インドの携帯電話加入者 世界第二位。ハイテクの時代になっても、神様は欠かせない
- インド在住ジャーナリスト
インドの携帯電話加入者は3億人に達し、すでに中国に次いで第2位となったそうだ。3億人というのは、ちょうどインドの富裕層─新中産階級の占める人口とほぼ同じである。だが、その中には子供や、個人電話を持たない主婦などもいるわけで、携帯電話はその階級の人々だけが持っているのではない。
確かに、下層の労働者でも持っている人は非常に多く、時には貧困にあえぐ農村部の人々も持っていたりしているのを見かける。無論、貧しい人々は、仕事のために受信専用に使っていることが多く、自分から故郷の村にかけるときなどは、今までどおり、街のいたるところにある電話屋からかける場合が多い。しかし、いずれにしても、インドの携帯電話加入者数は毎月800万から900万増ということで、伸び率においてはすでに世界一だそうだ。
今のところは、まだ、インターネット機能のついた機種や、カラーの液晶モニターのついた機種を持てる人は限られているが、どんなモバイルコンテンツがあるのか覗いてみたところ、早速、非常にインド的なものを発見。
必ず、「religious(宗教系)」とか、「Hinduizm(ヒンドゥー教)」というカテゴリーがあるのである。例えばリングトーンや着メロには、バジャン(Bhajan)やアーラティ(Aarti)、キールタン(Kirtan)が絶対にある。これらは、賛美歌のヒンドゥー教バージョンのようなもので、インド全土で日常的に歌われているものである。
ヒンドゥー教には何億人もの神様がいると言われているが、その中でもメインの神様が十数人おり、彼らに捧げるバジャンなどは、今でも大人気だ。そして、特にインド人であれば誰でも知っている代表的なメロディーというのが数々あるのだが、それらがリングトーンや着信ミュージックとして人気なのである。
モバイルコンテンツに限らず、「Bhajan mp3」「Aarti youtube」などとネットで検索してみると、いかにインド人の生活において、それが身近で大切なのかがわかるだろう。おびただしい量がアップされている。
また、「宗教のるつぼ」であるインドのこと、もちろん「Christian(クリスチャン)」とか「Muslim(イスラム教)」、「Sikkizm(スィーク教徒)」などのカテゴリーがあったりもする。待ちうけ画面や、アニメーションもしかり。ヒンドゥーの神々がかわいくアニメーション化されていたり、お決まりの「後光が差していている、ありがたい神様絵」などがあって、面白い。もちろん、クリスチャンのカテゴリーのなかには、「マリア様とイエス」の絵や、「磔になったイエス」の絵などがあり、イスラム教カテゴリーに行けば、「モスクと三日月」の絵だとか、「コーランに光が差している」絵などがあるのだ。
やはり、どんな場合においても「神様カテゴリー」というものが、インド人にとっては、何が何でも必要なのである。これらの傾向は何も、すごく真面目な人とか、敬虔な人とか、年老いた世代だけのものではないところが、インドの特徴だろう。
その証拠に、「religious(宗教系)」というカテゴリーが特化しているというわけではなく、同じ場所に必ず、「ボリウッドスター」だとか、「ボリウッドソング」というカテゴリーも肩を並べて存在している。神様達と並列で、セクシー女優だとか、筋肉ムキムキの男優の待ちうけ画面などが当然のように並んでいるのだ。神様を讃える曲も、アイテムガールがセクシーな踊りをしながらノリノリになる最新のヒット曲も、やはりインド人にとっては、並列である。
街を見渡せば、神様のプロマイドと、水も滴る女優のプロマイドやポスターが、同じ壁に好きなように貼ってある光景がそこかしこに見受けられるし、美しい女は女神様の化身だということで、セクシー女優と女神様をCGを使って画面上でダブらせたりする国である。最近でも、ハヌマーンという神様のアニメーションが大人気を博したため、子供用のグッズにはハヌマーンのキャラクターがたくさん使われている。子供が喜ぶように、バジャンやアーラティをロック調にして楽しんでいるアシュラムも知っている。
日本に置き換えたら、お釈迦様や大黒様、天照大神やニニギノミコトを待ち受け画面にしている人が、気分転換に宮崎あおいちゃんやヨン様の待ちうけ画面にしてみたり、そこらへんの若者の着信ミュージックがドラマの主題歌かと思えば、般若心経だったりという感じだろう。
インド人は本当に神様が大好きで、彼らにとってはボリウッドスターも神様も、アイドルなのである。インドでは、携帯電話のコンテンツに神様カテゴリーがあることは、あまりにも自然なことなのだろう。インドでは神様と人々はいつでも一緒なので、ハイテクの時代になろうが、神様だけが古い時代に取り残されることはないのだ。
携帯加入者のさらなる増加とともに、インドのモバイルコンテンツがどのように、もっとインド的オーラを出してくるのか、ちょっと楽しみである。
▼http://www.berm.co.nz/cgi-bin/mobile/category.cgi?ringtones,196
【編集部ピックアップ関連情報】
○インド新聞 2008/06/30
「公営銀行大手3行、間もなくモバイルバンキングサービスを開始」
インド準備銀行が携帯キャリアを超えての預金振替を認めたことで、
公営銀行大手3行は各種銀行サービスが利用できるモバイルバンキング
を開始する。
http://indonews.jp/2008/06/3-15.html
- いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。 - 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
- 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
- トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。