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経済混乱を乗り越え、環境変化に柔軟に対応するブラジルIT業界動向

2007年のブラジルのIT業界全体の売上高は 、世界の動きの約1,7%を占める。IDCによるITサービスの世界ランキングでは、ブラジル市場は、第10位に位置し、投資状況ではBRICSの他の国に比べ群を抜いている。ISI(Indicador da Sociedade da Informação)によると、2007年のIT、テレコミュニケーションへの投資は前年に比べて8,8%の増加で、この3年で最高である。

現在ブラジルの選挙システムは100%が電子投票で、即日開票される。またネットバンキングの普及率は70%だ。 ISI( Indicador da Sociedade da Informação)によると、2007年のインターネットの使用者は前年度比22,5%増、一人当たりのコンピューターの数は25,2%増となっている。


ブラジルの情報化は、金融業分野で急速に発達した。
80年代の対外債務危機とインフレは、経済を混乱させ、また通貨の呼称が次々と変化する事態を招いた。金融系システムのエンジニアは、この状況に柔軟に対応する必要があり、世界に例を見ない混乱の中で、貴重な実務経験を積んできた。

皮肉にもこの経済混乱の経験が、IT業界の成長速度を促すことになったといえよう。中でもブラジルで初のホームバンキングシステム(Unibanco銀行向け)を開発したEverSystem社は世界的に有名だ。最近はモバイル・バンキングを開発し話題になっている。

現在ブラジルでは、国内上位10のIT企業の売り上げ合計が、国全体の40%を占める。しかし今後企業買収、合併などにより、数少ない大企業がIT市場を占領するようになり、ブラジルのIT業界に大きな変化が生まれると予測されている。

 また、時差を利用しようという海外企業が増えており、システムインテグレータが、システム開発・運用管理などをブラジルの会社に委託する、オフショア開発が増加している。2007年には三菱商事が、 大手IT 企業ポリテック社(Politec Technologia da Informacao S.A.社)との協業を開始している。 12時間の時差を利用し、アイ・ティ・フロンティア(http://www.itfrontier.co.jp/)の国内データセンターの夜間運用監視業務をブラジル側に委託することで、24時間対応を図るものだ。

現在のブラジルにおけるIT業界の成長速度は、急激なものではない。それでも米Gartnerによれば、2008年度のブラジルITサービス業界全体の売上高は、前年度比9,5%になるという見通しを発表しており、安定した成長が予測される。
「これはIT業界が成熟している過程において自然なことであり、安定した成長は外国企業を魅了しているひとつの理由となっている」と、IT専門調査会社IDCのマウロ・ペレス氏は語る。

 しかし、近年、労働基準監督が強化され、雇用主がCLTと呼ばれる正規の従業員を雇うことが現実に必須となった。(以前は非正規で契約し、企業が払うべき税金などを納めていない例が多かった。)そのため、企業の必要経費が大きく増え、さらにインフレの影響が重なり、企業の利益率は下降傾向になるだろうとの指摘がある。

企業間の競争はますます激しくなっており、コストを抑えるために人件費の安い地方に事務所を開設する企業が増えている。企業の対応は、今後のブラジルIT市場の成長を左右するだろう。世界的に注目されているブラジルのIT業界は、様々な変化に対応すべく、変容を遂げようと模索している。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○Manaboo 電子政府・電子申請コラム 2008/02/08
 「米国GSAのレポートに学ぶ、電子政府における市民参加の可能性」
 米国の政府機関であるGSA(General Services Administration)による、
 電子政府が社会や民主主義に及ぼす影響に関するレポート(ニュースレター)
 です。特に「e-participation:電子的な市民参加」と言われるものを中心
 として、国内外の事例を数多く集めており、電子政府の新たな可能性を
 示唆する内容となっています。
http://blog.goo.ne.jp/egovblog/e/163293d586fdd04753757a14acb0dfe8

 

 

 


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