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100歳の『アン』がカナダの救世主に?!

 (概要)

 落ち込む一方のカナダの旅行業界に思わぬ救世主が現れた。今年100歳を迎えた『アン・シャーリー』だ。強いカナダドルとアメリカ経済の後退でカナダへの旅行客は減少するばかりだが、アンの故郷、プリンス・エドワード島(PEI)はすでに昨年の30パーセント増の観光客で賑わっている。

(2008年6月14日CBC)
CBC:カナダ3大ネットワークのひとつ。カナダで最も長い歴史を持つテレビ局。24時間ニュースを配信するニュース専門チャンネルも持つ。


(解説)

 今年5月20日にカナダ統計局が発表した報告によると、3月現在でカナダへの旅行客は1972年に統計が始まって以来の最低記録を連続5カ月更新し続けている。これは2001年に起きたアメリカ同時多発テロや2003年にカナダを襲ったSARSの影響以上という深刻な状況だ。

 原因は、去年からのカナダドル高と、アメリカ経済の悪化、それに石油価格の急騰などで、アメリカ人旅行客が激減したからだ。同局によると3月のアメリカからの旅行者は去年同月比で14パーセント減、日帰り旅行にいたっては24パーセント減、2年間で41パーセント減と劇的に減少している。この数字は海外からの旅行客の約80パーセントがアメリカ人旅行客であるカナダにとって大打撃だ。

 1カナダドルが0.70から0.80米ドルくらいの頃は、多くのアメリカ人が避暑や買い物に国境を超えていた。ところが去年カナダドルが米ドルに並んだ辺りからこの逆転現象が起こり、今やカナダからアメリカへ買い物ツアーに出かけている。

 ところが旅行業界のこんな暗いムードを吹き飛ばしてくれる朗報がPEIへの旅行客増加のニュースである。

 今年は『アン』の生誕100周年(アンの誕生日は、6月20日)。それに合わせて、国内郵便用記念切手2枚が発行された。カナダを代表する女流作家ルーシー・モード・モンゴメリーが小説『赤毛のアン』(原題:“Anne of Green Gables”)を出版したのが1908年。以来36カ国語に翻訳され、世界中で愛されている主人公アン・シャーリーの故郷である小説の舞台プリンス・エドワード島を訪ねる観光客が今年に入って急増しているというわけだ。そして特に目立つのが日本からの旅行客だ。

 もともと世界で最も『アン』を愛しているのは日本人と言われるほど、日本人はこの小説の主人公が大好きで、今でも毎年1万人はここを訪れている。一時期は、PEIへの旅行客の80パーセントは日本人と言われていたほどで、CBCでも日本人のアンへの愛情を、“National obsession”と紹介しているほどだ。

 2002年には『赤毛のアン』が日本の教科書で採用されてから50年になるのを記念して、NHKがPEIのアンの家から日本へ生中継している様子を、CBCが取材している。(CBCのこれらのアーカイブスはこちらから。http://archives.cbc.ca/arts_entertainment/literature/dossier/1630/

 そして生誕100周年の今年、再び日本人のアンへの“Obsession”に火が付き、PEIの旅行業界のみならず、カナダの旅行業界全体も押し上げる一大ブームとなっているようだ。さながら、一時期流行した韓流スターが出演したドラマの舞台を巡る旅に似ている感じがする。アンは日本人にとって永遠のアイドルなのだ。

 舞台となっているプリンス・エドワード島はカナダの東海岸にある広さ約5600キロ平方メートルの小さな島で、島全体がプリンス・エドワード・アイランド州を成し、州都はシャーロットタウン。州の人口は13万人足らず。農業と漁業が主要産業で、最近の話題といえば、30年ぶりにこの州で缶入り飲料の販売が解禁になったというくらいで、特にニュースもないこの町が、小説の主人公の人気だけで、カナダの旅行業界を支えようというのだから考えてみればすごいことだ。

 アンの生みの親、モンゴメリー自身は日本ではあまり話題にならないが、彼女が暮らしていた家が、6月14日連邦政府より歴史建造物に指定された。トロントの北東、オンタリオ州アクスブリッジ(Uxbridge)にあるこの家は、PEI生まれのモンゴメリーが結婚してから暮らした家で、3人の子供を出産し、出版した20冊中11冊を執筆した家でもある。つまりここがアンの生家というわけだ。

 できれば、私もこの物語にはまったひとりとして、この生家にもPEIにも一度は行ってみたいと思っている。飛行機でバンクーバーから6時間以上かかるので、なかなか足が向かないということもあるが、行くならやっぱり紅葉のきれいな秋がいい。あの小説の舞台を満喫できるのであれば、カナダの旅行業界に日本人観光客として一役買うのも悪くない。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○★Abaのカナダ写真・地図・観光局★
 プリンス・エドワード島(PEI) 赤毛のアンの家の旅行写真集
http://canada1pic.hp.infoseek.co.jp/pei_pic.htm


○Prince Edward Island-The Dawn and The Sky and The Sun
 (YouTube映像 04:08)
http://jp.youtube.com/watch?v=JSaktb9ZWxM


○ココナツ・カフェ Coconut Cafe
 ようこそ「赤毛のアン」の世界へ 2008/01/03
 私は中学のときからのアンファンなんですが、カナダのプリンスエドワード島
 なんて、世界の果て?のような気がして、行くことはとうていできないだろう
 と思っていました・・・。が、なんとオットと結婚して最初の赴任先が
 ニューヨークだったので、夏休みにオットにたのんで、行くことができたのです!
http://hamigakifonkun.cocolog-nifty.com/maphraau/2008/01/post_69a0.html


○きまぐれ書店 ─β版  2008/06/13
 『赤毛のアン』---生誕100周年記念!もう一度アンの世界へ
 今でもうっとりできるのが、話の舞台のプリンス・エドワード島の様子!
 四季折々の自然の描写がとても細かく、アンのように空想を広げると、
 花盛りの草原や輝く湖水、白樺の並木が目に浮かんでくるようです。
 他にも、部屋の様子など情景描写が細かく、想像がしやすいです。
http://fourwbook.fourw.net/e17874.html


○sugarmaple book club  「Before Green Gables」2008/04/24
 “Anne of Green Gables”は、孤児院から男の子を連れてきて欲しいと頼んだ
 マリラとマシューのもとへ、間違ってアンが到着するところからストーリー
 が始まります。「赤毛のアン」生誕100周年の記念で出版された、この
 小説はそれ以前のアンについてのお話です。フィクションの世界のまた
 フィクション。それも熱烈なファンの多いアンの世界ですから、今まで誰も
 触れることのできなかった領域ですよね。100周年を記念して、
 モンゴメリーの子孫にも承認済みの一冊が誕生しました。
http://suihazelnuts.blog20.fc2.com/blog-entry-300.html


○写真家・吉村和敏のブログ
 「プリンス・エドワード島 七つの物語」2008/06/04
 カナダ、プリンス・エドワード島を撮り続けて今年でちょうど20年。
 その集大成となる写真集がようやく形になりました。
http://kaz-yoshimura.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_5153.html


○* 永見 夏子 作品集 * 「プリンスエドワード島」  2008/06/05
 私は、世界名作劇場のアニメーションを作っている会社に勤めています。
 とは言っても、アニメ制作に直接かかわっているわけではないのですが…。
 来年はアニメーションの赤毛のアンが30周年を迎えます!!
 そのため、私も来年の30周年に備えて赤毛のアンに関する絵を描き
 始めました。
http://mikolove7.exblog.jp/8038978/

 

 

 


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