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ヘアサロンが実現したサービスにおける「オーガニック」とは

オーガニックをキーワードにした「もの」「こと」が世の中に増えています。
著書の「オーガニック入門―心も体もうれしい毎日―」でも取り上げていますが、
オーガニックホテル、ゴルフ場、ミュージック、デザイン、家具、住宅・・・などなど。

このオーガニックの多様性。実際のところ、言葉自体に「本質的な・生まれつきの・自然に即した」という意味があるため使い方や表現がさまざまに形を変えているのでしょう。

今回は、私自身が数年間にわたってコンセプト・メイキングや研修などのサポートで携さわり、オーガニックを「サービス」に変換して成功したオーガニック・ヘアサロンのケースをご紹介します。

2006年2月に代官山にオープンした「simpleye(シンプルアイ)」。3人のスタイリストと4人のアシスタント、受付には専門のサロンコンシェルジュが配属されスタートしました。

ヘアサロンというトレンド&ファッションのオーダーを「かたち」にする場で、パーマ液やカラーリングに使用する薬剤に囲まれ、オーガニックとはまさに180度かけ離れた世界で仕事をするスタッフ。まずはオーガニックをコンセプトに彼らスタッフ全員が意識改革と知識習得をし、どこまでお客様の理想に近づけるのかというのが大きな課題でした。



まずここでは、私たちの心や身体はオーガニック「生まれつきの・本質的な・自然に即した」を大切にしたライフスタイルを送ることで、一人ひとりが持つ本来の個性や美しさ、魅力を引き出すことができる、という概念のもとコンセプト・メイキングを進めることから始めていきました。

ヘアサロンにおいて、今まで手付かずだったエコロジーへの配慮はどのように取り組んだら良いのか。雰囲気だけでなく、おいしい空気・空間を作り出す内装素材へのこだわりを、どうお客様に伝え感じていただくか。そのためには何が必要で何をすべきかを各人が考え発表する場を設け、あくまで自分たちで発想し作りあげていくということに重きを置きました。

出されたアイディアを実行するとき、責任感と新しいことへ挑戦しているということへの自覚を持つという点でこの「発表の場」は大きな成果をあげました。カットの技術やシャンプーのテクニックのトレーニングなどしか受けたことのないサロンスタッフにとって、地球環境やエコロジーを勉強し自ら考え、問題意識を持つようになるまでにはかなりの時間を要しました。

特にアシスタントにとっては、サロン内でお客様をいかに待たせずに手早くスタイリストのフォローをするかがまず第一で、その合間に準備や掃除をこなさなければいけないため、エコロジーのためのルール(汚れた排水を出さないためパーマ液が入った容器を特別処置することや、余ったカラーリング剤を保管しておく作業など)とはわかっていてもついつい手を抜いてしまうのが現実。

意識せずにそれらが習慣となるまでは個人差がでてしまい、反省会を続けながらモチベーションを保ち続けるのがひと苦労でした。とはいえ、毎日それらをこなすことでエコロジーへの配慮は何をしたかということのアピールではなく、そういうことに取り組む姿勢や心構えが大切で、継続することで必ずお客様をはじめ周りの人たちに良い影響を与えていけることに気づくことができたことが彼らの自信となっていきました。

このサロンを通じて、ひとりでも多くの方が「髪・体・心」を新しい視点でケアすることができるようになるためには、具体的にどんなことを実行していくべきか。その後も様々な工夫やアイディアが日々生まれ、試行錯誤しながらも着実にファンを増やしていきました。

防腐剤の入っていない生シャンプーや排水汚染をしないヘアケア商品を販売したり、オーガニックのアロマオイルを使ったハンドマッサージを施したり・・・その他にも髪やシャンプーする人の肌を傷めないように、塩素やカルキを除去するシャワーヘッドを取り入れ、エアナジー(活性酸素に直接働きかける抗酸化機能を有する成分を、呼吸を通じて肺に取り込み、過剰に発生した活性酸素を除去する画期的なシステム)とリフレクソロジーを同時に受けられるコースなどを取り入れたこともありました。

エコロジーを意識する習慣は一度身につくと、様々なアイディアや気づきが自然と湧き出てくるものです。そこから派生してエコやオーガニックだけでなく様々な世界の出来事や側面を伝えていけるような仕掛けを随所に設置するようになりました。フェアトレードのヘア・アクセサリーやブローチなどの小物をサロンにて扱ったり、店内で期間限定のイベントを行ったり、お客様の反応をしっかりキャッチして次の取り組みに反映させた結果、オープンしたばかりのサロンでは考えられないほどの新規客数を毎月獲得していきました。

トレンドの先を行くのはスタイルだけでなく、常に新しいサロンのあり方を表現し変化し続けることだと現場で活躍するスタッフ自身が自覚できたことが何より大きな収穫。その姿勢を評価してくれたのがお客様でありメディアでもありました。雑誌の取材はもちろん、テレビドラマのロケ、台湾からのタレント訪問などもあり常にさまざまな分野の人が出入りするサロンとなりました。

現在は土地開発のため立ち退きを余儀なくされ営業休止となってしまいましたが、ここでの大きな成功要因は「オーガニック」というものを商品(材料や品質の良さ)だけに頼らず、それをサービスする場や人づくりが革新的であったこと。

期待や想像をはるかに超えた何かを提供することで人は感動するものです。「オーガニック」もサービスに転換するのであれば、このサロンのような発想で取り組んでみることが多くのファンを作るポイントとなるのではないでしょうか。


Simpleye スタッフブログ 
http://simpleye.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/index.html

 

 


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