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森林を破壊しない自然と共存するエコロジー農業「アグロフォレストリー」

 ブラジルにおける森林破壊の問題は深刻さを増している。アマゾン地域では、2007年8月から12月の5カ月間で東京都の面積の約1.5倍、約3,200平方キロメートルが消失していたことが分かった。業を煮やした連邦政府が、今年2月に熱帯林乱伐阻止規制を発表したが、国立宇宙研究所(INPE)によると、その2月にアマゾン熱帯雨林、725平方キロメートルが伐採されたという。

 またサンパウロ大学の調査では、ブラジルの二酸化炭素ガス排出量の約75%が、森林伐採や消失によるものとの報告がある。また国内の森林破壊の大部分が、農業、牧畜用地への転換によるものであることが強調されている。


 そんな中、農業と林業を組み合わせる農法、アグロフォレストリーが注目されている。森林破壊をせず、森を作りながら、作物を生産する方法だ。樹木作物を中心に植栽し、樹間で動植物を育成する農法で、同じ土地で、樹木やその他の農作物などを同時に育てる。


 アグロフォレストリーを、ブラジルで発展させたのは、日系農家だった。今から100年前に始まったブラジルへの移民船で、パラー州のトメアスーにやってきた日本人移民は、胡椒の単一栽培を行っていた。しかし、70年代にトメアスーを襲った水害、害虫などに悩んだ末、カカオとの混植を始めたのがアグロフォレストリーのきっかけとなった。自然を大切にしながら、安定した経営を可能にするために考え出されたのだ。

 森が育てば有用木だけを切り出し、出荷することも可能になる。この方法は自然破壊となってしまう経営とは異なり、自然と共存しながら、持続した農場経営を推し進める画期的な方法として、ブラジル全土に広がりつつある。


 森林破壊に悩むのは、アマゾンのみではない。大西洋沿岸の森林地帯、マタ・アトランチカではアマゾンの約3倍ものスピードで破壊が進んでいる。このブラジル北東部、南東部と南部の沿岸にかけて続く全長約4500キロの森林地帯は、今から500年前は日本の国土の3,46倍にあたる、129万平方キロメートルあった。しかし破壊は進行し、85年から90年の10年間には総面積の11%が破壊されている。


 危機に直面しているマタ・アトランチカを中心に、エコロジー農業の普及を推し進めるのが、「TIBÁ」エコロジー農業協会だ。創立者であるオランダ人のジョン・ヴァン・レンゲン氏は、建築学者であり、国連勤務、サンパウロのカンピーナス州立大学での太陽エネルギーの研究を経て、エコロジー農業の研究にたどり着いた。

 中でも、アグロフォレストリーの研究、実践に力を注いでおり、学生対象のワークショップも行っている。「アグロフォレストリーシステムは、アマゾン地域だけでなく、このマタ・アトランチカにも適応できます。」とレンゲン氏は言う。例えば、単価が高いため、マタ・アトランチカの小規模農家が好んで栽培するパウミット(椰子の芽)は、土壌の成分を吸い取る性質がある。単一栽培では月日と共に土地が枯れ果ててしまうため、他の作物と混食することで自然と共存する方法を図る。


 「残念ながら、多くの農家は目先の利益に走っています。」とレンゲン氏。「しかしアグロフォレストリーが自然と共存し、その上、安定した経営を保障すると知れば、多くの農家がこのすばらしいアイデアに飛びつくでしょう。」と目を輝かせる。


 ブラジル政府が国をあげて推薦しているシステムとはいえ、まだまだ認知度が低いのが現実である。自然にあふれた広大な国土を持つブラジルだからこそ、その研究と実践の実現に力を入れてほしいものである。  

▼TIBÁ  ホームページ http://www.tibarose.com/port/home.htm

○WWFのマタ・アトランチカSOSのCM(YouTube映像 00:42)
http://br.youtube.com/watch?v=XouvHFiXiyk&feature=related


○アグロフォレストリー実践の森林の中の農場(YouTube映像 01:09)
http://br.youtube.com/watch?v=vIeViL7O7kc&feature=related


○アグロフォレストリー実践の農場を、リオデジャネイロの大学生が
  訪問した時のもの(YouTube映像 06:13)
http://br.youtube.com/watch?v=DSuAzPBEsO4

 

 


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