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逮捕の窮地を救ったミニブログ(Twitter)の力

  • 米国在住ビジネス・コンサルタント
  • 鶴亀 彰

  最近米国の新聞ワシントン・ポストの記事で、続けて二つ、ブログやミニブログと呼ばれるTwitter(ツイッター)が活躍した事件を知った。

  その一つはサウジアラビアでの出来事である。言論の自由がいまだ制限されているこの国でもブログは人気を得つつあるらしい。しかし国内一番人気のブログを発行している33歳の男性が政府に批判的な情報を流していると糾弾され、昨年12月に逮捕された。彼がブログを通じて、国民の人権保護に立ち上がり、刑務所に入れられた一人の裁判官を支援する動きをしたことが官憲に睨まれていたらしい。多くのブロガーはハンドルネームや匿名で書いているが、彼は実名で情報発信していた。

  このブロガー逮捕のニュースはサウジアラビア国内のみならず、世界中のブロガーの記事で広く、大きく伝播した。サウジアラビア国内の200名余りのブロガーも連日この問題を発信し続けた。今年2月には米国の首都ワシントンにあるサウジアラビア大使館の前でデモが行なわれ、サウジアラビア国内でも連日のブログ情報を通じて大きな波紋が広がった。その動きに驚いた政府は4ヶ月の拘禁の後、彼を釈放した。彼は極めて元気で、近くまたブログを再開すると言う。

  「What are you doing?  今何をしているの?」と言う質問に一文で答えるツイッターは、その簡単さと短さからミニブログだのプチブログだのと呼ばれているが、もう一つの事件はツイッターがエジプト訪問中の米国人学生を救った話である。カリフォルニア大学バークレー校のジャーナリズム専攻の学生がエジプトを訪れ、カイロ郊外の町で起きた労働争議の模様を取材したが、それを理由に彼は同行していたエジプト人通訳と一緒に地元の警察に逮捕された。

  別々に留置され、言葉も十分に伝わらない中で、困惑し、不安に陥った彼は持っていた携帯電話に一筋の光明を見出した。しかし音声での通話は、警官に知られ、取り上げられてしまう恐れがある。そこで彼はツイッターに頼ることにした。ただ一語「Arrested 逮捕された」とだけ打ち込み、発信した。そのメッセージは瞬時にエジプト国内にいた知人や米国内の友人達、同じ大学の同級生達に届いた。同級生達はすぐに大学に相談し、大学は在エジプトのアメリカ大使館に連絡を取った。そして彼は釈放された。

  従来ならば、上記二つのような事件は、なかなか世界中に広まる事はなく、支援など得られにくいケースである。しかしブログやツイッターによる情報は、ときに国境や政府の権力などはお構いなしに自由に瞬時に伝播して行く。中国などではまだまだ政府によるネット規制が強いようであるが、この動きはどんな権力も抑えられないだろう。

  世界中には億を超えるブロガーがおり、毎日その数は増加している。そして玉石混交の内容ながら、大きな奔流となりつつある。個人的な仲間内でのブログが大半であるとは言え、その個人が社会的意識に目覚め、連携し始めた時の力は巨大なものになる。それだけにブロガー達が発信する情報に対する責任も大きくなる。誰でも自分の考えを簡単に発信し、公開出来る現在であるからこそ、得られた自由に見合う責任ある取り組みが求められているようである。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○小野和俊のブログ  2008/04/07
 「Twitterで就職-ネットコミュニケーションで仕事を決める時代」
http://blog.livedoor.jp/lalha/archives/50214303.html


○ITmedia News  2007/11/16
 「お金がありすぎて失敗した」――「Twitter」創設者の“再チャレンジ”
 「Twitter」の共同創設者が来日し、Web2.0提唱者のオライリー氏と対談。
 華々しい成功の陰には、会社が存亡の危機に直面するほどの大きな失敗も
 あったという。Twitterの狙いも語った。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0711/16/news079.html


○CNET     2008/04/18
 「普通の人にソーシャルメディアに費やす時間はあるのか?」
http://japan.cnet.com/column/rwweb/story/0,2000090739,20371705,00.htm


○CNET     2008/05/02
 「モバイルソーシャルネットワークの制覇をもくろむBrightkiteの魅力」
http://japan.cnet.com/column/rwweb/story/0,2000090739,20372586,00.htm


○北の大地から送る物欲日記
 「Twitterを始めたら知っておきたいこと」 2008/04/27
http://d.hatena.ne.jp/hejihogu/20080427/p1


○ココロ社 「恐怖!Twitterの5つの精神的脆弱性」2007/12/18
http://d.hatena.ne.jp/kokorosha/20071218/p1

 


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