ネット決済手数料の独占化。PayPal決済を強いるeBayにブーイングの嵐
- オーストラリア在住ジャーナリスト
＜記事要約＞
インターネットオークション最大手企業のeBayが支払方法を限定することを計画しているのに対し、オーストラリア準備銀行（RBA）が深い懸念を表明した。
eBayは、オンライン取引の決済方法として、「代金引換払いか、PayPalを通じた支払いに限る」という新たな方針の導入を予定しており、6月17日以降は、銀行振込や個人小切手、郵便為替などの使用が禁止される。
PayPalを通じた取引では、出品者に毎回1.1から2.4％の手数料がかかる。
オーストラリア競争消費者委員会（ACCC）は、この新方針が及ぼす影響について調査を進めており、一般市民のほか、RBAを含む関係機関から寄せられた350以上の意見書に対し、5月23日までに対応するようeBayに求めている。
2008/5/10 Australian ITより
＜解説＞
eBayは世界39ヵ国でサービスを展開し、5万を超えるカテゴリーに、常時1億点以上の商品が出品されている世界最大規模のネットオークションサイト。日本市場からは一度撤退しているが、昨年になって、日本語ポータルサイト「無料！eBay日本語ガイド.com（http://www.nihon5guide.com）」が開設されたり、ヤフーオークションとの業務提携を発表し、その一環として購買代行サイト「セカイモン（http://www.sekaimon.com）」をオープンしたり、と動きが活発になってきている。
190ヵ国・地域で利用可能なオンライン決済サービスを提供するPayPalは、そのeBay傘下の子会社だ。日本円を含む全17通貨に対応し、現在の総アカウント数はおよそ1億6,400万という。
eBayの今回の動きは、言ってみれば、本業のオークションに付随して発生する決済手数料ビジネスを系列会社でまるごと独占しようというもので、“Greedy!”（＝がめつい、欲張り）という反応が大半。選択の自由が奪われることに反発して怒りをあらわにするユーザーが続出し、波紋がどんどん広がっている。
とりわけオーストラリア人は、公平（フェア）でないことを何よりも嫌う国民性なのだ。
ライバルサイトのOZtion（http://www.oztion.com.au）は、eBayが新方針を発表して以来、アクセスや会員数が大幅に増加したことを明らかにした。
eBayを利用するオーストラリアの販売業者同盟は、現状のeBay国内取引において、代金引換払いは非常に稀で、PayPalを通じて決済しているユーザーは約半数とみている。
「ほかの支払方法よりもPayPalの方がより安全で、不正取引も減少でき、公益にかなっている」と主張するeBayに対しては、EC（電子商取引）関連サービスを提供する企業や団体が一斉に反論。取引慣行法を所轄するACCCが呼びかけた意見募集には、オーストラリアの中央銀行であるRBAのほか、オーストラリア証券投資委員会（ASIC）やオーストラリア銀行協会（ABA）なども応じており、市場の健全な競争を阻害するおそれがあるとして、揃って非難の声を上げている。
それぞれの意見書は、そっくりそのままACCCのウェブサイト上で公開されていて、誰でもアクセスできるようになっているのが、イマドキだなあ、と感心する。
今年2月に発表された最新の調査（The economic impact of eBay in Australia）によると、eBayがオーストラリア経済に寄与する金額は、GDPの0.27％にあたる年間26億豪ドルと見積もられている。国内の会員数は500万人を超え、赤ん坊からお年寄りまで、全人口の約4人に1人はユーザーという計算になる。
その多大な影響を考えると、多方面からブーイングの嵐が巻き起こったのも当たり前で、このままeBayの思惑通りすんなりコトが運ぶとはちょっと想像し難い。何しろ、結果によっては、この国のオンライン決済市場の行方を左右することにもなりかねないのだから。
今のところ騒ぎは国内にとどまっているものの、eBayはマーケット規模の小さなオーストラリアを実験台として、うまくいけば世界各国で同じ動きをするつもりだと報じられているだけに、事態の成り行きは海外でも注視されているようだ。
【編集部ピックアップ関連情報】
○CNET 2008/04/10
「目指すは国境なき取引市場の中継地点--オークファン武永社長に聞く」
オークファンは、国内・海外オークションサイトに掲載された商品の
総合的な相場検索サービスを展開する国内唯一のベンチャー企業だ。
http://japan.cnet.com/sp/techventure2008/story/0,3800085023,20371167,00.htm
○ITmedia News 2007/12/04
「日米最大のオークションが“1つ”に
かつてのライバル・ヤフオクとeBayが提携」
ヤフーは今後、米国以外でもオークションの連動を検討する。井上社長は
「日米でうまくいけば、ほかの国でも成功するだろう。国際的な取引の
不便さを軽減し、国際的なBtoC、CtoCの市場を作り上げたい」と述べた。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0712/04/news074.html
○WIRED VISION 2007/11/19
あらゆるデータを公開せよ：「PayPalマフィア」に学ぶ「成功の秘訣」
http://wiredvision.jp/news/200711/2007111919.html
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