Entry

カナダ移民局を悩ますインド人がらみの偽装結婚

<要約>

少し前までは、多くのインド人がカナダビザを入手するために、あらゆる違法手段を講じていた。だが、今は、もっと安くて、リスクも少なく済む方法があるようだ。それは、rent-a-wedding(結婚レンタル)。カナダ人とのインチキ結婚が、最近は、居住ビザを獲得するのに一番簡単な方法になりつつあるのだ。

この移民の夢を果たすための結婚レンタルは、裏で寺と手を組んでいる悪徳なコンサルタントにより、花輪から装飾品、式のゲスト、時には結婚相手までもが、手際よく用意される仕組みだ。パッケージサービスで、「ゲストや友人のようにセレモニーに出席する人、本物の結婚式のように写真にも写る人々」なども得ることができる。

デリーのカナディアンビザ関係の役人に、その結婚が「便利な結婚(Marriages for convenience)」だと勘ぐられてしまう例の場合の理由は、証拠として提出された写真のゲストが、いろいろな結婚式において同じメンバーだからである。

何よりもこの方法を魅力的にしているのは、現在の移民システムでは、カナダ人と結婚したインド人は結婚からたったの6ヶ月以内にカナダに行けるということである。さらには、結婚しても永住権ビザを得るのに2年間の夫婦の同居が必要なオーストラリアなどと違って、カナダはカナダ人と結婚してさえいれば、同様の権利を入国と同時に出す、ということもあげられる。結婚さえしてしまえば、一定の期間の同居などをしなくてもいいのだ。

これらの条件が、詐欺結婚現象を引き起こしている。カナダ国籍の人物が、10000から12000カナダドルを結婚承諾の引き換えにインド人結婚相手から受け取る、という例も明るみに出ている。このカップルは、結婚後も別居し、1年以内に離婚した。

カナダでは、現在、このような詐欺結婚が深刻な問題となっているのだが、詐欺結婚全体のうちの、なんと8割がインド人絡みだということだ。カナダの移民局役員は、結婚がホンモノかどうかを見抜くための、より優れたインタビューテクニックのトレーニングを受けているという。(「Hinsustan Times」日刊紙)

 

<解説>

インド人にとって、家族の誰かをカナダやオーストラリア、その他先進国へ送り出し、ビザを取得させるのは、一族全体の野望である。そのために、それこそ一生を懸ける親も少なくはない。留学させ、いい資格を取得させ、そのまま外国で就職させ、永住権を獲得させる。わが子の国籍が、アメリカやカナダ、オーストラリアであることは、決してインドでは珍しくない。むしろ、富裕層の間では、一族の中に、外国に住んでいる人のいない例のほうが、珍しい。

だが、永住権や居住ビザを獲得するのは、そうた易いことでもないようだ。これまで、悪徳エージェンシーが行っていたような、移民の手配のために様々な違法手段を使う事を示す「カブータル バージー」という言葉もある。直訳すると、「ギャンブル鳩」。夜逃げ型の、無責任な、という意味がある。

だが、従来の「カブータル バージー」と違い、最近急増している「便利な結婚」には、カナダ移民局も、かなり頭を悩ましているようだ。というのも、結婚する者同士が、お互いに申し合わせをしている場合、それがニセモノかホンモノかを決め付ける手段がないのである。「愛し合っているかどうか」などは、第3者の測れるものではないし、文化によっては「結婚をするまで、お互いの顔を見ない」といった例すら存在する手前、世界各国からの移民を受け入れているカナダとしては、取締りのやりようがないのだろう。

お互いが申し合わせをしていない例もあるが、その場合、少なくともカップルのうちの片方は、それをホンモノの結婚」だと信じているわけである。遠距離電話代、相手を呼び寄せるためのチケット代、各種手続きのために使った費用十数万円等だけでなく、心までを使い果たしてしまうカナダ人もあとを絶たないのだとか。

しかし、8割がインド人絡みだというデータは、いくらインド人が我が子や親族の誰かを、外国に送り出す事に余念がないからと知っていても、驚きである。文化間の「結婚」に対する考え方の違い、というのも大きな要因なのではないだろうか。インド人は結婚相手を、恋愛によってではなく、お見合いによる条件マッチングによって選ぶのが普通だ。したがって、その条件マッチングの延長線上のこととして、結婚により目指す国の移住権を獲得することに、それほど違和感を感じていないのだろう。少なくとも、欲しい条件のために「結婚」を使う事に対して、私たちが感じるような、ある種の道徳的後ろめたさは、インドの文化にはないのかもしれない。

 


【編集部ピックアップ関連情報】

○ザ・競馬予想(儲かるかも?) 2008/04/24
 「映画 グリーン・カード(1990)恋愛映画だけれど、題名の意味は何だ?」
 そんな、日系ブラジル人の中に僕と同じ映画が好きな人がいるのだけれど、
 その日系ブラジル人がお勧めしてくれた映画がタイトルのグリーン・カードです。
 それにしても、約20年前の映画を勧めるとは、なかなかの通だね。
 正直この映画を勧められた時はビックリしたね。
http://blog.goo.ne.jp/goo0348_2007/e/e53e70b881e87524b2687d704c52fe45

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/740