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恋愛、別離の繰り返しで複雑化するフランスの家族

 大統領のニコラ・サルコジ氏が提案している親権問題が国会で討議される。寿命が長くなり、自由恋愛が広く認められている昨今、生き方や恋愛のかたち、家族のありようも変わってきている。社会の変化に法律がどのように適応していくべきかが、議論の焦点だ。

 現在のフランスの家族構成は、複雑になっている。同棲生活をおくり、子どもが生まれても結婚をしないカップルが珍しくない。婚外子(結婚しない男女の間に生まれた子供)の割合は1/3にもなるそうだ。嫡出子と婚外子が、法律に照らし合わせても差別なく生活できるため、結婚という形を選ばない。結婚して夫婦になったカップルも、長続きしない可能性が高い。

 パリ近郊都市部の離婚率は、50%を超える。別離、離婚しても、新しいパートナーを見つけるのは難しくない。現代のフランス人は、連れ子がいても、「子どもは彼女、彼の人生の一部だから」と、新しい恋愛の障害にはならない。このような自由恋愛が謳歌されるフランス社会では、一緒に生活する家族は、父と母と子どもという伝統的な形から外れていく。

 血のつながらない子ども(パートナーの連れ子)と一緒に住み、養育している人も珍しくない。200万人もの子どもが親の再婚相手、又は新しいパートナーと一緒に暮らしている。一緒に住んでいる子ども達も、両親が実の親でなくても(連れ子が何人かいる場合、父親、母親共に違う場合も多い)それを許容するようにみうけられる。フランスでは、この家族のありかたを再構成家族famille recomposéeとよんでいる。

 サルコジ大統領の私生活も、現代のフランスを映している。3回目の結婚になるカルラ夫人の連れ子とエリゼ宮で暮らすサルコジ大統領。前妻のセシリア夫人は、二人の連れ子がいて、サルコジ大統領とセリシア夫人の間には息子がいて、5人で暮らしていた。また、一回目の結婚相手との間にできた息子のジャン・サルコジも、サルコジ氏の家族として公式の場に頻繁に出席をしていた。

 恋愛が生む結婚、離婚、再婚をしても、自分の子どものみならず、一緒に暮らした連れ子への親権を認めるべきだというのが今回のテーマだ。例えば、何年も一緒に住み、子どもを養育していたとしても、義理の父母には親権がない。子どもにとって第三者に親権を認めるかどうかが議論の焦点だ。

 両親が別れた場合、子どもにとって一緒に住んでいる片親とそのパートナーとの生活も大事だが、2週間に一度しか会えない(会うべき)片親との関係性も大事なはず。今回提案されているように、義理の父母の親権および権利が認められた場合、子ども達の生活はどうなるのだろう。感情はどうなるのだろう。実親と実の祖父母、そして義理の親と義理の祖父母と家族の絆は広がっていくとともに、生活がどんどん複雑になっていくことは否めない。家族で過ごすのが常のクリスマス休暇をどこで過ごすか、学校の休みの度に、父親が住んでいるところ、義理の父親が住んでいるところ、と移動ばかりしなければならない子どもも少なくない。

 子どもにとって、何が大切か、子どもの権利は何なのか、を複雑かつ多様になっていく家族構成の中で、法律という文章でくくれるのか、というのが課題になっている。現行の法律でも、第三者である義理の親が、子どもに会う権利について認められている。新しく、実親以外に権利を認める場合、何年一緒に生活をすれば、義理の親として親権が生じるのか、子どもはその状況を理解できるのだろうか? と、まだまだ議論の余地は大きい。

 

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○MediaSabor  2008/02/29
 制約が少ないPACS(パックス)選択が増える「フランス婚」事情
http://mediasabor.jp/2008/02/pacs.html

 

 


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