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教育者のあるべき姿とは-----授業をボイコットする教師達

<記事要約>

ラインランド・プファルツ州のラインギョーンハイム(Rheingönheim)にあるモーツワルト・グルンドシューレ(日本の小学校1から4年生に当たる)で、教師7人が病気を理由に学校を休んだ。半分の教師が欠けたこの学校では、12クラスの授業を続行することができず、休校する事態となった。校長と教師達の間で教育方針をめぐって衝突が続き、校長に反する教師達は、病欠という形で授業をボイコットした。

http://www.rheinpfalz.de/cgi-bin/cms2/cms.pl?cmd=showMsg&tpl=rhpMsg.html&path=/rhp/lokal/lud&id=3460053#
 (ラインファルツ新聞2008/4/18付)

http://www.spiegel.de/schulspiegel/wissen/0,1518,548224,00.html
 (シュピーゲル・オンライン2008/4/18付)


<解説>

4月15日水曜日の朝、校長は学校のホームページで、教師7人が病気のため授業が出来ない状況を説明した。さらに、病欠教師達の早急な復帰は期待できないとし、金曜日まで授業は行わないことを通達した。

これに対して州教育委員会は、授業ができないとした校長に異論を唱えた。「子供達は授業を受ける権利がある。教師間の意見の相違が引きおこした問題に子供達を巻き込んではならない」として、授業をすぐ平常どおり行うよう指示をした。そして、病欠教師に代わって、臨時教師を派遣する処置を取った。

校長ヨッヘン女史は、2006年にこの学校へ赴任してきた。同女史は、従来の教育法「教師が正面に立ち、授業を一人で進めていく。生徒は、列に並んで授業を聞く」を取りやめ、「グループ別に座り、ディスカッション方式、教師と生徒が向き合い授業を進めていく事で、生徒の学習意欲の向上を図る」という型破りの教育法を進めた。生徒達は、学ぶ事に自然と興味をもつようになり、授業を楽しむようになった。教室に新風を吹き込んだこの授業は、多くの保護者から賛同を得た。

校長は、他の教師達にも新授業法を導入し、授業の質の向上に努めることを指示した。しかし、この学校で長年生徒を指導してきた教師たちは、従来の授業法で今まで問題はなかったとして、改革を拒んだ。

ずっと冷え込み状態であった校長対教師の衝突は、昨年12月さらにエスカレートし頂点に達した。ここ半年ほど、副校長の席が空いたままで、距離を置いた立場から意見を述べる人物がいなかった事も問題を悪化させていった。一貫した教育方針の方向が定まらないまま、校長は、今年1月から3月まで病欠ということで学校に姿を見せなくなってしまった。

イースター休暇後の4月上旬、ヨッヘン校長は再び学校に現れた。学校運営も通常に戻ったかと思われた矢先、今度は、校長の教育方針に断固として賛成できない教師達が病欠を理由に授業をボイコットした。これは、公務員のストライキは禁止されているために講じた苦肉の策であった。


州教育組合幹部のタイセン氏は、「教師間の信頼関係が悪化した事で、今後授業がスムーズに進められ、円満に話しあいが出来ることはないだろう。」と語る。同氏は、職場の空気が悪化したまま3ヶ月間病欠で問題を放置した校長の節度のない対応を批判し、現在病欠中の7人の教師については庇護する立場さえ取った。

生徒を思ってよりよい授業をという一教師(校長)の意気込みが思わぬ方向に進展してしまったこの不祥事。教育方針をめぐる意識の差異で、教育者としての本来の使命を見極める事が出来なくなってしまった教師達。生徒の指導者である教師達が、まるで生徒達のけんかのように歩み寄る事なく話し合いの場をもたないとは、なんとも情けない事である。

教師達は、「一番の犠牲者は、授業が受けられない子供達」ということが見えなくなってしまったのだ。自分の考えを決め付けるのではなく、変わる事を恐れずもっと柔軟な対応をする教師が増えてほしいと思うのは、無理な注文なのだろうか。なお、教師の授業ボイコット後、ヨッヘン校長は、再び病欠で学校には出勤していないそうだ。

 


【編集部ピックアップ関連情報】

○(´・ω・`)のNews日記
 「また出た。公務員のストライキ(´・ω・`)」 2008/02/28
 今回は教師のストということです。ルールを教える立場なのに自分たちは
 ルールを破る。これは子供達に対して恥ずかしくないのでしょうか。
 努力して、自分の望む教職についたのでしょうから、“子供を教育する”
 という原点を忘れないでもらいたいものです。
http://83915.com/archives/2008/02/post_91.html


○「地球丸ズームイン」公務員が長期スト!? 2007/10/25
 カナダで暮らして、早くも13年が経ってしまった。その間、見てきた
 ストの中には、日本で生まれ育った私には信じられないようなものもあった。
http://world.chikyumaru.net/?eid=328584

 

 


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