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物価高騰で、プライベートレーベル商品が注目を集める米国流通事情

資源高によって、アメリカのインフレーションは進むばかり。物価の高騰に悩むアメリカの家庭は、値段の安いプライベートレーベル商品に目が向き始めている。プライベートレーベル協会によると現在国内の小売り商品の5つに1つがプライベートブランド商品だという。

プライベートレーベルは、特に大手のスーパーやドラッグストアなどで販売されている。宣伝費などがかからない為、売れれば販売側の利益は大きい。消費者にとってのメリットは価格だ。一般のブランドよりも10%から25%ほど安い価格設定になっている。

実際プライベートレーベルと有名ブランド品ではどれくらい価格が違うのか、大手のスーパーマーケットへ行ってみた。510g入りのケロッグのコーンフレークは$4.19ドルだった。しかし棚の隣で販売されているプライベートブランドであれば同じ510g入りで$1.99ドルだ。これは半額以下ということになる。ドラッグストアに行ってみると、クリネックスのティッシュペーパーは200枚入りで$2.29だった。しかしプライベートレーベルのものであれば230枚入りで$2.19ドル。ブランド商品よりも30枚ほど多く入って、10セント安い。

しかし毎回買い物をするときに頭をよぎるのは、プライベートレーベルの品質の問題だ。安いから、ブランドものよりもおいしくなかったり、品質が悪かったりするのではないか? そう思う人は多いだろう。

ミツイ・インターナショナル・フーズのエヴァン・ハイマン氏はプライベート商品について、「ブランド商品と品質が同じか、それよりも良い。」と言い切る(ノースジャージードットコムより)。ハイマン氏によると、実は有名なブランド商品と、プライベートレーベルを製造する工場が同じであることが多いというのだ。「消費者には、配給業者の名前しか分からない為、製造元を知るのはとても難しい。商品棚を見ても、誰が作っているのか全く分からない。」と話す。ミツイ・インターナショナル・フーズは大手ブランド商品と、プライベートレーベル商品を卸しているため、商品の品質を熟知している。そんなハイマン氏は「消費者はプライベートレーベルを怖がる必要はない。小売業者はプライベートレーベルの品質をよく分かっていて、品質の悪い物ならば販売しない」と言う。

年末から始まった物価高騰によって消費者がプライベートレーベルに流れる可能性は高い。労働統計局によると、アメリカでは1ヶ月の物価高騰率がここ18年以内で最も大きかったと発表した。これまでのようにじんわりとした物価の上昇ではなく、10%、20%という大幅な価格上昇を続けている。特にパンや卵、肉などの日常食料品が軒並み上がっているところも痛手が大きい。小売業者も、コストコや、ウォルマートといった、ディスカウント店が好調で、消費者が懸命に安い物を求めていることが分かる。様々な景気後退の危険信号が出るなか、プライベートレーベルへ消費者の手が伸びるのも時間の問題かもしれない。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○辛口ウオッチャー 2008/05/31
 「やっと原油投機規制?――ポーズだけでは」
  アメリカの商品先物取引委員会(CFTC)が、原油相場の歴史的な
 高騰を引き起こした犯人(?)の一人、ニューヨーク商品取引所の
 トレーダーの調査に乗り出した――というニュースが5月31日の
 新聞各紙で報じられています。
http://karakuchi.blog.so-net.ne.jp/2008-05-31


○中岡望の目からウロコのアメリカ 2008/06/03
 「個人消費軟調でアメリカ経済の悪化は続く」
  02年以降の米国経済の成長は、住宅ブームに伴う資産効果が個人消費を
 刺激したのが最大の要因であった。したがって住宅市場の悪化が個人消費
 にどのような影響を及ぼすがどうかが最大の焦点になる。既に新規住宅、
 中古住宅の売れ行きは大きく落ち込んでおり、ローンの借り換えも困難に
 なっている。変動金利によって返済負担も増加していることから、まず
 可処分所得の落ち込みは避けられない。さらに消費者の消費態度に大きな
 影響を与える雇用状況も悪化の一途を辿っている。1月から3月の間に
 非農業部門の雇用数は23万人以上減っている。
http://www.redcruise.com/nakaoka/?p=245


○ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報
 「アメリカにおけるインフレ率の推移」 2008/04/13
  第一次世界大戦で軍需・支援物資需要があった、1910年代後半の
 物価上昇はものすごい。そして、大暴落前の1920年代から
 インフレ率はマイナスで、徐々にデフレの影が忍び寄り、1930年代は
 インフレ率マイナス10%。第二次大戦後はインフレ率はマイナスに
 なったことが、1950年代を除いてはない、ということが確認できる。
http://amesei.exblog.jp/7696913/


○千里一隅(せんり・いちぐう) 2007/08/15
 「どうしても小売流通業は製造業対抗にプライベートブランドなのでしょうか?」
  日本では一応価格志向だが、プライベートブランドをもっぱら買う層も、
 厳しく価格を追求する層も、いまひとつ存在せず、「話題性」魅力にも
 欠けるプライベートブランドについて、それでも「これからは流通業が
 製造業に作らせることがもっと増える」と書かれた流通関係の教科書に
 ある記述に、私自身は特に90 年代以降は違和感がいつもあったのだ。
http://mizunoyutaka.blog.so-net.ne.jp/2007-08-17

 

 


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