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バラやラベンダーの香りの美容効果 その2 --- 精油の若返り効果を解き明かす

  • グリーンフラスコ株式会社 代表・薬剤師 
  • 林 真一郎

前回はバラやラベンダーのかぐわしい香りが心に働きかけ、自律神経系・内分泌系・免疫系のバランスを回復して美容効果をもたらすしくみについて説明した。そこで、今回はハーブの香り成分の直接的な美容効果について解説しよう。

まず、香りは目には見えないが香りの本体は物質であることを知って欲しい。その物質は精油(エッセンシャルオイル)と呼ばれ、ハーブに重量のおよそ1%程度含まれており、蒸留などの方法で取り出すことができる。原液のまま肌につけると刺激が強いので、マカデミアナッツ油などの植物油におよそ1%の濃度(植物油10mlに対して精油2滴の割合)で希釈したものを肌に塗布する。

ここで精油がさまざまな美容効果を発揮するのだ。肌の老化とは、皮膚の細胞が活性酸素によって傷害を受けることによって生じる。活性酸素とは紫外線などによって発生する反応性に富んだ状態の酸素で、言わば肌にダメージを与える暴れん坊だ。精油にはこの活性酸素を消去する働きがあることが、科学的にも明らかになっている。

また、肌のやや奥にあるメラニン色素が増加すると、シミやソバカスといった色素沈着を引き起こす。精油には、このメラニン色素の生成を抑える働きがあることもわかってきた。しかも、厚生労働省が美白成分と認めているコウジ酸やアルブチンなどと肩を並べるほどその効力は確かなものだ。(ここで、精油やコウジ酸、それにアルブチンなどが全て植物性成分であることは注目に値する。

植物は光合成によって生きているため、紫外線を浴びることが避けられない。そこで、植物は自ら紫外線によるダメージを未然に防ぐための成分をせっせと作っているのだ!)さらに、精油にはシミやソバカスを防ぐだけでなく、シワを予防する働きがあることもわかってきた。コラーゲンと呼ばれる物質が肌の弾力を保っているが、コラーゲンの働きが低下するとシワとなって現れてしまう。精油にはこのコラーゲンの生成を促す作用があるのだ。

ところで、精油の美容効果がこれほどあるのに、なぜ今まで注目されなかったのだろう? ひとつには、香りには関心が向けられていたものの、精油そのものが持っているこうした「機能」に対しては、比較的最近になって科学的な検証が試みられたこと。そしてもうひとつは、化粧品などを皮膚に塗ったところで、その物質が皮膚の深部には浸透していかないだろうと考えられていたためだ。

たしかに、皮膚は異物を体内に侵入させないためのバリヤーだ。フカヒレのコラーゲンをそのまま肌に塗ったところで、コラーゲンは巨大分子なので皮膚には浸透しない。ところが、精油は分子量が小さく、しかも脂溶性(水には溶けず、油に溶ける性質)であるため皮膚から吸収され、深部にまで届くのだ。

コラーゲンそのものを皮膚から送り届けなくても、コラーゲンの生成が促されれば目的は達成できる。精油には老化防止作用や美白作用、コラーゲン生成促進作用に加えて抗菌作用や防腐作用がある。抗菌作用によって皮膚を清潔に保つことでアクネ菌などの増殖を防げるし、防腐作用があるため、ケミカルな防腐剤の使用を最小限にすることもできる。

前回は香りの心を介しての美容効果を、今回は香りの成分である精油の体(皮膚)への直接的な美容効果を述べた。言うまでもなく、心と体はつながっているから、この2方向の作用には相乗効果が期待できる。

最後に注意だが、これから夏に向かって「精油で日焼け止めをしよう。」などといった乱暴な使い方はNGだ。精油の美容効果を得るには、まずは信頼できるブランドの植物性化粧品を使うことから始めよう。

そして、フィトセラピー(植物療法)を学ぶなどして確かな知識と技術を身につけたら、手作り化粧品に挑戦するのも良いだろう。すでに欧米では、フィトコスメトロジー(Phyto-cosmetology 植物化粧品学)やフィトデルマトロジー(Phyto-dermatology 植物皮膚科学)が大きな注目を集めている。わが国にだってヘチマコロンやスギナ水はあった。昔の女性は先を見通していたのかも知れない。

 

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○MediaSabor  2008/04/28
 「バラやラベンダーの香りの美容効果 その1
  --- こころと美容の関係を解き明かす」
http://mediasabor.jp/2008/04/1_3.html

 


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