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フランスの放送改革(放送と通信の融合)は、ADSL経由が先行

 日本で地上デジタル放送の普及が進められているが、フランスでも国が音頭をとり2005年より放送改革が行われている。現在のアナログの地上派を全廃して、2011年11月までに、デジタル放送に全て切り替える「未来のテレビ」法が2007年3月に国会を通過した。

 国先導の放送界のデジタル化計画は、チューナーが必要なTNT(Télévision Numérique Terrestre地上デジタルテレビ)と名付けた。全国の国民に200局以上の放送をハイビジョンの高画質で提供することと、携帯などの新しい端末への配信が2本柱だ。2008年4月現在、フランス人の37%がTNTを利用している。

 フランスの放送改革が政府主導で進められていくのは、TF1を筆頭とした民放放送が1987年から始まったとはいえ、以前は全局国営放送で、現在も半分以上が国営のFrance Télévisionsに属していることに起因する。

 TNTの普及に一役かったのが、インターネットのプロバイダー。業界一位のFree社を始め、大半のプロバイダーが、インターネットの高速接続とともに、ADSL経由のデジタルでテレビ番組配信をしている。

 ADSL経由のテレビは、プロバイダーが提供するモデムにテレビ画面を接続するだけ。難しい設定もいらない。つないですぐ、欧州・北アフリカ諸国のテレビ局を含む100チャンネル以上の番組を高画質で見ることができる。オプションで更に150局以上のスポーツ、映画チャンネルも契約可能だ。2005年から、このADSL経由テレビで、TNT発信番組もチューナーやデコーダーなしで、受信可能になった。

 60から400ユーロもするTNTのチューナーを購入するより、プロバイダーが提供するADSLテレビひとつですむのなら(モデムもリモコンもひとつですむ)、と過半数のフランス人は、ADSL経由でデジタル放送を受信している。

 フランスは、ネット接続者数が欧州でトップの通信先進国。常に新しいサービスを提供しているFreeと後続するAlice、NeufTelecom、Orangeは、トリプルプレイ(マルチチャンネルテレビ、フランス国内と海外への通話が無料のIP電話、インターネット接続の3つのサービスを一つのADSL回線や光ケーブル回線で提供すること)がサービスの特徴である。月額使用料は、29.95ユーロ(約4800円)と高くはない。

 政府が目指す次の段階は、光ファイバーの導入だ。2008年4月に発表された計画では、新築の住宅には、全て光ファイバーを導入することが法律で明示されている。光ファイバーを導入、運営するのもインターネットプロバイダー。テレビ放映では、政府が方針を決め、プロバイダーが実現するという通信と放送の協力が不可欠になっている。経済省は、携帯電話でのテレビ放送も計画の大きな柱としているが、日本のワンセグに比べるとまだまだ技術的、市場的に円熟していないと感じられる。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  2008/03/21
 「フランスのサルコジ大統領が公共放送の広告(CM)廃止宣言」
http://mediasabor.jp/2008/03/cm_1.html


○無名の一知財政策ウォッチャーの独言
 「番外その10:地上放送のデジタル移行の経緯」 2008/04/24
 地上放送のデジタル移行の理由については、池田信夫氏の
 地上デジタル放送FAQやデジタルテレビ放送のWikiにも
 書かれているが、要するに、日本のアナログハイビジョンを見て
 これに脅威を感じたアメリカがこの規格の排除のためにデジタル化を
 決めたので、これにさらに対抗して、日本が遅れをとるわけには
 行かないと総務省(当時は郵政省)が地上放送のデジタル化を
 ごり押ししたという事情のようである。
http://fr-toen.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_2779.html


○ITmedia News  2008/04/04
 「Gガイド」のIPGとヤフーが共同でテレビ番組情報サイト
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0804/04/news118.html


○雑種路線でいこう「君はYahoo!が黒く染まった日を知っているか」2008/02/28 
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20080228/yhoo


○ハコフグマン 「松下電器に期待する次世代テレビ」 2008/01/09
 この3点、もうそんな難しいことでもないと思うので、早速、松下と
 グーグルに実現してほしい。これによって、編成権やCM枠などが
 無くなってしまうので、放送局は非常に困ることになると思うけど、
 まあしょうがない。それが通信と放送の融合だから。
http://elmundo.cocolog-nifty.com/elmundo/2008/01/post_ec13.html


○mediologic.com 2007/12/22
 「放送法改正!:放送と通信のクロスオーヴァーが遂にはじまる」
 ついに放送法改正!やっと新しいメディアの時代の幕開けだ。
 昭和25年の制定以来、限られた電波資源を守る、表現の自由・言論の
 多様性を守る、といった要素もあった放送法だが、インターネットが
 普及するにつれ「足枷」になってきていたのも事実。
 テレビ局は収益の多様化(特に広告収入ないしは“従来型広告”収入以外)
 を模索し始め、コングロマリット化によるガバナンスとコスト志向を
 強めるということか。そんな時代に、従来型広告代理店は果たして
 ついていけるのだろうか?
http://www.mediologic.com/weblog/archives/001491.html


○池田信夫blog 「イタリアはなぜIPTVのリーダーになったか」 2007/12/28
 世界のIPTVのリーダーはイタリアだ。テレビ局と提携して地上波テレビ番組
 をすべてネット配信し、同時録画してオンデマンド配信するサービスまで
 開始した。これはHDDレコーダーをISP側にもつようなもので、視聴者は
 放送時間を気にしないで番組表(EPG)から選んで番組を見ることができる。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/25e91e010425b31d4ee610b0bdfe8b6b


○CNET  2007/11/29
 「放送と通信の融合が進まないのは、放送事業者だけの責任ではない」
 ローカル放送事業者など広告収入の落ち込みが進むことで現状の
 ビジネス展開に余裕がなくなれば、新たなビジネスに踏み出さざるを
 得なくなるとした。そのタイミングについては「3から5年後では遅い」
 とし、いかに早めるかがポイントになると語った。
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20362047,00.htm

 

 


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