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物価上昇が家庭を直撃、生き残りをかけて家庭菜園を開始する人も

2008年はアメリカの家庭を悩ます問題が山積みとなっている。サブプライム問題に、青天井のように上がり続けるガソリン代など、国民を取り巻く状況は厳しい。さらに最近家計を苦しめているものがある。それは食料品の価格だ。「食費が上がりすぎているので、節約をこころがけている。」そう言うアメリカ人は多く、秘策まで登場してきている。

いったいどれくらい食費が値上がりしているのか一部を紹介しよう。MSNBCがスーパーマーケットで一年前と食料品の価格を比較した。チキンはパウンド(約500グラム)$1.06が、$1.17となり10%の上昇。1ガロンの牛乳(約3.8リットル)は$3.07から$3.78となり25%の上昇。パン1斤の値段は$1.16から$1.35になり16%の上昇。12個入りの卵は、$1.63から$2.20になり35%の上昇となっている。アメリカの家庭で一般的に主食として食べるパンや、卵などの食品が軒並み上がっているのは明らかだ。もちろん、例に挙げた以外の食品も値段が上がるばかりで、家庭は大ピンチである。

なぜ価格の引き上げが行われているかというと、もちろん石油価格の上昇が大きな要因となっている。輸送にかかる費用が大幅に上昇しただけでなく、輸送の間使われる冷蔵費用など、石油に関するもの全てに価格の影響がでているからだ。その他、世界の人口増加に伴う、食料の供給不足が挙げられる。中国やインドなど、経済成長を続ける人口大国は、穀物などの需要が増加傾向にある。そうすると、世界的に需要だけが増え、価格が上がってしまうのだ。

そしてもうひとつ、アメリカが推進しているバイオエタノール増産計画が穀物価格上昇の牽引役になっている。バイオエタノールは、サトウキビやとうもろこしを発酵させてつくるエチルアルコール。アメリカでは、ガソリンの代替燃料として生産が促されている。そのため現在、バイオエタノール生産にトウモロコシ生産量の約2割が使用されている。人間の食料以外にも、トウモロコシは動物の餌にも使用される貴重な食品。そのため、供給不足になってしまい、穀物の値段が上がってしまっているのだ。

現在の状況では食品価格は上がるばかり。しかし物価が上がっているからといって、国民の給料は上がらない。米国経済研究所の所長を長年務めており、ハーバード大学の教授であるマーチン・フェルドシュタイン氏は、「物価上昇によって、アメリカ国民が使えるお金が減っている。そのため今まで通りお金を使っているように見えても、実際のアメリカ国民の生活水準は低下している。」と指摘している。(MSNBCより)  アメリカの国民達は、上がり続ける物価に何とか対応しなければいけないのだ。
 
さてここで、そんな消費者達におもしろい動きがでている。食品の価格上昇を避けようと、自分達で野菜を育て始めているのだ。植物の種やプラントを売るホームセンターでは売り上げが伸びており、消費者は家庭菜園をして上昇する食品価格に抗おうとしている。

家庭菜園の傾向は、価格の比較をすれば簡単にうなずける。あるスーパーマーケットで、枝付きトマトの値段はパウンド(約500g)3.99ドル。1個単位にすると、テニスボール大ほどのトマト1個で2ドル50セント(約250円)である。自分でトマトを育ててしまえば2から3ドルほどの種代だけで、一夏分のトマトを育てることができる。それはもう、作った方が随分と安いわけだ。

経済も消費も今まで順調であったアメリカ。それだけに、消費者が節約する姿は、ちょっと信じられない気もする。しかし、上がり続ける食品価格に、国民が耐えられないところまできてしまっているのだ。アメリカは持ち直すことができるのか? 今後の動きに期待したい。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  2008/03/12
 「飼料高騰で日本の畜産農家は存亡危機に。消費者は“主菜”の中身を見直そう」
http://mediasabor.jp/2008/03/post_340.html


○MediaSabor  2008/04/22
 「ブラジルでバイオエタノール生産量がガソリン生産量を上回る。
  環境保護との矛盾も。」
http://mediasabor.jp/2008/04/post_369.html

 


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