業界で、際立った成長ぶりを見せているのが、お見合い結婚の相手探しサイトだ。つまり、言ってしまえば「出会い系」であるが、日本などの状況とはだいぶ異なる。日本では「出会い系サイトに登録した」「出会い系サイトで出会った」等のことは、なかなか人に言いづらく、むしろ皆、隠れて閲覧や登録をしているものだ。だが、インドでは、太陽の下で堂々と利用できるサービスになりつつあるのだ。

というのも、インドには「いまだに、ほとんどの人がお見合い結婚をする」という文化背景がある。相手を、まずは条件で選ぶ、ということだ。フィーリングや趣味、性格などは二の次三の次である。都市部では恋愛結婚も増えていると言われるが、それが許されるのは、そのカップルがたまたま条件的にもマッチしていた時のみ(つまり稀)と言っていい。その条件とは、カースト、一族の経済レベル、学歴、職業、容姿のレベルといったところだ。

どんなにイチャイチャと仲良くしている今風のカップルでも、どちらかが結婚するとなった途端に、それまでのことは全てチャラにして、まるで、今生(こんじょう)でこなさなければならない一大仕事かの如く、他の人と結婚していく様は、何年インドにいても理解し難い。実際、インド人にとって「結婚」ほど大事な人生のイベントは他になく、一族にふさわしい相手と結婚し、子孫を繁栄させるのが、彼らの人生における最大重要事項なのだ。

今までは、お見合い相手を探す方法の代表的なものは、新聞広告であった。毎週日曜には、必ず結婚相手探しの紙面が挟まれてくるのである。しかも、その広告を出すのは親であるのが普通であった。また、新聞広告で一人に与えられる文字数はほんのわずかであり、必然的にそこにはカーストや学歴などの最重要条件しか挙げることができなかったのである。

そこへ新聞広告に変わって登場したのが、インターネット上のお見合い相手探しサイトである。代表的なサイトは「shaadi.com」(http://www.shaadi.com/)や「BharatMatrimony.com」(http://www.bharatmatrimony.com/)といったところだが、他にも同様のサイトが1500以上あるとのことである。利用者は2004年には400万人程度だったが、2008年現在でほぼ倍の700から800万に増えているという。

インド人の結婚相手選びの特徴は、「同等の相手と結婚する」ということに尽きると考えてよい。何よりも重要なカースト、そして経済レベルや、家の職業、容姿のレベルが同じでなければ、結婚生活はいずれ破綻するという考え方である。つまり、ビジネスをしている家の者は、やはり同等のビジネスファミリーと結婚せねばならず、医者は医者と結婚するのが理想的だということだ。実際、医者の妻は医者、弁護士の妻はやはり法律系の職業、教師の妻は教師といった例がインドでは大変多い。さらに、そこへ占星術のホロスコープのマッチングという、非常に重要視されている条件が加わる。

また、「同等」というからには、あくまでも同等でなければならないわけで、相手探しのサイトのカテゴライズは、先に述べた諸条件分けのほかに、「NRI(在外インド人)」「バツイチ」「子持ち」「やもめ」「身体障害者」等のカテゴリーが必ずあるのも、見逃せない。大手サイトでは、サイト内にこれらのカテゴリー分けがされているのだが、それぞれのカテゴリーに特化したお見合いサイトも数多く存在する。そして、これらカテゴライズは、「自分の好みの相手を見つけるため」に存在するのではなく、「同等」の相手を見つけるためにあるのである。インドでは、そこまでの容赦のない割り切りが社会のど真ん中を貫いているのだ。

だが、そうは言っても、これだけオンライン上の相手探しの人気が急上昇している理由は、やはり、「より自由度が広がった」からというのが大きいようだ。諸条件を満たすことは前提であっても、できるだけ自分の好きな相手を自分で見つけたいのは、当然だろう。そこへ、今までは親が出していた、ほんの数行の新聞広告に変わって、自分でプロフィールを書き、自分でいろいろ検索できるシステムが登場というわけだ。最後に許可を出すのは親だとしても、許可が出そうな相手を探すところまでは、以前よりも自分で参加できる割合が増えているのだ。

また、新聞に比べて、記入スペースがたくさんあり、写真も掲載できるところが画期的であるらしい。重要項目以外にも、趣味や性格、余暇の過ごし方などのソフト面も、備考として書くことができるようになったのだ。そのうえ、新聞広告に比べて、会員費はだんぜん安いときている(一ヶ月換算で1000円から1200円程度とのこと)。

大手サイトでは、その他にも、ホロスコープの割り出しサービスなどのオプショナルサービスも提供するようになっており、インドで今後ますますの急成長が約束されている業界である。

しかし、インド人の、条件による割り切った相手探しを見ていると、日本でももう少し正々堂々と利用できるような出会い系サイトがあっていいのでは? と思えてこなくもない。「こんなところに登録しなければならないくらいなんて、きっとよほど冴えない人なんだろう・・」「売れ残り?」「もしかして問題人物?」などと思わずに、皆が普通に利用できるような男女の出会いのための場があったら、社会の鬱屈も少しは明るくなる気すらしないだろうか(?)。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○海外投資公式サイト  2007/10/29
 「インド:People Interactive (I) Pvt Ltd(Shaadi.com)」
 Shaadi.comの成功の秘密は、利用者の写真掲載に注力してきた結果サイトに
 集まった3.6百万枚の写真があること、自動的にマッチングしてくれる機能
 が優れる、サイトのデザインがいいとか色々あるようです。でも、現在の
 サイトを見ると、一押しは、Shaadi.comを利用してこれまで結婚した
 カップルの数のようです。
http://blogjpn.amoncorp.com/?eid=487240


○On Off and Beyond 2008/01/15
 「1週間10時間の仕事で利益10億円の個人サイト事業」
 Plenty of Fishは無料の出会い系サイト。広告だけが収入源。
 このサイトのすごいところは、ファウンダー+パート一人、という感じで
 細々とやってるところ。収入は広告頼み。ユーザーは無料で使うことが
 できるので、面倒な課金管理もなく、ほとんどのプロセスは全自動。
http://www.chikawatanabe.com/blog/2008/01/post-13.html


○CNET  2007/12/18
 「将来の出会い系サービスの主流に?
  --遺伝子プロファイルを利用した出会い系サービス」
 「Scientific Match」は、DNAが異なるがゆえに肉体的に引かれ合う
 人同士をカップルにするとうたっている。調和したカップルは、
 遺伝子的に似通ったカップルに比べて、互いに相手の自然なにおいを
 好ましく感じ、ベッドでも喜びが大きく、より健康な子供を授かると
 Scientific Matchは主張している。
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20363527,00.htm


○CNET  2008/03/04
 「出会い系サイト、事業者に届け出義務--規制法案が閣議決定」
http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20368669,00.htm


○ITmedia News  2008/02/13
 本当に出会えるの? 「結婚サイト」の表と裏
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0802/13/news043.html


○ココロ社 「徹底研究!プロフィール写真の載せ方(実例つき)」2008/03/25
http://d.hatena.ne.jp/kokorosha/20080325/p1

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/652