インターネットでの人身売買広告に、法律の穴が浮き彫り
- カナダ在住ジャーナリスト
(記事概要)
『お買得、赤ちゃん売ります』という衝撃的な広告が、インターネットに掲載されていた。『生後7日。可愛くて健康。思いがけなくできたので養えないため、引き取り先を探しています』と書かれ、1万ドルの価格が付けられていた。
たまたま一般利用者が広告を見つけ、バンクーバー市警に通報。数時間後にはバンクーバーに住む掲載者を特定し、逮捕した。市警が踏み込んだとき、広告を掲載した女児の両親は「悪ふざけだった」と繰り返したという。女児はその場でブリティッシュ・コロンビア州政府管轄省の担当機関に引き取られた。
(2008年5月27日Canadian Press)
Canadian Press: カナダ国内外のニュースを網羅し、テレビ、新聞社などの国内メディアに記事を提供するカナダのニュースソース。
(解説)
結局23歳の母親はその場で解放され、26歳の父親も『迷惑罪』で拘留されたもののその日のうちに解放された。二人とも前科があり、市警には知られた顔だったという。
記者会見を行ったバンクーバー市警のファニング警部は、今回の事件になかばあきれたような顔で、「言語道断の行為」と憤りを見せた。そして「今後もこの件に関しては調査をしていく」と語り、この二人に関しては今後何らかの形で罪を問うことになるだろうとも語った。
母親がその場で解放された理由の一つには赤ちゃんが生後7日のため、母乳が必要ということがあったのだが、父親も罪に問われずにその日のうちに解放されたのは、こうした犯罪を取り締まる法律がBC州にないからだった。
バンクーバー市警及び連邦警察が力を入れているインターネット犯罪の多くは、児童ポルノやカード類からの個人情報盗難などで、今回『広告』が掲載された商品売買情報サイトなどへの人身売買広告などは想定外だった。
今回この広告が掲載されたサンフランシスコに本部を置くCraigslist.comは事件に対して、インターネットを使うと掲載者の足跡が残るので、こうした犯罪は起こりにくいとは言った上で、自社のサイトが犯罪に使われることのないように警察と協力して防止策を講じていくとコメントした。
しかし、この事件から1週間もたたないうちに、今度はBC州の州都ビクトリア市の近くにある町で、同じような広告が掲載された。当地の警察がIPアドレスからパソコンの持ち主の住所を探し出し、質問したところ、今回は誰かがこの家のIPアドレスを盗んで悪用したことがわかった。今のところ、犯人は分かっていない。
インターネットが普及し、便利になる一方で、こうした犯罪への対処が遅れていることはどこの国でも問題になってきた。バンクーバー市警は、「今後このようなインターネット犯罪にも注意を払っていく」と語っていたが、今回の事件で、増え続けるインターネット犯罪に法整備が追い付いていないという現状が改めて浮き彫りになった。
しかし、一国だけではもはやことは解決しない。ドイツでも先月同じような事件があったと聞いた。「もし誰かが買うと言っていればどうなったかわからない」とファニング警部が言ったように、今回もしカナダ在住者以外の人が…と思うと、もはや市警ではどうしようもないだろう。インターネットには国境がない。それを取り締まる法律もボーダレスでないと追いつかない。当たり前のことだが難問である。
そこで、このニュースを聞いて「赤ちゃんを売るなんて」と感情的になる前に、私たちにできることはないかと考えてみた。利用者としてのモラルを守ること、被害者にならないための防御策を講じておくこと、そして、こうした犯罪を見つけたら警察に通報すること、『当たり前のこと』しか思いつかなかった。
【編集部ピックアップ関連情報】
○わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
「赤ちゃんの値段」 2007/01/08
「赤ちゃんの値段」をキーワードとしたルポルタージュで、養子縁組の話に
限定されていない。ebay で「今月産まれる赤ちゃん売ります」に1,200万の
値がついたことも書いてあるし、望まれない妊娠をヤミ堕胎(自由診療)で
荒稼ぎしていた産院が、中絶胎児を一般ごみとして捨てていて、
産廃処理法違反の話もあった。
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2007/01/post_8161.html
○世界中の子どもたちの笑顔のために ルイの国際協力体当たり日記
「日本の赤ちゃんが海外に売られている!?」 2006/09/05
人身売買の犠牲になる子どもは年間130万人から200万人
それによって生み出される収益は数千億ドルとも言われています。
http://ameblo.jp/rui-save-the-children/entry-10016652287.html
○GIGAZINE 2008/03/26
「9歳の少女が奴隷として50ドルで売られている」
人類の歴史上、実は現在が最も奴隷の数が多い時代だそうです。
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080326_slave_haiti/
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