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貧富の差が拡大、ドイツ国民の8人に1人が貧困層

「国民の富裕層と貧困層の溝が拡大している」と、労働大臣オラフ・ショルツ(Olaf Scholz)氏が5月18日に発表した。景気回復と失業率の低下にも関わらず、食品やエネルギー価格の上昇、原油価格の高騰が及ぼす影響により多くの国民の生活が脅かされている。

連邦政府の格差報告書によると、国民(8200万人)の13%・8人に1人が貧困の状態にある。さらに13%の国民が、なんらかの社会保障を受けて生計を立てているという。これらをあわせて26%、つまり、国民の4人に1人がいくつかの国家保障を受け、国の援助なくしては生活できない現状である。また、子供のいる世帯の貧困層は12%、高齢者(65歳以上)は13%と報告した。

ドイツでは、貧困層は月額手取りが独身で781ユーロ(約12万5千円、1ユーロ=160円)以下、既婚者子供2人で1,649ユーロ(約26万)、中間層は1,500から3,000ユーロ(24万から48万円)、富裕層は独身で3,418ユーロ (約55万円) 以上、既婚者子供2人で約7,000ユーロ(112万円)以上となっている。

一方、格差報告書を作成したドイツ経済研究所(DWI)側によると、貧困はさらに進んでおり、国民の18%(2006年)が該当するとした。同研究所マルクス・グラプカ(Markus Grabka)氏は、独身の場合、月額手取りが939ユーロ(約15万円)以下を貧困層とし、ショルツ氏の提示した781ユーロ以下を貧困層とするならば、表面上貧困は進んでいない(2005年・貧困層は13%)として同大臣の発表を批判した。

問題は、子供のいる世帯の貧困層が増大してきたことである。特に、失業保険やハーツIV(Hartz IV*)受給で生計をたてている保護者の元で暮らす子供達の貧困状態は、広い分野に影響を及ぼしており、様々な問題の要因となっている。

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     *Hartz IV=収入のないあるいは少ない人のために、必要最低限の生活維持が
    出来るように、2005年1月1日より新しく導入した失業援助と生活保護を
    統合したもの。受給者の子供にも保護者の受ける支給額の60%から80%の
    生活保護金が支給される。
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貧困の統計情報によると、未成年の17%、1500万人と、なんと6人のうち1人の子供が保護者と同じく生活保護を受けているという。これらの子供達は、修学旅行や誕生日パーティー、友達を自宅に招待するなど、学校の行事や友人との交流に参加できないままでいる。教育内容や水準も乏しいものになり、将来これらの子供達も貧困層にとどまる可能性は高い。

欧州連合では、収入額が平均の60%以下の状態を貧困と定義しているが、一体どのような基準によって貧困であるかを判断するのかは難しい。貧困の理解については、国や地域によっても異なる。貧困対策として挙げられた報告書は、単に基礎的情報となるだけであってほしくない。現に、多くの国民は、終わりのない物価の上昇で日常生活に一抹の不安を抱いている。今後いかなる政策で対処していくのか、動向に注目していきたい。


<参考情報>
http://www.diw.de/deutsch

http://www.tagesschau.de/inland/armut20.html

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○持続可能な社会と金融CSR  2008/03/14
 「富める国ドイツ」の実態、国民の4分の1が貧困層
 ドイツでは最近になって最低賃金制度の導入の是非についての国民的な
 議論が巻き起こりつつある。大衆紙「ビルト(Bild)」は、清掃員、
 店員、ホテルの客室係などの賃金はあまりにも低すぎ「極貧賃金」だ
 との主張を展開している。
http://csrfinance.cocolog-nifty.com/mirai/2008/03/41_af83.html


○ツァラトゥストラはこう言っている?【日記編】
 「ドイツの貧困化とグローバル化」  2008/03/22
 自由度の高い投資家たちはどこに投資するか選ぶ立場に立ち、経営者、
 労働者と自由度が下がるにつれて自分で相手を選ぶことができず、
 (投資家から)選ばれなければならない立場に置かれる。当然、経営は
 「数字のよさ」(経営基盤の強さ)が求められ、労働条件は
 切り下げられる。こうして一部の投資家とグローバル企業の経営者は潤い、
 そこから遠ざかるにつれて多くの人々はより貧しくなる。
http://chakchak.exblog.jp/8212421/

 

 

 


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