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検索1,000回ごとに地球上の木が2本増えるエコなサーチエンジン「Ecocho」

<記事要約>

世界初の「グリーン」な検索エンジンと謳い、ユーザーの負担なしにカーボンオフセットを実施するサービスが、オーストラリアほか世界14ヵ国でスタートした。

ecocho.com.auは、「ユーザーがYahooやGoogleで1,000回検索するごとに、最大2本の木の成長をスポンサーすることによって好ましい環境的利益」を生み出すと約束している。

創設者のティム・マクドナルド氏は、「オーストラリアだけでも、毎月8億回近い検索が行われている。その1%でも我々が獲得できれば、有害な温室効果ガス排出の影響低下に、大きく貢献することができる」と言う。

同サイトは、PR広告会社Photon Groupの子会社であるYield Mediaが所有している。

2008/4/16 iTWire(http://www.itwire.com)より


<解説>

「ecocho」は造語で、エコという言葉を含む短くてユニバーサルな名前を探していたウェブプロデューサーが、たまたま出くわした日本語の「チョー」を後ろに付けたもの。なぜだか、「超」=「ギフト」と思い込んで、環境への贈り物という意味を込めたつもりが、「とってもエコ」を意味すると後から気付いたと白状している。

検索機能は独自開発したものではなく、二大検索エンジンのものをそのまま利用しているので、同サイトから検索すれば、GoogleまたはYahooに直接アクセスしたのとまったく同じ結果が表示されることになる。

トップページには、木の本数とCO2削減量が示されていて、時間の経過と共に数字が変化していく。ユーザーは、いつもの検索サイトとしてecochoを選ぶことにより、自分の意思でカーボンオフセットを実践しているという満足感を得ることができるわけだ。しかも、金銭的な負担は一切なし。環境のために、と検索能力を妥協する必要もない。

世界的な環境ムーブメントとして注目されているカーボンオフセットは、日常生活や企業活動を通じてやむをえず排出されたCO2(カーボン・ダイオキサイド)を相殺(オフセット)するための活動や仕組みのこと。直接的に植林や森林保護活動などに参加するほか、クリーンエネルギー事業などの温室効果ガス削減プロジェクトに間接的に投資または寄付するといった方法があり、カーボンオフセットやCO2排出権付きの商品やサービスもじわじわと浸透しつつある。

関心が高まる一方で、実際に環境に貢献・寄与しているところまで届けられるケースが少ないだけに、信頼性・透明性の確保がこれからの大きな課題と言える。

ecochoの場合は、検索1,000回ごとに、1トンのCO2の吸収源となる木2本分のカーボンオフセットを行うとし、その資金を広告収入から捻出する。記事中でも触れている通り、スタート当初に「最大2本」と言っていたのは、広告収入額が未知数なだけに幅を持たせたのだと推測するが、ネット上で曖昧だと批判された後、「最大(up to)」という表現は引っ込められた。

植林によるCO2排出削減量(クレジット)の購入は、ニュー・サウス・ウェールズ州政府が2003年から取り組んでいるGGAS(Greenhouse Gas Reduction Scheme=温室効果ガス削減計画)を通じて行われ、植樹された木は100年間移動されないことが保証されている。また、クレジットの取引に関しては、大手監査法人のKPMGがモニタリングしているほか、政府に認可された排出削減証書プロバイダーのレジストリ(登録簿)にログインするための、IDやパスワードも一般公開されている。

ごく一部には、人目を引くための単なるマーケティング的仕掛けだという皮肉な見方もあるけれど、ecochoが広範囲の支持を得るための手法を模索し、信頼性を確保するための情報開示に努力しているのは明らかだと思う。

スタートから10日間で木の本数は、約3,500本になった。いつの間にかサービス対象国は20ヵ国に広がっていて、英語による案内ではあるものの日本語の検索にも対応している(http://www.ecocho.jp)。

残念なのは、この短い間にGoogleがecochoへの技術提供を停止してしまったこと。Google側の公式コメントはないが、非金銭的インセンティブによる広告への誘導を禁止しているAdSense(https://www.google.com/adsense/login/ja/)の規約に引っかかるという主張らしい。

そもそもサイトオープン前にGoogleから賛同を得ていたと反論するecochoは、公式ブログ上で細かな経緯を公開した。確かに、サイト収入の70%をカーボンオフセットに充てることを目指すとは発表したが、広告への誘導はまったくないだけに、ユーザーの間では、Googleに対する失望の声が相次ぎ、抗議の動きも出ている。

世界初かどうかはさておき、どうせ検索するならと、「グリーン」な検索サイトを選択する人々の善意を見込んだビジネスモデルがどうなっていくのか、しばらく目が離せなそうだ。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○neulominen suomessa 「地球温暖化を防止するサーチエンジンEcocho」
http://fumioulu.exblog.jp/7770602/


○ECO NEWS DIGEST 2008/03/10
 「坂本龍一がカーボンオフセットCDのマキシシングルを発売」
 このCDは、坂本龍一本人が代表を務めるNPO「モア・トゥリーズ」
 により、売り上げの一部が高知県梼原町での植林に使われるとのこと。
http://econewsdigest.seesaa.net/article/89031695.html


○ZDNet Japan  2008/04/23
 「グリーンIT推進にあたって明確にすべき5つのポイントとは?」
 Accenture グリーンITサービス グローバル統括パートナーの
 Stephen Nunn氏は、「グリーンに対する取り組みを個別に見る
 のではなく、ITがグリーンに貢献できる領域を全体的に見る
 必要がある」と話す。つまり、データセンターの省力化のみ
 ならず、IT機器の電力量削減、オフィス環境、調達方法、
 サプライチェーン、自宅勤務をはじめとするワークスタイルの
 多様化なども考慮すべきというのだ。
http://japan.zdnet.com/news/itm/story/0,2000056188,20372040,00.htm


○ITmedia News  2007/10/10
 2008年の技術トレンド、1位は「グリーンIT」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/10/news022.html


○FPN  「欧米人がグリーンITに積極的なワケ」 2008/01/08
 フォレスターリサーチ社が2007年5月に行った
 Tapping Buyers' Growing Interest in Green ITという調査
 によれば、北米等に本社を置く企業のITマネジャーなど124人のうち、
 85%が「IT運営業務計画を立案するにあたって、エコロジーを重要と
 考えている」と回答しています。
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=2981


○CNET  2007/10/12
 「データセンタのCO2排出量、情報通信技術分野の4分の1に達する--ガートナー調査」
 データセンタは運用、冷却に莫大な電力を要する。そのデータセンタ
 からの二酸化炭素排出量が、今や世界の情報通信技術からの排出量の
 およそ4分の1に達していることが、分析会社Gartnerの調査で明らかになった。
http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20358612,00.htm

 

 

 


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